008 「第三訓練! 目の前にいるものを撃破せよ!」
かなり更新が遅れてしまい申し訳ありません。
そのうえ今までで一番短いです。
次回はちょっと長めになると思うのでよろしくお願いします。
「ふぅ……」
足元はびしょびしょに濡れ、ちょっと紫色に染まっている。本当にギリギリな状況だったということが良く分かる。
俺はプールから上がり、魔界王たちの待つ観客席へと歩を進めた。知らない間に雄也も目を覚ましていて、観客席に座っていた。やってる間に目を覚ましたんだったら助けてくれりゃあよかったのに……。
それからしばらくして、ルメナがこっちに駆け寄り、魔界王の隣に腰を下ろした。少し表情が――明るいと言っては表現がおかしいが、暗いといってもおかしい、微妙な顔色で俺たち全員に向けて話し始めた。
「先ほど、ナイツから連絡がありました」
「ふむふむ」
「日本の一番初めの侵攻先が決まったようです。場所は東京。ここからは私の勝手な考えですが、かなりの中心部に思われます」
予想通りと言えば予想通りである。やはり日本で一番の中心となっているのは東京だ。人ごみに紛れることもできるし、潰しやすいのも悔しいが確かである。ルメナの意見は正しいと思う。
「あの時で一週間後だから……もうあと四日で来るのか」
指で数えながらセイラが呟く。そう思うと時間がないな。あと、どうでもいいことだが、『7-3』くらい暗算でしてほしい。
「そうなると……時間もあまりないの~」
何だか簡単に、緩やかな口調で魔界王が顎の髭を触りながら言った。
「ならこのまま第三訓練の会場へと向かうとするか。体力的には大丈夫かい?」
「ええ、大丈夫です」
「俺も大丈夫です」
正直苦しいけど。何ていう本音は言えない。俺は雄也に続いて大丈夫と答えた。
「なら、降りてきた階段を再び昇ってくれ。そこが第三訓練の会場じゃ」
俺たちは頷き、元来た階段を昇り始めた。
そこから、信じられない試験があるとも知らずに――。
◆
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辺りは闇に落ち、ただ周りが黒一色。しかし景色はくっきりと見え、常時と変わりない。しばらくこの世界に居れば、朝か夜かなど分からなくなってくる。
私が日本への侵攻を決めてから少し国民の声も多くなった気がする。やはり、それほどに地球の存在が大きいということなのだろうか。暗黒界や魔界からしても地球の技術は素晴らしく、見習うところばかりである。実際、ほとんどの機会が地球で生み出されたものである。
それ故に、どこか地球は凄まじい力を持っているという固定観念が生まれ、怯え、というものも生まれてしまっている。
だが、それは大きな間違いなのだ。国民も、そして地球の民も勘違いをしている。地球が力を持っていると。
大きな欠点を挙げるとすれば、先進国で争わない日本。そして魔法が使えない。使うのは最大で核兵器。魔法を使える暗黒界の民が負けるはずがない。
「キファルガス様」
「ん?」
侵攻のことを考えていると、私の秘書的存在、ジャーニーが呼びかけてきた。
「例の調査の件ですが……」
「ああ、どうだった?」
「魔界寄りの社宅で怪しい通話を聞いたと報告がありました」
「ほう」
「それを実際に行ってみましたところ、そこの住民は確かに誰かと通話していました」
「それで、そいつは誰だ?」
「ナイツ。通話相手は分かりませんが、要注意人物ではあります」
「何か起きたらすぐに報告しろ」
「は」
◆
◆
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俺と雄也は一足先に第一訓練会場、これからは第三訓練会場となる最初のアリーナに着いていた。いつの間にか鉄格子は処分されており、床は薄茶色で光沢がある。
歩くたびにキュッキュッ、という体育館独特の音が響き渡る。
とりあえずど真ん中に来た俺と雄也は、その場に腰を下ろして、少し残った疲れを休めようとした。
「……まさか訓練がこんなに苦しいものだったとは……」
「セイラに忠告された通りだ。死ぬなよ☆ って」
どうやら雄也もセイラから忠告されていたらしく、はぁ、とため息をついた。その気持ちを分かってしまうあたりが何だか悲しい。
「それにしてもあいつら遅いな」
第二訓練会場へと続く階段の方を向きながら雄也が言った。
確かに言われてみればそうだ。第三訓練会場がこんなにすっからかんなら、そんなに時間のかからない訓練なのだろう。それにここまで時間がかかるのもおかしい。
「まぁ、第一、第二も乗り越えてきたんだ。何とかなるだろ」
雄也が立ちあがり、伸びをする。俺もそれにつられて立ちあがり、伸びをする。ジーン、という心地の良い刺激が体中を駆け回り、やがて楽になる。
その刹那――。
ドォオオオオオオオン――! という大きな音が訓練会場に響き渡り、俺と雄也のちょうど間に砂煙が巻き上がる。とてつもない風圧で、俺たちはお互い反対側へと体を投げ飛ばされた。
「何だ!?」
思わず叫んでしまう。すると階段からコツ、コツ、と誰かが上がってくる音がして、俺と雄也は同時にそちらを振りむいた。
「ふぅ、少々遅れたが準備完了じゃ」
そこには汗をかいた魔界王がいて。そのまま魔界王は観客席に座り、ビシッと指をこちらに突き付けて宣言した。
「第三訓練! 目の前にいるものを撃破せよ!」
目の前に? いつの間に敵が現れたのだろうか。まぁ、これが最終訓練だし、気軽に、さっきのようにいけば――。
と、そんなことを考えていると、体が急に凍りついた。目の前にいるものを撃破。俺の目の前には、綺麗な薄紅色のロングヘアーに、透き通った青色の瞳。美少女という言葉が似合うような女の子――。
――ルメナだった。