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第八話 ステータスは計画的に!

 タンッと、軽やかな音が響く。俺の履いている靴が石畳と衝突した音だ。暗転した視界は即座に色を取り戻し、周囲は僅か数秒の転移で変化していた。

 ゲートから転移される際に働いた力に従うように数歩進みながら、この始まりの街を見渡す。公式の設定では人口千強。始まりと言いながらそれなりの規模と言える。

 街唯一の南門。そこから続くメインストリート。中央にある大きな広場。円を基準とした裏路地。街を抱え込む高い石の塀。文化水準はありがちな中世と近代の混成レベル。

 それが始まりの街の大まかな説明だろうか。



「思ったよりはプレイヤーも居るみたいだな……」


 メニューからこの街が一つ目のサーバーだと分かるが、収容数の五割は居るかもしれない。南門からは幅の広い、数メートル程ある大通りが続いているが、チラホラと“似たような”装備をしている者達が居る。

 中盤に入ると、その装備の多岐性もありNPCと一見では見分けが付かなくなるが、今は誰もが初心者装備シリーズなのだろう、共通点が多く、簡単にプレイヤーだと知れた。


〔クエストを達成しました。該当クエストを確認して下さい〕


 大通りを真っ直ぐ進むように歩いていると、アナウンスが響く。一度立ち止まり通路の端に移動し、民家だと思われる煉瓦造りの家に背を預けクエスト覧を開いた。


〔メインクエスト:動く肢体(リビングデット)三〕

内容:君は理不尽な記憶と、力無き己。逃げ出した自分に激しい怒りを感じながらも始まりの街へとやってきた。ここは多くの“探索者シーカー”や“放浪者ストレンジャー”志望が集まる、まさに始まりの地と言えよう。

 君はこの街でまず失った戦闘の勘を取り戻しつつ腕を磨き、多くの情報を得なければいけない。

 多くの初心者が集うために、簡単な“依頼クエスト”も多く存在している。直接街の人と交渉するのでも、依頼斡旋組織ギルド依頼クエストを見繕うのもいいだろう。

 多くの経験を積み、逸早く力を身に付けろ!



 文面の変化している内容を読み、読了を押せば既に数度目になる光のエフェクト。報酬のアイテムがインベントリに収納される。

 どうやら今回は次のメインクエストは発生しないらしく、合成音声は響かない。メインクエストの発生条件は複雑だ。レベルだったり、魔物の討伐数だったり、あるいはクエストをこなした回数の場合もある。

 一個人でも達成出来る内容が殆どだが、稀に更に面倒な条件が課されている場合もあると言う。俺の時にそんな複雑な条件が重なっていない事を祈っておく。

 さて、歩き出すか………そう思って足を前に向けた途端、『グキュルルル』と奇妙な音が耳に届いた。はて、なんだろうか?

 不思議に思い周りを見渡すも、見えるのは歩くNPCにPCばかり。音の発生源になりそうなものはない。

 『グキュールル』と再び鳴り響いた事で、ようやっとそれが俺の腹からなっているのだと気づく。


「――――そうだな。先ずは腹ごしらえするか」


 このゲーム。しっかりと空腹を感じるようになっている。生理現象は何故か起きない。これは局部の再現が年齢制限に引っかかる癖に、十八禁からグラフィックに適用してもデメリットしかプレイヤーに齎さないかららしい。

 他にも生理現象としての睡眠も必要ない。バットステータス。状態異常としての睡眠なら存在はする。

 そして空腹は放って置くとステータスの一時的弱体化すら招く、結構厄介な状態異常扱いだ。


「ん? こんな店、テスト時にあったか?」


 大通りの端を歩きつつ、手ごろな店を探していると。どこにでもある脇道、その少し先に古びた看板が置いてあるカフェらしき店を発見。

 まるで隠れるように目に付きにくい。わざとそうしたのだと言わんばかりの配置。

 テスト時には見た覚えのないその店に興味が沸き、気づけば自然と足はその入り口を潜っていた。




「好きな席に座りな」


 薄暗い店内の奥。カウンターの内側でグラスを磨いていた年の頃四十代過ぎのナイスミドルが、ぶっきらぼうに視線と言葉だけ投げかけてきた。

 それに従い黙って入り口から左端の背もたれのない、カウンター隣接の椅子に腰を下ろす。


「注文は?」

「初めて来るんだが。何があるか分からない。申し訳ないが何か適当に任せても構わないか?」



 俺の言葉に黙って頷き、奥。恐らくは厨房に消えていく渋い、将来なるならあんな顔立ちが良いと思わせるナイスミドル。

 看板は随分と薄汚れていたが、店内は清掃が行き届き、雰囲気こそ薄暗く陰のイメージが強いが悪くはない。

 そう広くない店内には二、三名のNPCらしき人達がテーブル付きの椅子に座っている。料理が来るまで時間はまだあるだろうと、ステータスを開き、そこからポイントを割り当てていく。

 アウターワールドで存在する。数値化されている基本的ステータスは全部で“STR”“VIT”“INT”“MID”“DEX”“AGI”の六つだ。他に隠しステータスで魅力値、運、熟練度などがある。一つ目の効果は憶測の面が強く、NPCやPCの受ける印象に関わってくるんじゃないかと言われている。

 運はそのままだ。様々な要素に絡んでくるが、代表的なのはドロップ率だろうか。熟練度も謎が多いが、スキルや装備にも設けられているのは確実だ。



 STR、ストレングスは攻撃力に。VIT、バイタリティはHPの総量や物理防御力。INT、インテリジェンスは魔法攻撃力。MID、マインドは魔法防御力やMPの総量に。DEX、デクステリティは貫通率。AGI、アジリティは貫通防御率、反射神経などにそれぞれ影響を及ぼす。 

 百年程昔は、DEXにはクリティカルや命中、AGIにはクリティカル防御や回避などの効果があったらしいが、肉体を用いるVRでは意味を持たない。

 クリティカル自体は意味は違うが、比較的弱点部位を攻撃すれば似た効果を得られる。貫通率はどこを攻撃しても発生し、一定の計算値で相手の防御力をその一撃のみカットしてダメージを与える。

 昔程DEXの重要性は薄れたが、火力UPには繋がるので、火力職なら意識しておいて損のないステータスだろう。



「課金でステータス再振りチケットは購入出来るし、案外適当でいいんだが。どうしたものか……」



 一レベルで貰えるステータスポイントは十。因みに初期値は全ての値が十となっている。ここからどう割り振っていくかでそのキャラのスタイルが決まっていく。

 無論。今回の俺は前衛でしかも盾職として活動するつもりだ。一回たりとも味方に攻撃を通さないと言うのは、男なら憧れてしかるべきだろう?

 仲間内で頼られたり。知らない人とのパーティでその腕を褒められた時などは、火力職で魔物を一層するよりもなお気持ちがいい。

 最前衛で魔物の一撃を受けながら、常にギリギリの攻防を繰り広げる盾職。特にVRMMOは視覚的、触覚的にも迫力があり緊張感が半端じゃないのだ。

 と言って、じゃあガチガチの防御型がいいのか? と言われれば首を捻る事になる。スキルの中にはヘイト――敵意とも呼び、魔物から狙われる要素を総称してそう呼ぶ――を増加させる物が前衛にはあるが、これは半分以上が攻撃力依存だったりする。



 範囲攻撃スキルにヘイト増加効果を持つものも中にはあるだろうし。ある程度の攻撃能力がないと敵の攻撃を全て引き付けるのが難しくなる。

 無論、攻撃力によらない強力なヘイト増加スキルもあるにはあるが。数は少なく、クールタイムは長い。

 攻撃能力も確保し、防御能力も特化に劣らない。これこそ理想だが、中々に難しいと言えた。VRMMOの中には両立が不可能な場合も多く、アウターでも結構微妙である。

 だが可能性が無いわけではない。何せ正式稼動と同時に解放されたシステムの中には、“スキル融合”がある。名前の通り、二つのスキルを組み合わせ、新たなスキルを生み出すシステムだ。

 今は灰色となり指定できないので、何か前提条件があるのかもしれない。これを利用すれば強力なヘイトスキルや、防御スキルが獲得出来る可能性もある。

 また、それ以前にソロも考えると攻撃能力がないとレベル上げがダルイと言う最大の理由も存在した。



「やはりある程度STRにも振るしかないか?」


 俺は目の前に置かれた湯気を立てる料理にも気づかず。ああでもないこうでもないと、一人百面相を披露しつつ悩み続けた………






後書き

現在設定としてスキルツリーを作るか悩んでいるところ。でも面倒……

チラッと出した通り、課金あります。むしろ他の作者様の作品見ていると、あまりみないので不思議に思ってしまうくらいです。

採算的にも無いと難しいと思いますしね。

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