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011 「ナイスアシストだったぞ、剣哉」

早めの更新、早めの更新(感動

 水色のテレポート空間を抜けると、目の前には暗黒の世界が広がっていた。光はなく、風もない。かと思えば暑いも涼しいも寒いもない。文字通り殺風景な場所。

 セイラが出した魔法の地図によると、ここは暗黒界の城付近の深い森で、五分もあれば暗黒の城――暗黒城につけるらしい。まぁ、何も障害物がなければ、の話だが。


「……で、来たが、セイラの言う作戦って何なんだ?」

 セイラはここに来る前、ちょっとした考えがあると言っていた。確かに俺も気になっていた。そのちょっとした考えがもしかしたら役に立つのかもしれないのだ。そのことを代弁するかのように雄也がセイラに問うたわけだ。

「まぁ、色々と説明が長くなるから、しっかり聞いてくれ~」

「分かった」

 そう言うとセイラは地図の隣に新たな魔法陣を描き、メモ帳のようなものを取り出した。そのまま指でスマートフォンを扱う時のように指を滑らせ、絵を描いていく。簡単に半円を描いて、その真ん中に《しろ》と記入する。うん、城くらい漢字で書いてほしい。

「いま私たちがいるのはざっとここら辺なんだ」

 セイラは地図とメモ帳を照らし合わせて説明していく。確かに暗黒城は近場で、それほど時間がかかりそうでもなかった。

「ここから徐々に暗黒城へと近づいていくわけなんだが……多分今の警備は重戒だと思う」

 まぁ、魔界の者が捕まっているし、警戒するのは当たり前だよな。

「凄い大人数とは考えにくいけど、何人かは人員がいるはず。……そこでだ!」

 先ほどまでメモ帳の上で滑らせていた指を急に俺に向け、一言一句ハッキリと述べていく。


「お前、私に憑依させろ!」


 ……はい?

 憑依って確か、魔界の者が人間の体内に入り込み、同じ力を発揮するあれか? ルメナと一度だけやったことあるが、何でそれを今セイラとやる必要があるのだろう?

「……雄也の持っているサファイアボルトは、蓄電させなかったらあくまでただの剣なんだ。しかし、蓄電した暁には、広範囲で放電させることが出来る。そうなったら雑魚の大人数は簡単だろう? 多分、暗黒界の雑魚よりは私の方が雷の力は強いし、憑依しておけばその威力も多少ではあるけど増加するんだよ」

 ああ、そういうことか。俺に憑依したセイラが威力が増加した雷をサファイアボルトに撃ちまくる。最大まで溜まった電気をそのまま放出。一掃。というわけだ。……というかセイラにとっては珍しくまともな作戦だな。


「ただ、注意点がある。剣哉は既にルメナと憑依を経験済み。それでルメナが正式なパートナーと認められているから、私みたいな他の魔界人とは三分しか憑依できない。それに、憑依が解けてから次に憑依するまでに五分のクールタイムを必要とする。結構、目まぐるしい戦闘にはきついクールタイムなんだ」

 だんだんセイラが天才に思えてきたのは気のせいだ。うん。

 まぁ、あながち悪い作戦でもないので大人しく実行することにしよう。雄也も了解してくれているようだし。


「じゃ、目立たないように行くために、ここの森で身を隠しながら行こう」

『おう』

 俺たちは音を立てないこと、姿を見せないことの二つに気をつけながら暗黒城へと近づいていった。


 ☆


 草で身を隠しながら進んでいくと、先ほどまで若干目に映った程度の大きさだった城は、もうこれ以上大きな建物はないだろうと思わせるくらい大きなものに変化していた。黒と赤を基調としたその城は不気味そのものを表現しているようで、正直入るのが躊躇われる。

「あれが暗黒城か……」

 その大きさに雄也が思わず独り言を呟いてしまった。いや、まぁ、初めて見るとなるとそういう感想になるよな。


 さて、問題の門番さんだが、想像以上の数が出揃っていた。簡単に数えようとしても不可能。また、強そうな鎧を身に纏っていて電気など微塵も通さなさそうなのだが――。

「行きましょう!」

 ――セイラは屈していなかった。それほど自信があるのだろうか。

「準備はいいか、剣哉?」

「ああ、いつでも」

「んじゃあ行くぞ!」

 セイラは腰に持っていた黒い短剣で剣哉の腕を切っていき、妖気を発生させる。それに勢いよく飛び込んだセイラはどんどん剣哉の意識へと溶け込んでいく。

憑依(ポゼッション)!』

 そして意識は完全に半々のものとなった。目つきは剣哉のままだが、目の色は完全にセイラのもの。髪形も剣哉の形のままだがセイラの色。そうして完全なる憑依体へと変化したのだった。

「よし! 行くぞ!」

 俺は勢いよく草むらから飛び出し、門番の方へと全力ダッシュしていく。


『お、剣哉も同じこと考えていたか!』

「ああ、まずは――」

『鎧が電気を跳ね返さないか確認を!』


 俺……というかセイラが思い切り右手を振り上げて雷の魔法陣を描いていく。まぁ右手だけで描くという器用な手つきで完成した魔法陣は雷の力へと化し、俺……というかセイラの手に纏わりついている。

「そりゃあ!」

 そしてそのまま発射。綺麗な直線を描く雷の光線は一人の兵士へと向かってゆく。その光線が当たった時、やっと他の兵士たちは俺たちの存在に気づいたようだ。おお、電気通るじゃんか。見かけ倒しかよ。


「貴様等、何者だ!?」

「しょうがない、名乗ってあげましょう。俺剣哉」「私セイラ」

「結局どっちが本物なんだよ!」

 あ、そうか。憑依しているからどっちも自分を指して名乗ると面倒くさいのか。じゃあ名乗らないでおこう。

「あ、俺雄也」

 さて自己紹介も終わったところでいっちょ活躍と行きますか!


『雄也!』

「はいよ!」

 掛け声とともに雄也はサファイアボルトを構えた。それと同時に俺――まぁ、セイラが雷の魔法陣を描いて、雷の力を右手に纏わせる。そしてそれを雄也のサファイアボルトに撃ち続ける。

「総員、かかれぇえええ!」

 しかし、暗黒城の兵士たちも俺たちに向かって牙を剥いている。まぁ、そんな簡単にはいかない……よね~。

『なぁ、兵士たちどうするの?』

『おいおい、何のために憑依したと思っているんだ』

『雷の力の増加のため……』

『も、あるが。剣哉に……』

『俺に?』


『足を支配してもらうためだ』


 ……へ? またこの子はとんでもないことをおっしゃる。

『つまりだ。神経の使い分けをするんだよ。私が上半身を扱うから、お前は下半身を扱ってひたすら逃げてくれ』

 下ネタに聞こえるのは気のせいだ。

 って、えええええええ!? 俺の足であいつらから逃げる!? どう考えても無理だろ。俺はあくまで人間なんだぞ。速さなんて到底敵うわけないじゃないか。ましてや短距離不利な日本人ですよ?

『別に逃げなくてもいいんだ。もともと人間の足なんか期待していない。……躱せばいいんだよ』

『躱す……! そうか!』

 やっとセイラの意図を理解出来たぞ。こいつに悩まされたのが少々気に食わないがまぁいい。思いだすんだ。毒弾訓練!

 俺の肩寸前まで既に来ていた刃。しかしそれを――足払いで逸らせる。腰も俺が使えることになっていて、しゃがむなどの行為は自由にできる。兵士を転倒させることで躱したのだ。

 それに加えて、あまりに多い人数だったので、一人が転倒すると後ろに続いていた兵士がどんどん倒れていく。まさにドミノ方式!

 雄也の方はセイラが雷ばっか撃っているから迂闊に近づけない。これはばっちりな戦闘態勢だ。

 まさか、相手が下半身と上半身を違う奴が操っているなんて思わないだろうからな。俺に攻撃は全く来ない。それに、セイラはもともと魔界人だから、剣の乱撃を躱すことなど容易いことなのだ。


『もうすぐ三分! 解除するよ!』

「十分だ!」

 セイラが叫んだ声に雄也が返す。

 三分が経過し、俺とセイラは分離した。周りの兵士はめっちゃ驚いていたけど気にしない。


「行っけぇええええええええええ!」

 そして放たれた電撃。鉄格子訓練よりも大きく、食らわなくてもその威力の大きさが分かる――って。

「俺たちも食らわない? これ」

 だって雄也の前にいるの兵士と俺たちだもん。

 そして、俺の目の前で大きな爆発が起きたのだった。


 ☆


 あたりは兵士が倒れまくっている。地面は完全に焦げてしまい、鎧も完全に黒色に変色している。

「……また派手にやったな、雄也」

「やれってセイラが言うからさ」

 まぁ、あれからの展開はと言うと、セイラが目にも留らぬ速さで魔法陣を描き、バリアを張ってくれたため味方からの大ダメージは防ぐことが出来た。それをもっと早く言ってほしかったのだけれど。

「さ、道は開いた~」

 そう、邪魔者がいなくなった今、俺たちの前に立ちはだかるのは巨大な門だけだった。人気男性ユニットの大きい方10人分くらいあるのではないだろうか。

「さ、入るぞ~」

 と、行動の早いセイラ。うん、何だかだんだん頼もしく見えてきた。

 すると、門の前で急に振りかえり、

「ナイスアシストだったぞ、剣哉」

 と、ニッと笑って門に手を掛けた。


 それに俺は笑顔で返し、三人で門をくぐって行った――。

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