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013 「あいつは……最弱で最強なんだから!」

 最近タイトルセイラ台詞ばっかだな……。じゃなくて!

 いつも少女と魔界のエンブレムを読んでくださってありがとうございます!

 前書きに書かせていただく内容はと言いますと。僕は学生でして、もうすぐ中間考査があります。

 なので来週、10月14日の更新はお休みさせていただきます。申し訳ございません。

 それ以降はなるべく一週間更新にしようと思いますのでよろしくお願いします。

 では、13話ご覧ください!

 ――これが、本当のパートナー同士の憑依……。

 そのあまりにも大きすぎるパワーに俺は圧倒されていた。後ろをついて来ればいい、と言われて数分。視界を埋め尽くすほどいた兵士たちは、全員地面に倒れている。無論、雄也とセイラがこれをやってのけたのだ。

 自分で好きなときにサファイアボルトに蓄電できるのに加えて、好きなタイミングで発射できる。また、セイラの雷魔法だけでも威力はあるし、蓄電していないサファイアボルトも敵の刃を自分に届かせないくらいの防御はできる。

 彼らは傷一つ付けず、淡々と前の道を切り開いていく。俺は今それについていっている状況。


 しかし……この憑依が永遠に出来ると思うと仲間でも何だか恐ろしいな。そう思ってしまうほどに、彼らの憑依能力は異常だった。いや、まぁ、憑依ってそういうものだと思うけど。


 やがて俺たちの目の前に立っていたのは暗黒城兵士長のグリードだけとなっていた。彼はまだ雄也/セイラとは戦っておらず、傷は付いていない状態。お偉いの観戦者となっていたのだが、今はもう観戦者の雰囲気はない。

「……あなたたち、やりますね。さすが、ここまで来ただけはあります」

 でもその変わらない口調。まだ余裕というものが見えている。

 そうとだけ呟くと、彼は腰に掛けてある剣のグリップを握り、キィィィィン――と鈍い音を立てながら引き抜いた。

「さぁ、始めましょうか」

「ちょっと待ってくれ」

 と、グリードがこちらの方に歩を進めようとした時、急に雄也、もしくはセイラが手を挙げ、彼の動きを止めた。

 それから彼、もしくは彼女はくるりと回れ右をし、俺の方を向いてくる。

「剣哉。お前は先に階段を昇れ。ちなみに右手挙げて喋っている時が私セイラ」

「左手を挙げている時が雄也だ。察してくれ」

 心遣い感謝いたします。

 ――じゃなくてだな! 階段を昇れって……。階段の目の前には暗黒城兵士長のグリードがいるんだぞ? そいつをスルーして行くなんて無理に決まっている。

 そんなことを思っていると雄也/セイラがこっちに更に近づき、耳元で小さな声で囁いた。

「私の雷魔法には相手を一定時間痺れさせるものがあるんだ。それを使ってグリードをしばらく行動不能にする。その間に、お前は行け」

 右手を挙げているし、話の内容的にセイラだな。理解。

「ここにあんだけ兵士が密集していたんだ。上の階には兵士はそう多くないはずだ。お前はただ走ればいい、暗黒城最上階まで」

 左手。よし、雄也だな。

 俺だってもう分かっている。ここまで来て安全な作戦なんてないってことくらい。だったら、どんなに危険でもかけてみるしかないよな。……まぁ、最上階までに兵士がいたらとても困るけど。


「んじゃあ、行くぞ」

 右手を挙げている憑依体が最後にそう呟いて、スクッと立ち上がった。ズンズン、とグリードの方に近寄っていき、丁度良い間合いが取れたところで足を止めた。

「行くぞ! グリード!」

「いつでもどうぞ!」

 グリードは構えていた剣をすぐにこちらに向けて突っ込んでくる。先ほどまでうじゃうじゃいた兵士たちとは比べ物にならないくらい速い。ウサギとカメみたいだ。まぁ、気を抜くことはしないだろうけど。

 雄也/セイラはその突きをしゃがんで躱し、右手で彼の――グリードの足をちょんと軽くタッチした。すると、彼の足元からじわじわと電撃が走り始め、たちまち上半身へと浸食していく。

「今だ! 行け、剣哉!」

 もう手を挙げていないが、どちらが喋っているかなどで混乱している場合ではない。今はただ階段を駆け上がっていくのみ。そして……最上階を目指すだけだ。

 それからは一度も雄也/セイラを見ることなく、俺は階段を走っていった――。


 ☆


「まさか……あなた方がこんな技を仕込んでくるとは……」

 麻痺の有効時間が切れ、グリードはスクッと立ち上がりこちらを睨んできた。

「ちょっと油断しすぎたかもしれませんね。一人来客を奥に行かせてしまった」

 コツン、コツン、と靴で地面と接触させて生じた空気の波動が部屋に響き渡っていく。その音が鳴るたびに、こちらへと近づいているのだ。

「来客の中で一番力がない者とはいえ、奥へ進ませてしまったことはまずい。私はすぐに追いかけて始末しなければなりません。なのであなたには死んでもらいます」

 そうとだけ言うと、彼は視界からは消えていた。気づけばもう目の前にいて、剣を構えている。そのまま銀入りの刃は俺たちの方へと向かって伸びてくる。

 それに俺は反応出来ず、直撃してしまった。腹部をもの凄い力で斬られてしまい、現界ではまず付かないような巨大な切り傷が出来る。

『雄也! 大丈夫か!?』

『ああ、大丈夫だ』

 もう投げだして帰りたいくらいの痛さだけどな。


 俺は今の……と言ったらおかしいかもしれないが、剣哉たちと過ごす日常生活は嫌いじゃない。寧ろ好きだ。だから、こんな暗黒界とか訳の分からない奴に日本を乗っ取られるなんてごめんなんだ。それに、友人が本気で助けたい奴。それは俺の助けたい奴でもある。今まで表情が暗かった剣哉に光を射した人――セ

 キマ・ルメナを、助けたい。

 だから俺は負けるわけにはいかない。魔界のためとかは知らないが、少なくとも……一人の親友のために。


「前、通させてもらえますか?」

「……もらえねーな」

「ほう……」

 通させるわけにはいかない。こいつを、剣哉のところに行かせてはならない。

「まぁ、雑魚が一匹、それほど問題は大きくないですしね」

 というかこいつ、急に口悪くなったな。あ~、どこの世界でも人って怖いんだな。

 ……じゃなくて、勘違いするものなんだな。


「あいつ、見くびってたら結構やばいかもよ、兵士長さん?」

「何だと?」

「そうなんだろ? セイラ」

「その通り! あいつは……最弱で最強なんだから!」

「……もう訳が分からない。あなたたちをここで処分する!」

 呆れた表情を浮かべてから、再び彼はこちらに向かって突進してくる。今度こそは受け止めて見せる。これ以上傷を負って劣勢に回る気もないからな。


 そして、彼の剣と俺の剣が打ち合いになり、大きな火花を辺りに散らす。これが、俺とあいつとのオープニングセレモニーなのかもしれなかった――。

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