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010 「通話魔法が達者なあなたも抑えておくべきだ」

またもや遅れてしまいすいません><

まだ早い更新は出来そうにないですが……頑張ります。

「ん?」

 第三訓練の最中、また殴りかかろうとしていたルメナが急に動きを止めた。何かを確認すると、すぐさま小さな魔法陣を目の前で描き始め、そしてそれを耳と口に当てて話し始めた。

「どうしたの、ナイツ」

 通話の相手はナイツらしい。確かナイツは暗黒界に支配された魔界領域の住民で、通話魔法も達者であることから、ルメナと暗黒界の状況について情報を提供してくれる人物だ。また何か新しい情報でも手に入ったのだろうか。


『やぁ、セキマ・ルメナさん』

「……誰」

 俺にはルメナの「……誰」という言葉しか聞こえなかったが、その反応と表情を見ると、相手はナイツではなさそうだった。

 俺がそんなルメナを驚いた表情で見ていると、ルメナは魔法を展開させ、相手の声をスピーカーで出力してくれた。

 一時第三訓練は中断となり、先ほどまで周りで聳えていた透明の壁も消去され、雄也とセイラ、そして魔界王が近寄ってくる。

『これは失礼。私はキファルガス。暗黒界の支配者だ』

「キファルガス!?」

 キファルガス――嫌ほど聞いた名前。暗黒界の支配者にして、この世界侵攻の張本人。そんな奴からの急な通話がナイツの端末を通して来ている。

「ナイツはどこ?」

『あいつのことですか。どうやらあなた方に私たちの情報を伝えていたそうで。まさか今時通話魔法を磨いている者などいないと思って、国民にも情報を与えていましたが……とんだ大間違いでしたね。彼はこちらの法に(のっと)った罰を受けていただきます……が、その前に』

「……何」


『通話魔法が達者なあなたも抑えておくべきだ』


 そうして通話魔法端末からノイズが鳴り響きだす。アリーナの作りに音が跳ね返り、何度も何度も耳に入ってくる。

 それと同時に部屋は完全に真っ暗になっていた。傍にいたみんなの姿が誰一人として見えない。

「こんにちは、魔界のみなさん」

 そんな中聞こえた声。低く、しっかりとした声。さっきまでずっと聞いていた声。それが今度は魔法通話端末が切られた状態なのに、目の前から聞こえてきた。

「ちょ! 何!?」

「一緒に来ましょう、ルメナさん」

「やめて!」

 視界が真っ黒な影響のため、ルメナがどういった状況か掴めない。でも、声を聞く限りピンチだということは分かった。

「ルメナ! 大丈夫か!?」

「剣哉! 助けて……」

 そこで声は途絶えてしまい、ルメナの声は俺の耳には入ってこなかった。


 ☆


 視界が明るくなり、先ほどまであったアリーナの姿をしっかり捉えられている。しかし、その場所にはルメナの姿がなかった。いるのは俺と雄也、セイラと魔界王の四人だけ。

「ルメナ……どこに……」

「多分、暗黒界だな」

 そう険しい声音で答えたのは魔界王だった。胸の前で腕を組み、何かを考えていた。

 俺も大体の内容は予想できる。これからどうするかだろう。今までの暗黒界の情報がこちらに来ていたと知られた以上、向こうは大きな確率で予定日を変えてくる。通話魔法が達者なナイツは暗黒界の囚われの身だし、ルメナはここにいない。ということは、情報変更に全く対応できないのである。

「で、これからどうするんだ?」

 しばらくの沈黙を破ったのは雄也だった。確かに、このまま黙っていても何も変わることはない。これからの事をどうにかして絞り出すことがまずしなければいけないことである。

 しかし、簡単に考えてどうすることもできない気がする。ルメナがいなくなってしまった以上、特訓続行は不可能なわけだし、だからと言って今までの侵攻予定日を信じて待っているのも無謀なことだろう。


「これからどうする? 決まってるじゃないか! 暗黒界に行くぞ!」

 と、威勢よく声を張り上げたのはセイラだった。俺が頑張って頭をフル回転させているのにそんな単純な答えで――、

「それが無難だろう」

 ――いいのかよ!

 いや、まぁ、冷静に考えるとそれしかない。敗北は百も承知であるが、行動せず負けるよりはよっぽどマシだ。

「しかし、暗黒界に行くのはかなりの危険を伴う。キファルガス関係はもちろん、奴隷たちもキファルガスの支配下にあるがために数で押し切ろうとするだろうが……それでもいいのか?」

「大丈夫だって! ……ちょっと考えがあったりするのだ」

 自信満々の表情を見せるセイラ。……ちょっと信じ難いが。

「では、今日中に暗黒界に転送する準備を執り行う。三人はゆっくりと休んでおいてくれ」

『ラジャー!』

 ということで俺はお言葉に甘えて睡眠を取った――。


 ◆

 ◆

 ◆


「この者たちを牢に閉じ込めておけ」

「了解しました」

 まだ意識がはっきりしない。私は今、どういう状況なのかさっぱり理解できなかった。ガチャン! という重い音が耳に入ってくる。

 私から、先ほどまでずっと握られていた手が離れたと同時に、その場で倒れこんでしまう。足元がふらついてとても立っている状況を保てなかった。

 立てないなら寝てしまおう。やることがないなら寝る。多分どこでも通用する行動。私はゆっくりと瞼を閉じた――。


 ☆


 目を覚まして目に飛び込んできたのは鉄格子だった。その先は上の方に付いている蝋燭(ろうそく)が照らしているが、ところどころ暗いためより不気味に感じる。

「あ、目覚ました?」

 と、聞き覚えのある声が隣りから聞こえてきた。

「あれ、ナイツじゃない」

「おはよう。……案の定、ルメナも捕まっちゃったんだね」

「捕まった……。そっか、確か私キファルガスに……」

「そう。情けないことに僕が通話魔法でルメナたちと接しているのがばれちゃってね。通話履歴なんてルメナばっかりだから、ばれちゃったわけなんだ」

「……履歴って便利だと思っていたけどそうでもないのね」

「だね。……で、これからどうなるんだろうね」

「さぁ? まさか私たちでこの鉄格子割れるはずもないし……」

 となると、助けを待つしかない。

「……パートナーが学力ある人で良かった」

「本当にね」

 剣哉か雄也がいなければ――と考えると恐ろしい。セイラと魔界王の頭脳では、どうにもならない気がする。

「ま、ひとまずは待つしかないね」

「うん」

 そうして、また沈黙が続くのであった――。


 ◆

 ◆

 ◆


「これがテレポートの魔法陣だ」

 と、目の下にクマがある魔界王が魔法陣の方に手を出して言う。陣、と言うよりは扉で、真ん中は水色の、いかにもテレポート出来そうな雰囲気を漂わせている。

「これに入れば暗黒界に行けるが……もう一度聞いておく。ここを通れば危険は付いてくる。最低、死も考えられる。それでも良いのだな?」

「良いって言ってんだろじじい!」

「口が悪いぞセイラ」

 ……まぁ、セイラの言っていることは間違ってはいない。死ぬかもしれないなんて、訓練で何度も味わったから、今さら怖いなんてない。今やるべきことは……ルメナを助けること。そして、侵略を阻止することだ。

「じゃあ、気をつけてな」

「おう!」

 俺たち三人はテレポートの魔法陣を通り、暗黒界へと歩を進めるのだった。

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