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018 「……ない、わね」

前回はお休みして申し訳ありませんでした。

今回からはテストも終わったので、通常運転行きます!

……で、今回はいつもに増して短いです。すいませんm(__)m

 長い長い階段を昇り始めて10分ほど。5階から6階にかけては段数が今までとは桁違いになっていた。昇っても昇ってもフロアは見えてこない。

「ちくしょー……訳のわからん構造しやがって……」

 階段を昇るだけで息切れがしそうになる。運動始めようかな。

 なんかこんなゆっくり行っているから思うが、侵攻を待ってくれるキファルガスって案外心広いな。いや、不謹慎だ。

 そんなことを考えつつ、一歩一歩進んでいくのだった。


 ☆


 それから5分くらい。とうとう6階のフロア――ではなく、大きな門が現れた。幸いなことに門番はおらず、ただ大きな門が聳え立っているだけだ。

 やっと、来たんだよな。

 ルメナが囚われの身になってからどれくらい経つのだろう。とんでもなく長い時間だった気がする。でも本当はそんなに経っていない。夏休みの対義語みたいだ。

 生唾をゴクリと飲み込む。ここに来て少し怯えた感情が出てきてしまう。俺は叩き上げのポンコツ剣士。対するキファルガスは世界を支配しかねない帝王。勝つ確率の方が低い。下手したら死ぬかもしれない。

 そんな恐怖を簡単に押しのけて、門に手を掛ける。死ぬよりもルメナを助けたい。もう俺に怖いものなんかない――と、錯覚するくらい。


 ギィィィ――と鈍い音を立てて、真ん中から光の裂け目が現れる。やがてその門は完全に開き、真っ黒な一筋の道を見せる。

 その一番先には、金に縁取られた赤のイス。それに座る黒いコートを着た男性。

「ようこそ、暗黒城最上階、王の部屋へ」

 キファルガスだ。このしっかりとした低い声。暗闇の中、ルメナがいなくなったときに聞いた憎い声だ。

「ルメナはどこにいる!?」

「まぁまぁ、そう急がずに。何も傷めつけたりしていませんよ? この奥の牢屋で少し眠ってもらっているだけです」

 その余裕な口ぶりに余計、腹が立ってくる。自分の世界征服のためにルメナやナイツを監禁したのは魔界にとってだけの怒りかもしれないが、罪もない暗黒界の住民を奴隷として扱う。とても許されることではないと俺は思う。

「どうして……どうしてお前はそこまで世界の征服にこだわるんだ?」

「別にこだわっているわけではないのですが。まぁ、黙秘権使用ですね」

 こんな時だけ現代のあり方しやがって。とことん腹の立つ奴だな。

「そんなことより、あなたは私を倒しに来たのでしょう? そんなに突っ立っていて良いのですか?」

「言われなくても……」

 歯をギリッと摩擦させて、

「戦ってやるよ!」

 漆黒剣を思い切り抜いて駆けだしていった。その時は我を忘れて、冷静さを失って走ってしまっていた。怒りなんかに身を任せてしまったら敗北を味わうことを、忘れていた。


 ◆

 ◆

 ◆


「ん……?」

「どした、ルメナ」

「いや……」

 何か声がした。この牢屋しかない、喋る人の方が珍しいこの場所で声が聞こえるのは若干変だ。結構隣り合わせに並んでいるのに、いつも喋り声は私とナイツのものだけだ。

「何か、騒がしいな。キファルガスが暴れてんのか?」

「まさか」

 でも音の源はキファルガスのいる王の部屋だと思われる。ここから一番近い部屋が王の部屋で、逃げ出すことは不可能な状況を作り出す。そういう構造になっているため、5階の音など全く聞こえない。王の部屋もまれに聞こえるくらいだけど。

「魔法が使えたら何が起きてるのか一瞬で把握できるのにね」

 この部屋には独特な結界が張られていて、閉じ込められている人の魔力を著しく奪う性能があることが分かった。一度、通話魔法ですぐ側にいるナイツにかけてみたけれど、力不足で端末は微粒子となって消えてしまった。

 そういった日常魔法の他にも、聴力魔法と言って、達者であれば達者であるほど遠くの声が聞こえるというものがある。私は通話魔法の次に習得している魔法で、ここからであればキファルガスの声など自分の呼吸くらい聞こえるけど、魔法は封じられてしまって聞くことが出来ない。

 そんな状況の中で声が聞こえるとすれば、相当な爆音が王の部屋から流れているに違いない。


「……でもさ、こんな音が流れ出るってことは……他に誰かいる?」

「そうよね。まぁ、側近が何かやらかしたんじゃない?」

「そう、かな?」

「それ以外に何があるって言うの?」

「……助けに来てくれた。っていう選択肢はないのか?」

「…………」

 考えては見た。いや、そう信じたかったけれど、不可能は不可能のまま。キファルガスを倒すどころかたどり着くまでもが既に地獄。

「……ない、わね」

「そっか……」

 その微かに聞こえる音を耳にしながら、再び地面との睨めっこを開始した。

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