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009 「じゃあ剣哉、最後にこの言葉をいっておくよ」「死なないでね」

遅れてすいません><

次回もあまり速い更新はできないと思いますがよろしくお願いします。

 ピンク色の滑らかな髪の毛が目の前にはあって。青色の綺麗な瞳が目の前にはあって。何もかも信じられない状況が目の前には広がっていた。

 俺たちは今から第三訓練を行うのだ。そして、魔界王は確かに、「目の前にいるものを撃破せよ!」と言った。俺の目の前にいる者、ルメナ。ルメナを撃破するのが第三訓練。

 雄也の前にはセイラがいる。お互いにパートナーと戦うというのが最終訓練のようだ。


「ルメナ、一体どういうことなんだよ!?」

 どういうことなんて自分が一番分かっている。ルメナが今撃破すべき標的だということ。そんなこと自分が一番理解していた。それなのに、嘘であってほしいという人間の本能が、俺の口を勝手に動かす。

「見たまんまの通りだよ。剣哉が私を倒せば第三訓練クリア。簡単でしょ?」

「簡単でしょって……」

 何もおかしいと思わない表情。そしてこれが最善の選択だという表情。ルメナは完全にやる気だった。

「あ、それと私結構強いから」

「…………」

 そんなこと、漆黒剣を拾ったときから知っている。あのスピード、あの力。俺は剣で攻撃を防いだが、圧倒的にルメナは手加減していた。

「訓練だから……本気で行くよ?」

「いや、だから!」

「覚悟してね」

 どうやってもルメナは止まらなかった。あのとき見た剣は持っていない、完全な素手。これが、本当の戦闘態勢なのだろうか。

「じゃあ剣哉、最後にこの言葉をいっておくよ」

「ん?」


「死なないでね」


 その言葉が発せられた瞬間、ルメナはとてつもなく強い力で地面を蹴り、気づけば俺の目の前にいた。ルメナの腰には既に拳が構えられている。こんなの、俺が反応できるわけない。

 ルメナの拳は俺の腹部にクリーンヒットし、俺は漫画のように吹っ飛んでしまった。そしてその場で倒れこんでしまう。

 やはり人間の「殴る」という行動とは次元が違った。痛みの大きさが全然違う。こんな、化け物に等しい力を持つルメナと戦い、勝たなければいけない。


 ――出来るわけないじゃないか。


 勝つことが出来ないんじゃない。戦うことが出来ないんだ。何の楽しみもなかった小学生時代。唯一苦を忘れさせてくれたあの美しい容姿。それに傷をつけるだなんてとても出来ない。

 俺からは剣を握る力も、剣を握ろうとする意志もなくなっていた。


 ◆

 ◆

 ◆


「……ルメナ」

「どうしたの? セイラ」

 時は第二訓練のときに遡る。剣哉が必死に毒を躱している最中にセイラが通話魔法を使って話しかけてきた。

「お前、本当に漆黒剣の能力話してないのか?」

「……ええ、話してないわ」

「話してないって……第三訓練どうするつもりなんだ!? 話さなきゃ剣哉に勝ち目なんか……」

「これでいいの。剣哉には……自分で見つけ出してもらわなきゃ」

「…………」


 ☆


 そう、見つけ出さなければいけない。漆黒剣の能力を。

 ただ、今の剣哉の状態を見ているとかなり困難に思われる。

 漆黒剣は結構扱いの難しい武器。サファイアボルトよりも遥かに難しい。だって、能力を発揮させるのは自分自身なのだから。


 しばらくすると、やっと剣哉は立ちあがった。体から痛みが消え去っていったのか、手には剣がしっかりと握られている。さっきよりは戦う目をしている。キリッと鋭く、細い目。やっと戦う決心が出来たのだろうか。

 私は再び拳に力を入れる。剣哉も更に強く剣を握り、血管がより一層浮き出ていた。

 剣哉は体育館の床を思い切り蹴り、私の方へと突進してくる。剣を大きく後ろに構え、斬りかかろうとしてくる。

 しかし、私は気づいてしまった。まだ剣哉は躊躇っていることに。正面からの剣哉の走りは第二訓練で見ている。水の上でもそこそこの速さで進んでいたが、それよりちょっと上がっただろうか? というくらいの違いしかない。もっと速く走れるはずだろうに。

 私はスッと拳を下ろし、素直に肩で受け止めてみる。肩には痛みどころか、跡すら付かない。それほどに、彼はこの状況を飲み込めず、動揺しているのだ。

 剣哉は驚いた表情を隠せない様子だった。それもそのはず、自分は思い切り斬ったはずなのに、相手の私には傷一つ付かないのだから。


 これこそが本当の訓練になる。仲間だと分かっている私に、どれだけ斬りかかってこれるか。心の底から、目の前の私を斬ろうとする。その気持ちを芽生えさせるのが、本当の第三訓練の目的なのかもしれない。


 ◆

 ◆

 ◆


 雷を全身に纏うセイラ。その雷は躊躇なく俺――五月雨雄也に襲い掛かってくる。

 少しは、仲間だという意識を持ってほしいものだが、それも無理なようだ。彼女の頭の中に残っているものと言えば、電撃で黒焦げにし、チリチリの髪の毛の俺だけだろう。

 どんどん地面に穴が開いていき、綺麗な茶色いフローリングはどんどん焦げ茶色の地面に変わっていく。

「あははははは! 逃げてばかりじゃ勝てないぞ! 雄也よ!」

 そんな大魔王のように俺を嘲笑い攻撃し続けるセイラ。何だろう、普段と全然性格が違う。もしかしたら、「普段おとなしい性格の人が野球バットを持った瞬間、強いプレイヤーになる」みたいなものだろうか。彼女は雷に触れるとどうも病んでしまう。あくまで推測だが。

 どんどん手から雷を発射させるセイラを止める方法と言えば一つしかないだろう。親切なことに、彼女は既にサファイアボルトの能力を教えてくれている。その能力は、雷の力を吸収し、一気に大きな力にして跳ね返す。正直、彼女が相手なのはありがたい。


 次々と撃ってくる雷をサファイアボルトで受け止め、電気を蓄積させていく。セイラは何も考えずに撃っていたためか、かなりの電撃が飛んできて、サファイアボルトも綺麗な透き通った青色から、電撃の黄色と混じって緑色に変色していく。

 しかし、そこである疑問に辿り着く。何か、セイラ、考えなさすぎじゃないか?

 彼女は俺にサファイアボルトの能力を話しているのはもちろん知っている。なのに、なぜこんなにも撃ち続けるのだろう。このまま行けば跳ね返されることくらい分かっているだろうに。

 でもまぁ、こんなにも撃ってくれれば好都合だ。もうすぐ電撃を吸収しすぎて黄色のなろうとしている。

 そろそろ撃ち時かと思い、俺はセイラの連続電撃から抜け出し、サファイアボルトを一振りする。すると綺麗な半円弧の雷の衝撃波が発射され、ものすごい勢いでセイラに襲い掛かる。想像以上の大きさで、かなり大きいこの体育館の半分くらいの大きさだった。

 それにセイラはかなり慌てた様子で。

「え!? 何で雄也それを……!」

「……それって何だ?」

「いやいや! サファイアボルトの能力……」

 と、言いかけたところで俺が放った衝撃波がセイラに当たる。ああ、そういうことだったんだ。あいつは――自分が剣の能力について話したことを忘れていたんだ。何て単純な理由だったのだろう。

 そして、一つ判明してしまった。セイラは――大馬鹿だ。


 黒焦げになったセイラが地面に落ちるまでの数秒、どんな真冬の地球の果てよりも寒かっただろう。


 ◆

 ◆

 ◆


「ん~、今日も良い天気~……か分かったらいいのに」

 朝夜もなければ晴雨もない世界に住む僕、ナイツが暗黒界に来て結構時間が経つ。最初は苦しかった暗黒界の労働生活も何だか慣れてしまい、あまり無理に働かされているといった感覚がなくなってきている。


 最近は特に大きな動きはない。きっともう準備が進んでしまい、特に大きな行動に出ていないんだろう。侵攻先も決まってしまった今となっては、僕はただ暗黒界では普通の生活を送ることくらいしかやることがない。

 時計の短い針が丁度8の部分を指したところで僕は家から出る。出勤先は家から5分くらいしかかからないので、朝礼の8時15分には余裕で間に合う。

 僕は今日も軽い奴隷生活を送るのである。


 ☆


 出勤先に着くと、既に同僚のランドスという人が事務机の上でコンピュータをいじっていた。彼も魔界の者で、暗黒界によって侵攻された場所に住んでいたのだ。立場上、僕とは全く同じの地位になる。

「おはよう~」

 僕は軽く挨拶し、彼の隣の席に腰を下ろす。

「あ、おはよう、ナイツ」

 彼もまた爽やかな笑顔で挨拶を返してくる。このいつでも真っ暗な世界で他人から「おはよう」という言葉を聞くと妙に安心する。

「あ~、面倒くさいな~」

「そんなこと言ったらボコボコだよ~?」

「いや、まぁ、そうなんだけどさ……」

 奴隷という立場にしてはかなり自由な身ではあるが、やはり働くのが面倒くさいなどと言うと鞭で叩かれたりするのだ。どんな仕事もキファルガスのためになる、ということなので、キファルガスを侮辱したことと等しいらしい。

 まぁ、そんな感じで今日もコンピュータと向き合い、事務作業を進めようとした時。


『え、どうしてあなたがここに!?』

 という社員の声が部屋の外側から聞こえる。

『お勤め中すまないな』

 と、低い声でその男であろう人物は返す。


 ガチャリ、と開かれたのは僕たちがいる部屋で。黒く、肩くらいまでストレートに伸びた髪に鋭い黒い瞳、何よりも目を引くのは彼の頭につけられている二本の角で。

 ――キファルガスだ。間違いなく、このオーラはキファルガスだ。

「ナイツ、という男はいるか?」

「……僕ですけど」

 ここは何も犯行せず名乗っておく。鞭に打たれるなんていう趣味は僕にはないので。

 トントン、と足音を鳴らして僕のところに近づいてくる。どんどん強くなってくる威圧感に怯みそうになるが、グッと堪えて立ち続ける。


「……なんでしょうか?」

「ちょっと話がある。王宮まで来てもらおう」

「え!?」

 気づけば視界は彼の真っ黒なマントで覆い尽くされ、僕のいた場所は勤め先ではなかった――。

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