表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/14

第十話 予定調和の再会

「さって。俺はどう口にすればいいんだろうな。このメンバー」

「先輩! これが運命サダメってやつですよ!!」


 そう言ってにっこり笑う妖精のような容姿を持つ少女。背中の半ばまである緩く波打った空色の髪は艶やかで、その顔は日本人的ながら、ずいぶんとメリハリのある顔立ちだ。

 瞳は大きく髪と同じ空色。睫毛は邪魔になりそうな程重そうである。眉は細くも綺麗な山形を描き、その二重の目蓋はよりくっきりと目を印象付けている。

 小鼻ながらも形良く整い、その小さな唇は綺麗な桜色に染まり、張りも良さそうだ。

 百六十あるかないかの身長は一昔前ならそれなりに高い方だったろうが、現代じゃ平均と言ったところだろう。

 華奢ながらその胸部は程よい盛り上がりを見せ、なにより肌が黄色人種らしからぬ白さ。

 嫌々ながら認めてもいい。妖精と自称するだけはある容姿。俗っぽく言えば美少女だ。美女じゃない。なんせどうみても二十に届かない、精々が十八前後と思われる、どこか僅かな幼さを感じられるからかもしれない。



「シャノンさんが正式に逸早くログインするのは分かっていましたからね」


 そう言って微笑むこれまた別の女性。フェアリーは俺と同じ皮鎧だったが、こちらはローブに身を包んでいる。身長百五十五程、これまた白い肌はまるで雪花石膏アラバスターのようだ。

 腰元まである天使の輪が美しい艶やかな紫色のストレートロング。常に微笑を浮かべ、ハの字気味の眉に瞳。

 恐らくは成人しているだろうと思える落ち着きを持つのだが、見た目だけならまだ十代で通用するだろう。容姿に見合った性格なのだが、どうしてこんなゲームをプレイしているのか分からない。

 性格はロールプレイの可能性もあるが、それにしてもどうも雰囲気がゲームをする女性に思えなかった。

 何より特筆すべきはその胸部。ローブで分かり難いがメリハリの利いた肉体に、その明らかに九十程はあるだろう胸はお子様にはきっと目に毒だろう。



「それでもまさか、こうもあっさりとテスト時の知り合いに出会えるとは思ってなかったぞ」

「私はシャノン先輩の事だろうし、チャットに気を配っていればそのうち見つかるんじゃないかなって。思ってたけどね!」

「ええ。わたくしも同じです。それに、私は回復職特化を目指すので、シャノンさんのような方と逸早く友誼を結ぶのが、レベル上げの近道でしたし」


 なんだ。俺はもしかして分かりやすい人間なのだろうか。自分ではそれなりに物事を客観的に見て、冷静に対処出来ると思っていたのだが。

 二人の意見を聞いていると、どうも行動の読みやすい奴に見えてきてしまう。


「そんなに俺は分かりやすい奴か?」

「先輩は基本的に理性的。言わばより合理的に動く人なので、それを知っている人から見れば分かりやすいんじゃないんですか? でもでも、それってつまり先輩をよく理解しているってことですよね? と言うことは――――えへへ……」


 ナニを妄想し出したのか、フェアリーが腰をくねらせて手を頬に当てる。これが男ならキモイと言ってやるところだろうが、見目的には及第点以上の女性の為そうもいかない。


「でも。今日のシャノンさんは、ちょっと。前と雰囲気が違うでしょうか?」


 その言葉ににやりと笑みを浮かべる。中々鋭い。


「ああ、フェアリーもテレサも付き合いはこのゲーム。しかもオープンベータからだからな、知らなくて当然だろう。俺はゲームを変える、またはテストからテスト、正式などへ以降する度にゲーム内でロールプレイする性格を変えているんだ」


 俺の台詞に驚く二人。まぁ無理はない。いくらロールプレイとは言え、そう幾つもの、言わば顔を切り替え、しかも違和感なく行使するのは並大抵の努力では無理だ。

 その為の才能。技能とも言い換えてもいいくらいの暗示。これがあるからこその裏技と言えた。


「先輩先輩! じゃあ今回はどう言ったロールプレイなんですか?」


 なんだか瞳をキラキラと輝かせたフェアリーが顔をグッと突き出し聞いてくる。

 純粋にこうも興味深く聞かれては答えない訳にもいくまい。


「今回のコンセプトはクールでホット。そして戦隊バリのノリだッ!」


 気づけば勝手に腕が動き、ずびしッ! と奇妙なポージングを取ってしまっていた。これも暗示の効果だ。下手すれば戦闘開始時に何か可笑しな名乗りを上げかねないな、これは……

 それすらも今の俺は良しと思っているのだから、我ながら恐ろしい。


「なるほど。そのポーズが戦隊的なのでしょうか? でも、シャノンさんの容姿はお世辞にも熱血キャラのような暑苦しいものではありませんので、少し違和感があるような、でも似合っているような……不思議ですのね」


 何だか「ぉぉー!」と口にし身悶えるフェアリーとは違い。テレサが的を射た意見を口にする。

 そうなのだ。確かに行動や思考は暗示でどうにでもなるが、容姿まではそうもいかない。どう見ても自分の容姿は熱血馬鹿とは真逆の、理知的ながらやや皮肉の似合うようなものである。

 正直見る側からは何とも言えない違和感を感じるかもしれない。

 未だ保っている腕のポーズを解除し、ウィンドウに目をやるがどうやらこれ以上は参加者が集まる気配はなさそうだ。

 パパッと文章を打ち込みエンターキーを押す。PT上限の人数ではないが、どうせこうも知り合いばかりでは野良の人が気まずくなるだろう。


シャノン:重複クエPT〆。参加を希望してくれた人には感謝を。


 と言う文章がウィンドウに反映されたのを確認し、そのまま消さずに立ちあがる。たまに面白い情報が流れる為、慣れたプレイヤーなら常に表示しておくのが習慣だ。

 

「先輩、募集締めちゃうんですか?」

「時間が勿体無いのもあるが、これで新規の人が来ても気まずいだろうしな。つーことで、早速出発するか。目標はなんせ十レベルだ」

「シャノンさん、随分と大きく出ましたのね」



 まぁそうだろう。いくらゲーム内が現実より早く時間が流れると言っても、今からじゃ精々現実の五時間分くらいが限界だろう。

 ゲーム時間で換算すればざっと二十時間程だろうか。決して無理な範疇ではないが、それでも中々にハードモードだ。

 それでもいけると俺は確信している。二人ともVRゲームのセンスが高い。特にフェアリーは見た目名前負けしない容姿の癖に、やたらと戦闘センスが高いときた。

 更にこのゲームじゃ“才能”すら後天的に得られる。恐らくこの先もメキメキと実力を伸ばしてくれるだろう。

 テレサだって回復職としての有能さは折り紙付きだ。そこに前衛として俺も機能すれば、最低限でありながら重要な盾・火力・回復の職が揃う事になる。


「俺はこのメンバーなら十分いけると思ってる。時間さえあれば、もっと先も目指したいくらいだ。覚悟しろよ、ログアウトしたいって言っても、返してやらないからな」


 にやりと口角を持ち上げる。テレサは「あらあら」なんて口にしているが満更でもなさそうだし。


「先輩にそうも期待されて本気を出さなきゃ、女が廃るってものです!」


 フェアリーにいたっては何だか間違った発言までする様である。

 だが俺の先の言葉は事実。折角テスト時の仲間である内の二人に出会えたのだ、ここでトップを目指さないで何時目指すのか。

 グッと拳を握りこむ。目指すはレベル十。そこからが各人の個性で、それこそ戦闘スタイルが千変万化に変化していく分かれ道。


「よし、それじゃあ行くかっ!」

「おーっ!」

「はい!」


 威勢良く返事を返す二人に気分を更に良くし。俺は堂々と重複クエを受けに向かった………





 

後書き


次回からは結構小さな展開はキンクリしながら進んでいきます。

今までのように道筋全部描写していると、文字数いくらあっても足りなさそうですからね^^;

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ