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004 「ミッション1! 鉄格子を破壊して脱出せよ!」

 俺たちはそのまま教室へと向かった。正直、俺は怖かった。

 だってあれだぞ? 超美少女転校生が来た翌日にその転校生と登校しているんだ。ルメナを狙ってたやつだってたくさんいる。

 そんな不安を抱いて俺は、恐る恐る教室に入っていった。

「お……おはよう……ございます……」

 そう言って入った瞬間に、みんなの目が点になる。その目は語っていた。「なぜお前が石魔さんと?」と。

 それからみるみる怒りに変わっていくのが分かる。俺は逃げ出す準備をした。

 それにルメナはクエスチョンマークを浮かべる。

 しかし、いつまで経っても襲い掛かって来ず、みんな大人しく席に着いた。もしかしたら親戚だから一緒とかそういう理由に落ち着いたのかもしれない。ふぅ、なんとか免れたか……。

「ねぇ剣哉。早く席に着こ?」

 前言撤回。たった今ルメナが俺を窮地に立たせました。

 さすがにこの呼び捨ては聞き捨てならないだろう。

 しかし、これにも誰も反応しない。免れた……のか?

 その後は何とか窮地を免れながら過ごしていった。


 ◆     ◆     ◆


 放課後になり、生徒たちは鞄を持って帰ろうとする。俺もそうしているところだ。

 するとルメナがこっちにやってきて、「一緒に帰ろう」と言ってきた。俺もそれに返事し、教室を出ようとした。その時……。

「ねぇ剣哉。ちょっと今日も付き合ってくれない?」

 死亡フラグ設立。これにはさすがに男子も耐えられなかった。

 いくら親戚――ということになっている――とはいえ、今日も付き合ってくれない? はまずい。まるで昨日も付き合っていたかのようだ。まぁ実際付き合っていたのだけど。

 俺は男子どもに体育館倉庫へ連れて行かれ、パタンとドアを閉められる。

「お前……石魔さんとあんなことやこんなことをしているとは本当か?」

 いきなりどんな噂が流れているんだ。

「するわけないだろ! ただの友達だぜ」

「だよね~!」

 いきなり元気になる男子生徒。これは下手すると死刑にされるかもしれないような環境が出来てしまったな……

 そうして一日が終わり、ルメナと一緒に昨日行った場所へと向かう。魔界に行くために。

 これからほぼ毎日、魔界に行って特訓をするという約束を昨日したのだ。あくまで俺はただの人間。そう簡単にキファルガスに敵うわけがない。それでも、剣技を取得しているのとしていないとでは大きく違う。そう考えた魔界王がこのことを提案した。

 そして昨日魔界へと入っていったマンションの壁につき、ルメナが魔法陣を描く。また、昨日と全く同じの結界がはられる。俺たちは結界に飛び込み、魔界へと入っていった――。


 ◆     ◆     ◆


 再びピンクと紫が混じったような色の床を進み、また暗い道を一直線に歩き、下にもぐり、魔界王のいる場所へと向かった。

 昨日と同じように魔界王はイスに座り、暖かく出迎えてくれた。

「また来てくれたんだね、剣哉君」

「はぁ、まぁそりゃあ……」

 あんな話を聞かされて来ないのもおかしな話だが。

 そう微笑んだ後、魔界王はいきなり鋭い表情になった。何やら深刻そうな顔だな……。

「ちょうど良かったよ。重要な話があるからね」

 そう言って魔界王はその場に俺とルメナを座らせ、話を始めた。

「侵食されている一部の魔界から連絡が入ったんだ。暗黒界の支配者、キファルガスの侵攻の時間がね」

 マジかよ!? やっぱり侵略されているところはキファルガスの国だからそういった情報は入るんだな。便利なんだか不便なんだか。

 その報告を聞いたルメナも真剣な表情、しかしその中に驚きがあるようだった。

「それで……いつなんですか?」

 ルメナが少し震えた声で聞いた。すると魔界王は更に表情を鋭くして答えた。

「一週間後だよ」

 近い! 近すぎないか!? キファルガスもこっちの事情を考えてほしいものだ。

 そこから魔界王は詳細を話し始めた。

「侵攻先は現界の日本だ。まぁ、侵攻場所が近かったことが不幸中の幸いだな。都市などの詳細はまだ伝わってないが、そのうち侵攻された魔界から連絡が来るだろう」

 魔界王は左手のひらを逆さまにして俺たちに向けてそう言った。

 そうこう話しているうちにあることに気づいた。

 キファルガスが侵攻してくるのは一週間後。そのキファルガスは世界征服を達成できるほどの力を持つ。その相手をするのが俺と雄也、ルメナと魔狩。……ということはだ。

「一週間でキファルガスに対抗できる力をつけなくちゃいけないんですか?」

「もち!」

 魔界王がとても爽やかな笑顔で親指をグッと立てた。いやいや! もちじゃないよ! どうすればこんな無茶な話が成立するんだ!

 俺がそんな心中にいると、ルメナがまた驚いた表情……というか他に方法はないのか? と問いかけるように言った。

「あれを……行うつもりですか?」

「もち!」

 また魔界王は爽やかな笑顔でグッと親指を立てる。マイブームなのだろうか。

「ルメナ、あれって何だ?」

「昔から魔界に伝わる伝統訓練だよ。私たち魔界人でも非常に困難な訓練なの」

 今度は険しい表情で言う。

 また色々と新しいことが出てきたが、一週間後にキファルガスは現界の日本へやってきて、どこの都市かは確定していないが侵攻を開始する。かなりの緊急事態ともいえるこの状況に対応するには、単純に俺がキファルガスに対抗できる力を持つこと。それを実現させるために魔界の伝統訓練を行うと。

 頭の中で整理が終わったところで、ルメナが険しい表情のまま話かけてきた。

「剣哉。死なないでね」

 怪我レベルではないことを覚悟させられる。

 こうしてまたもや普通からかけ離れた日が始まった――。


 ◆     ◆     ◆


 相当体力を使う訓練だそうなので、翌日にすることになり、昨日はあのまま帰った。そしてその翌日を俺たちは迎えているわけだ。生憎なのか幸いなのか、今日は土曜日で休日だった。思う存分に訓練が出来るわけだ。はっきりいって嬉しくない。

 家族には出かけると適当に言い、魔界へと繋がる結界があるマンションへとやってきた。というのもこのマンションはすでに潰れていて、現状、誰も住んでいない。だから心置きなく魔界へと行けるわけだ。

 俺が魔界へ行こうとすると雄也が向こうからやってきた。

「おはよう、剣哉」

「ああ、おはよう」

 何だろう? 雄也の顔がスッキリしていない。……もしや。

「雄也も……訓練?」

「お前もか」

 雄也はその場ではぁ、と溜め息をついた。どうやら雄也も訓練を受けるらしい。

 しかしまぁ……明らかに雄也は色々と魔狩に振り回されているな。ああいう元気な奴が基本的に苦手な奴だからついていけてないんだろうな。

「じゃあ、行くか」

「ああ」

 俺たちは嫌々魔界へ行き、訓練場へと向かった。


 ◆     ◆     ◆


 訓練場ははっきり言って大きすぎる。どこかのスーパーアイドルのライブが出来そうな広さだ。学校にあるようなステージにバスケットゴール。魔界の訓練場……というか体育館は現界のものと全然変わりはない。

 正直なことを言うと、とても命がけの訓練をするような設備ではなかった。普通に、かなり広い公共の体育館と同じような。

 俺と雄也がキョロキョロと辺りを見回しいると、観客席の入り口から、ルメナとセイラが入ってきた。そして当たり前かのように一番前の観客席に座る。訓練に参加しない気満々だ。

「お前らはやらないのか?」

 同じ疑問を雄也が投げかけた。

 すると、また当たり前でしょ、といった表情でセイラが言う。

「これはあくまであんたたちが強くなる訓練だから。私たちはただの観戦者」

 つくづく分からないことだらけだ。本当に魔界は信じられないことが降り注ぐな。

 観戦……ということは、訓練を受けるのは俺たちだけということになる。パートナーである魔界人のルメナはおそらく魔法か何かを単純に使えるのだろう。それに追いつくために俺たちが訓練を受ける。ざっと考えればこういうことになるわけだ。

 そんな考え事をしていると、急に訓練場が――ゴゴゴゴゴゴッ!!――、と揺れ始めた。慌てて俺と雄也はバランスをとった。

 そっちに意識がいっているうちに、いつの間にか俺と雄也は鉄格子に閉じ込められていた。

「な……何だこれ!?」

「……鉄格子に入れて何をする気だ?」

 慌てる俺とは対象的に雄也は冷静に理由を探る。

 するとコツ、コツ、と足音を立てながら、魔界王が観客席の方に現れ、ルメナの隣に座った。そして人差し指をこちらに指し、言い放った。

「ミッション1! 鉄格子を破壊して脱出せよ!」

『……は?』

 そんなこと、言っては悪いが簡単に出来ることだ。こっちには漆黒剣というものがある。そこそこの威力を持つこの剣があればただの鉄格子くらい簡単に破れる。

 そう思って俺は腰に納めていた剣を抜き、ぶん、と空気を振動させながら鉄格子に向かって剣を振った。ギャイン、と鈍い音を立てて衝突する。壊せる。そう思ったとき、漆黒剣に黄色と青色の稲妻が走り、そのまま俺を感電に追い込む。

「あだだだだだだだだだだだ!!」

 慌てて漆黒剣を放し、その場に座り込む。全身がびりびりして動けない。

「……ふ~ん。電流が流れてるわけか」

 雄也が真っ黒な鉄格子を見つめながら言う。

 普通に考えて迂闊に触ると死ぬ。俺は反射的に電気が流れてきた漆黒剣を放した。それなのに今になっても体が痺れて動けない。我慢して鉄格子を攻撃し続けるなんて行為をすれば、第一訓練で命は終わりである。

「……頭脳を使えってか」

「そういうことだな。進学校の維持を見せるか」

 こうして第一訓練が開始された――――。

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