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014 「あなたをこの場で始末させていただきます」

 二週間も時間を開けてしまいすいませんでした><

 テストが終わった土日に頑張ってみたのですが成し遂げられず。本当に申し訳ないです。

 そして今回もあまり長くありません。

 これからは一週間更新出来るように頑張りますのでよろしくお願いします。

 俺はひたすら走っていた。汗が頬を伝って落ちていく。もう体力的には走れない。そりゃあ、外で出て遊んだり運動したりしなかった俺に体力なんてものあるはずがない。でも、今は走らなければならなかった。いち早く、ルメナを助けるために。


 雄也の推測通り、上の階には兵士の姿が全く見当たらない。視界に入ってくるのは真っ赤な絨毯と永遠に続くのではないかと思える階段。それ以外は見えないし見ようとも思わない。

 こんなにひたすらになったのはいつ以来だろうか。いや、もしかしたら人生で初めてかもしれない。向き合っていたのはいつでも勉強机。窺っていたのはいつも両親の表情。訳の分からない縄で縛られていた俺に必死になったことなどなかった。

 だけど、今は、たった一人、たった一人の少女を助けるために走り慣れていない足で進んでいる。ここが暗黒界という異世界じゃなくても、俺にとっては非日常的である。

 しかし、あまりにも長い階段とあまりにも無い体力。すぐに行かなければならないという気持ちは急ぐばかりだったが、次第に足は静止していった。そこで速い呼吸を整えていく。

 学校では考えられない段数にかなり戸惑い、疲れるが、昇っているうちに四階まで到達していた。……てか、これで頂上まで三分の二か。

 とりあえず俺は歩いて行くことに変更し、呼吸を整えながらまた上を目指していった。


 ◆

 ◆

 ◆


 目の前にいる暗黒城兵士長のグリードとの戦い。剣を握って一週間程度の俺だけじゃあ到底敵う相手じゃない。でも、戦いや魔法展開に慣れているセイラと一緒なら、勝機はあるはずだ。

 さっき斬られた場所がまだズキズキと痛む。それだけでもう動きは遅くなっていた。初めて人間の体を恨んでみる。

『さて、これからどうする、セイラ。さっきみたいにひたすら撃ちまくる、では相手できないと思うんだが』

『お、察しがいいね~。さすがは私のパートナー。もちろん、あんな攻撃方法なんて集団にしか通じないし、捻りに捻らないとグリードには勝てないさ。体では勝てないんだから』

 まぁ、異世界人に真正面からぶつかっても勝てないことなんて知っている。体力的にも腕力的にも何もかも別次元だからな。だとしたら、勝つ方法を考える脳とセイラの魔法力、そしてサファイアボルトの有効活用が最重要になってくるな。

『まず、相手は一人なんだ。どっちかというと憑依解除が有効的かな』

『おい、セイラ。お前は何とかなるかもしれんが、次あんなの食らったら俺は死ぬぞ。それに戦力にならないし』

『遠隔操作であいつの死角に電気罠を貼っておく。そこでサファイアボルトを最大限に充電しておいて。あんたが放つ一撃で仕留めるくらいには、私が攻めておく』

 ……セイラが危険な目に合うかもしれないが、作戦としてはありかもしれない。まだ対等に戦えるセイラとグリードが体力を削り合って、最後に充電しまくったサファイアボルトでとどめ。

『もう憑依解除するぞ。異論も反論も聞かん!』

『賛成だ』

 お互いの意見が一致したところで、憑依を解除する。一度練習で憑依を体験したので解除方法もちゃんと分かっている。さっき黒い剣で切り裂いた部分をもう一度切り裂き、そこからセイラが脱出すればいい。

 俺はそのマニュアル通り、黒い剣で自分の腕を切り裂いた。ちなみに傷にはならず、後で塞がる不思議な傷口である。

 入り込んでいた小さなセイラが腕から飛び出し、通常サイズの少し小柄なセイラに戻る。

「おや、分裂しちゃうんですか?」

 そして、大変長らくお待たせいたしました、グリードさん。やっと出番。――いや、そんなこと言っている場合じゃない。

 そのグリードの言葉を聞く前にセイラは魔法を展開した。自分の手で魔法陣を描いているのだが、正直何をしているのか全く見えない。

「術式展開! ファーラーワープ!」

 その魔法は俺にかけられ、小さな微粒子が体を包み込んできた。呪文から察するに移動呪文。多分これでグリードの死角に瞬間移動させ、電気罠を貼るのだろう。

 結構発動が速かったから安全に移動できそうだな。


 ――その考えを、彼は崩壊してきた。


 もうすぐ完全に移動する、という時に彼――兵士長グリードは呪文の微粒子を切り裂いた。俺を包んでいた光は消えてしまい、呪文は完全に壊されてしまった。

「な……」

「残念でしたね、人間さん」

 刹那。俺の肩に向かって刃がまっすぐ伸びてきた。セイラが急いで魔法を展開させるが、さすがの彼女でもこの時間内には――。


 ――やがて見えた景色は、真っ白な天井だった。


 ◆

 ◆

 ◆


 歩くこと十分ほど。俺はやっと五階到着した。歩いて昇って一つ階を進めるのに十分要するとかどんな構造しているんだ。

 あと一階でついに到着する。ルメナがいる場所に。一度も話したことがなかったのに、ずっと思い続けていたルメナがそこにいる。

 さすがに十分も歩いていると呼吸も次第に整っていった。今は心臓通常運転。グロい気がするのは気のせいだ。

「さぁ、あと一つ」

 と、俺は最後の階段の前に立っていた。早速昇ろうと一歩を踏み出した時。

 階段の奥から人影が現れた。特別高くも低くもない身長。そして一つ降りてくるたびに鼓膜を揺らすカチャ、という音。

「もうここまで来られましたか。予定よりもかなり早いですね」

「あんたは……」

「私はキサラ。暗黒界の支配者、キファルガス様の側近でございます」

「キファルガスの!?」

「キファルガス様のご命令でしてね。あなたをこの場で始末させていただきます」

 こいつ、柔らかな口調でとんでもないこと言うな。

 ……てか、俺だけじゃやばくないか? 乗り込んできた中で暗黒界の奴らと対等に戦えるのはセイラだけだし、こいつキファルガスの側近ってことは……雑魚とは考えづらい。というか考えられない。

 もしかして、ピンチってやつ?

「さぁ、どうします? お引き取りくださるのなら命は奪いませんが」

 殺されるかもしれない。人間なのだから一発目で死ななかったら運がある方。

 でも、ここまで来て帰れるほど馬鹿でもないし賢くもない。

 俺はゆっくりと腰に掛けていた漆黒剣を引き抜いた――。

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