ブッドレアを見つけました。
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まゆ:恋ってなんだろうね…?
みな:何々?とうとう春が訪れたの?!
むつ:えー、まゆってばいつのまに?
めい:で、恋がどうしたって?
もこ:どーせまた理想がどうのこうのって話じゃないの…
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月に2回開かれているチャット。高校卒業と同時にバラバラの道に進んだ私たちは定期的に連絡をとっている。そのおかげか卒業から3年経った今でも私たちは仲よし5人組のままだ。話題はその時によって当然のことながら変わるが、恋愛話が出ない事はまだ片手で数える程度しかない。
特にまゆは惚れっぽいその性格からか常に恋する少女だった。それと同時に恋に夢見る少女でもあり、よくこんなシチュエーションで出会って…、そのあとどうして…、といった話をしていた。
それによく付き合っていたのがみなとむつ。そして呆れながら聞いていたのが私ともこだった。
そのまま会話を続けていると、案の定まゆの片思いであることが判明。その後いつもの様にからかったり励ましたりしてその日のチャットは終わった。
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大学からの帰り道、坂をとぼとぼ下りながら小さく欠伸をする。
「…ねむっ」
昨日、全体のチャットのあと、みなと2人で別の所でチャットをしていたせいだろう。彼女とは今後の進路が似ているからか頻繁に連絡を取り合っている。
そういえば、とポケットの中に突っ込んでいた携帯に手を伸ばす。ポケットに入れたままの状態で軽く開いてみると、手に振動を感じた。授業中サイレントモードにしてそのままだったのだ。
携帯を取り出してそのままいじり始める。向こうからヒールを履いた人が急いで来るらしいのが視界の隅と聴覚から情報として入って来た。ぶつからないよう少しだけ注意しておく。
ドンっという衝撃に少し注意するだけではだめだったことを悟るがもう遅い。携帯から顔を上げるとそれなりに可愛い部類に入る女性が申し訳なさそうにこちらを向いた。
「ごめんなさい。ちょっと急いでたもので…」
「いえ、こちらも前をあまり見てませんでしたから」
お互い半分くらい社交辞令に近い言葉を交わす
「でもお洋服が…失礼ですがお時間ありますか?」
そう言われて初めて女性が手に持っていた飲み物が少し自分の服に付いていることに気付いた。どうやらコーヒーのようだがそんなにひどく付いているわけでもない。
「いえ、この位平気ですから」
「でもすぐに処置しないと…私の家すぐそこですし」
そう言って指さされたのは三軒先の一軒家。中からちょうど男の子が出てくるところだった。
「あ、おかあさーん!おかえりなさい!」
男の子が元気よく手を振る。隣にいる女性はそれに小さく手を振りかえしている。
「こら、勝手に出たらダメだろう」
玄関からもう1人、人が出てきた。父親にしては少し若すぎる気がするが…。とそこまで考えてふっと気が付く。
「あ、じゃあ、私は失礼しますね」
「バイトか何か?」
立ち去ろうとした私の袖をつかんで女性が尋ねてくる。
「いえ、後は帰るだけなんで。この位なら帰ってからでも平気ですから」
「じゃあ、うちに寄っても平気ね」
「え、あの、本当に大丈夫なん、です、け、ど…」
だめだ、可愛い顔してこの人、人の話全然聞く気ないな…
半ば引きずられるように家へ行くと男の子が笑顔で迎えてくれた
「おにいちゃん、おきゃくさんだよー」
そのままにこにこと後ろの男性にそう言う
お兄ちゃん、ってことは…ん?どゆこと?
「姉さんまた何かやったの…すみません、この人おっちょこちょいで」
「あ、いえ」
なるほど、姉弟か…
「こら、かい、余計なこと言わないの。私が彼女の服シミ抜きしてくる間、粗相のないように、ね」
それからあっという間に私が着ていた上着は女性にとられ、弟さんにお茶を出されている自分がいた
「おかまいなく」
言いながらも飲まないと失礼かな?と思って口をつける
「えぇっと、もしかしなくても学生さん?」
荷物の方をちらっと見ながら男の人が言う
「あ、はい。そこの大学です」
言いながら多分坂の上であろう方角を指す
「やっぱり…ということは同じ大学なんですね。僕は、総政の4回で遠峰快っていいます」
よろしく、と遠峰先輩はにっこり笑った
「あ、私は暁月梅怡っていいます。社学の3回です」
よろしくお願いします、と頭を軽く下げる
「社学ですか、いくつか授業とってましたよ。部活の仲間も社学多いですし…これも何かの縁、困ったことがあったら相談にのりますよ」
「ありがとうごさいます」
遠峰先輩は口調がとても丁寧で話し上手で、一緒にいてすごく楽しいと思う
そのまま話し込んでいると廊下から賑やかな声が聞こえてきた
「あらあら、すっかり仲良くなっちゃって。せっかくだからお夕飯もどう?」
お姉さん…嬉怜さんと仰るそうだ、が私の上着を抱えて戻ってきたのだ。男の子、紘君も一緒だ
「え、あ、もうこんな時間。上着ありがとうございました、私帰りますね」
時計を見ればなんだかんだで40分近く経っていた
「えーおねえちゃんかえっちゃうの?」
紘君が寂しそうな顔をする。でもこの子殆どお母さんにべったりで私何も懐かれるようなことしてないはずなんだけどな…
「一人暮らしなんですよね、帰り送っていきますから。食べていったらどうですか?」
「いえ、さすがにそういうわけには…」
「快が女の子誘うなんて、さては惚れたわね?食事は大勢の方が楽しいものよ。腕には自信があるから食べてって」
ね?っとにっこり笑うお姉さん
紘君はもうその気で私の周りをくるくる回ってるし遠峰先輩も笑顔だし…って、え、さっきお姉さん何かさらりと言われたような…というか遠峰先輩少し顔あ、か…い?
暁月梅怡、本日の帰宅時間はもう少し後になりそうです…
読んでくださりありがとうございます。前作とは全く異なった形になったのではないかと思います。
道でぶつかって~というの自体はそれなりに多いと思うのですが、大体本人同士なので敢えてのお姉さん登場にしてみました。これでもこのパターン良く見るよね、と思われた方がいらっしゃったら申し訳ないです。こちらの勉強不足でした。
登場人物の名前に関しては5人組が「まみむめも」でつながるようにした以外は特になんの意図もございません。少し漢字にはこだわりましたが名字とか完全に思いつきです(笑)
もし今後のこの2人の展開、または他の4人について気になるという方がいらっしゃいましたらなんらかの形で伝えてくれると嬉しいです。
では、本当にありがとうございました。