少し昔ばなしをしようかな [少年、空を飛ぶ]
やあみんなー。げんきー?
りせた。だよー。
なんかこう、空がさ……。青い、よね。
雲がさ、白くて……高くてさぁ。
きっとさ、あの空を飛びたいなぁ……って、思った感じのひとがさ、飛行機とか作ったんだよね。
そんな空を見上げてると、思う。
夏って感じだ。忌々しい……と。
まぁ、別に焼夷弾は降ってこないから、全然マシだとは思うけどさ。降って来るのは、蝉の声。
熱くはないが、暑いんだ。
そして、時々降り注ぐ雷雨も、忌々しい。どっと一気に降ってくんなや。それは、危ないんだ。ドーン! と、うるさいしな。
あなたは、空の想い出って、ある?
筆者は……色々あるんだけどさ。
その中のひとつ、なんだけど。
あれは、何歳ぐらいの頃だったかな?
結構小さい頃だと思う。正確な年齢は覚えていない。おそらく、小学校低学年くらいだろう。
テレビを、観たんだ。
その中で、傘で空を飛んでいるシーンがあった。
登場人物が、傘を拡げて——ふよふよと、地面に降りてきたのだ。
(おお……! そら、とべるんだ……! かさって、すっげー!)
と、筆者は感動すら覚えた。
そして、気付いた。気付いてしまったのだ。
傘、持ってる……ぞ? と。
つい先日、新しいものを買ってもらったばかりだった。
だから、るんるん笑顔で、傘立てに向かって歩いていった。
筆者の家の近くには、国道が通っている。
そして、鉄道と交差しているため、一部が小高くなっているのだ。
トンネル状に造られた部分は、かなり高低差がある。
防草ブロックで固められた範囲も広いが、土と草だけで、堤防のようになっている部分もある。
そのブロックの一番低い辺りは、大人の背丈より少し高いぐらいだろうか。
(ふふふ……。きょうから、そらをとべる……!)
その上に立ち、少年は、胸を躍らせていた。
(よーし! いくぞー!)
ふんすふんすと、やる気と希望に満ちた笑顔だった。
「とおっ!」
真新しい、黄色い傘を意気揚々と拡げて——両足で、ジャンプした。青い空に、向かって。
——バボンッ!
「……え?」
傘は、裏返った。勢いよく。
……空は、青かった。




