少し昔ばなしをしようかな [流行ってた遊び:高校時代]
やあみんなー。げんきー?
りせた。だよー。
みんな精一杯人生を楽しんでいますかー?
筆者は、全然楽しくないよぉー。
楽しく遊んで暮らしたいんだけどさ。
つっても。遊びにも、楽しいものとそうでないもの……合う合わないがあるよね。
合ってないものは、楽しくない。
きっと、筆者の人生は、自分に合っていないのだな。
チートもらって転生したいね!
と、いうわけで。
今回は、以前予告した、少し大きくなった時の遊びの話をしたいと思いまっす。
筆者は、以前記した通り、盛大に至っておりました。若気に。
それはもう、窃盗に、暴力に……と、迷惑行為は枚挙に暇がなく。
まさに、生きる価値ナシのド畜生として、片田舎で、のうのうと暮らしておりました。騒音と害悪を、盛大に撒き散らしながら。
そんな、害虫だった。
だが。
そのような存在にも、仲間がいた。
いや、害虫は一匹見かけたら、たくさんいるもの……か。
殲滅も出来ないから、綿々と——脈々と、拡がってしまうのよな。
そして、独自の文化が形成されていくのだ。
当然……と、いうべきなのか。
その中で、流行っている遊びもあったんだよね。
どんなものかというと。
車を使ったものが多かった、かな。
例えば——一例。
「おーし。今日は防空壕行くぞ!」
それは、地元ではそこそこ有名な場所だった。
旧日本軍の軍事基地跡地付近の、穴。
戦時中に、降り注ぐ焼夷弾で、空も、山も、真っ赤に染まった——と、聞いたことがある。
そんな、いわゆる心霊スポットである。
リーダーの言葉で、年長組が持つ、何台かの車に分かれて乗り込み、現地に向かう。
ぎゅうぎゅう詰めだ。人数に対して、台数が少ない。だが、仕方ない。殆どが高校生だったのだから。
「おー。雰囲気あるなー」
現地に降り立つと——深い闇。当然だ。そこは山中。鬱蒼と……木々に、囲まれて——月光も、届きにくい。
ざわざわと、時折騒ぎながら、黒い木々が、見下ろしてくる。
「……ちょ、やばいって」
ひとり、呟いた。
「あ? なにがよ?」
挑発するように、返す輩。
「あそこ……いるって……。あ、あそこにも……!」
指をさしながら、後退り出すソイツを、何人かで押し返した。
「どこに何が居るってぇ?」
指先に目線を送る。樹だ。
「ボヤッと! 白いヤツ……!」
——樹だ。それしか見えない。
「ほら、行くぞ」
ソイツを無視した、仲間たちの背中。遠ざかる。黒に、溶けるように。
歩いた。木々の隙間、辛うじて舗装されたアスファルト。ひび割れ。遠くに、薄っすらとした電灯の光。息遣い。足音。
「お? これなんだ?」
暗闇の中に、草に塗れ囲まれた、黒い——穴。
——誰かが、照らした。
「うわぁぁ……! やべぇって! ダメだって!」
目的の、防空壕らしい。焦って叫ぶ奴は、指さし、固まる。
「あー? 何がだよ」
解っていない奴は、薄く嗤う。
「入ってみようぜ!」
そして、平気そうな奴。
そいつは、その穴の中へ、入っていった。
——ガシャン!
金属音が、響いた。
「痛った」
「どした?」
黒い穴を、照らす。
浮かび上がったのは、鉄格子だった。
ちゃらっと鳴る、錆びた鎖で閉ざされたソレの中央に、元は白だったのだろう札があった。
『立入禁止』だけ、赤の文字。滲んで、垂れている。血のよう……だった。
「なんか入れんみたいだわ」
ガッシャガッシャと、鉄格子を猿のように揺らしながら、ソイツは振り返った。
「や、やめろって……!」
ビビッていた奴は、集団の最後尾へ隠れた。
「ま、いっか。入れんならあっち行こうぜー」
リーダーが、ぼんやりと明るい方を指差した。
一斉に歩き出す。
ビビっていた奴は、肩を抱きながら、時折ズサッと方向を変える。
「いる……いる……」
漏れる、呟き。
木々の隙間。漏れ動く光。黒。風の音。話し声。足音。笑い声。
池が、あった。畔には、うねる、大きな樹。
反対側には、土産物屋らしき建物。築年数は、古そうだ。当然、暗い。墨汁で描いた絵のようだった。
建物から、暗く緑の光が、漏れていた。非常灯……か。それが、唯一の電灯だ。
「よし。捕まえろー!」
突如、号令が掛かる。皆一斉に走った。……一番ビビッていた奴のところへ。
「な?! や、やめろ……やめろって!」
ソイツは、あっと言う間に捕まった。
「よっしゃ! 繋げー!」
——カシャン……
そして、池の畔の柵に、手錠で繋がれた。
「よーし! 行くぞ!」
そして、全員、来た時の車に乗り込んだ。
——ひとりを、除いて。
少し、広くなった車内。遠く、繋がれた奴の顔が、ヘッドライトに——白く、一瞬浮かんだ……気がした。
——樹だ。それしか見えない。
やがて。流れていく街灯が、後ろに伸びた。
とある春の日。
少し、暑い夜だった。
「腹減ったなー」
リーダーの言葉で、着いた先は、モ〇バーガーだった。
深夜0時を回っていた。深夜営業もしている、郊外独立店舗。暗闇に、煌々と浮かんでいた。その存在を、誇示するかのように。
だが。筆者は、トマトが食えない。咀嚼して嚥下しようとすると、嘔吐するのだ。マズイとか、そういう問題ではない。アレはヤバイ赤なのだ。
だから、オニポテを頼んだ。
ケチャップは、好きだ。多めにもらう。店員は、ふたつ返事だった。タップリと、掛ける。きつね色が、真っ赤に染まるまで——タップリと。
美味しい赤だ。美味しい、赤だ。
ざわつく店内。仲間たちは、盛り上がっていた。貸し切り状態だ。そうなっても仕方ない。
店員の、少し苦い顔。
トイレに立つ。
手を洗っていた時、ふと鏡を覗いた。
すっと、後ろを通り抜けた——影。
——中学の同期であり、メンバーだった。
「あ」
思わず、声が漏れた。
「ん?」
「いや、ちょっと思い出した」
「何を?」
「いや、アイツ置き去りじゃね?」
「あ」
……そんな遊びが、流行っていた。




