とある悪魔 と とある悪魔
「はあ!」男が全力で横に飛び跳ねる。
次の瞬間、先ほどまで男がいた場所に猛烈な勢いで火炎が直撃する。
「まったく、おっかねえもんだ。これじゃあご主人様のところに戻れないじゃねえか。」
「しかし、序列第34位の俺にわざわざ序列7位がお出ましとは仰天だぜ。」
男は上を見上げる「ささっと現れろ『アモン』。あんたらしくないぜ。」
男が見上げる先、男がいる廃工場の煙突のてっぺんから、巨大なフクロウが舞い降りてくる。フクロウは地に足をつけたとたん金髪碧眼の男の姿に変わった。
「ほー、またえらく格好いいすがたになったもんだね。」笑いを含んだ男の言葉にアモンは少し眉をひそめた「話をそらすな。私が来たわけ、貴様は十分承知しているはずだ。」
男は微妙に唇をゆがめる「ああ、わかってるさ。元72将である俺をとらえに来たんだろう?」男の言葉にアモンは頷く「貴様が、我々の中でも上位な存在なのはわかっている。その実力も十分承知している。だが貴様では私には勝てんぞ。」アモンの言葉に男は微笑を浮かべる「その、おごりが・・・敗北につながるんだよ!!」
突如、男の両手から稲妻が飛び出した!
稲妻は、真っすぐにアモンに向かっていく「俺の能力が全く進歩してないとでも思ってたのか!」男の叫び声がこだます「このフルフル様が!そんな簡単につかまったりはしねえんだよ!」ゴガン!!という猛烈な音があたりに響き渡る。
「ここまで音が広がれば、いやでも近くの人間が目を覚ます。そうすれば、あいつも・・・」だが、フルフルの策略は無残にも崩れ去る。
「人が、こない?・・・騒ぎも起きない・・・」フルフルの頭の中を疑問が駆け巡る
「まったく・・・」自分の真上から聞こえた声にフルフルはぎょっとして上を見上げた。
アモンはそこにいた。
「化け物と化け物の戦いを人に感づかれるわけにはいかんだろ。当然結界を張ってある。中の騒ぎを外の人間たちが知ることはない。浅はかな計略だったな。」フルフルは何も答えられない。
「全くこんなことは、初歩の初歩、常識の常識だというのに。この5000年間で頭が鈍ったか『軍団長』フルフル。」
「なぜだ、なぜ貴様が我々を捕らえようとする。貴様も我々と同じはずだ。本来なら貴様も狩られるはずだ。なのになぜ、リーダーたちに協力する?たとえ協力しても少し生きながらえるだけだ、けっきょく無に帰されるんだぞ!」フルフルの絶叫にアモンは苦笑を浮かべた「どこまで低知能なのだ貴様は。考えてみろ序列7位の私が5000年前に取引してから今に至るまで、貴様たちを狩り続けているわけを。」
「まさか・・・・俺たちをわざとゆっくり捕らえていると言いたいのか!」それに気付いたフルフルの顔が怒りで染まる。
「貴様の命を伸ばすために俺は存在しているんじゃない!」フルフルの両手に巨大な斧が現れる。
「俺は貴様の道具になどされん!」フルフルが両手に持つ斧がまぶしく輝き始める
「くらえ!雷鳴の裁きを!」叫びと同時に雷光でまぶしき輝く巨大な斧が上空に放たれる。
「ふん。言ったはずだ。序列24位の貴様では、7位の私には勝てないと。」
斧が到達する直前、アモンは背中から鞘から大剣を抜いた。
「煉獄の業火よ!わが力となれ!」アモンの叫びと共に刀の刀身が渦巻く火炎に包まれる。
「貴様が私にあくまでも従わないというならば・・・この場で私自身の手で消し去ってやろう!」アモンが水平に構えた剣を真上に上げる。
「今から技を出さんじゃ遅すぎるぜ。手遅れさ!」フルフルが笑う「はたしてそうか?」
アモンの言葉にフルフルは一瞬訝しげな表情をした。だが次の瞬間その顔は今日が具の表情に変わった。
「馬鹿な・・・俺の雷鳴の裁きを防いだだと!」フルフルの放った斧は確かにアモンに
向かっていった。だが刺さっていなかったのだ。
「正直ここまで進歩しているとは思っていなかった。素直に感心した。」アモンはフルフルをまっすぐ見つめた「だが、まだ私には勝てん!」自分の前で強引に停止させた斧をアモンは強引に押し戻す。跳ね飛ばされた斧は力を失いただの斧となって地に突き刺さる。
「
おや・・・」アモンは地に突き刺さった2本の斧を見てにやりと笑った。
「まるで、十字架のようだ。まさにここは今この瞬間貴様の死に場所として最適な場所となったわけだ。」「くそが、くそが、くそが!!」フルフルが次々と放つ稲妻をアモンは軽々とはじき返しながら降下していく。
「なぜだ、なぜなんだ、あれから俺も変わったのに、変わったはずだったのに、なんでなんも変わってないんだ!」フルフルの叫びがこだます「それは間違いだ。貴様は変わった。確かに成長した。」アモンはフルフルの前に立つ「貴様はさっき私に言った『俺が全く進歩していないと思ったのか』と。」アモンの持つ刀を包む火炎、地獄の業火が勢いを増し燃え盛る「その言葉、そっくり返そう。」アモンが剣を振りおろしフルフルは業火にのまれた。
数分後、アモンは同じ場所に佇んでいた。
「これで、やっと72人中の半分になるのか。まあ、わざと遅くしてるんだから仕方ないか。」アモンはふと空を見上げる、誰かに見られていたような気がするのだ、いや気のせいではないのだろう、おそらく天界で『あの人』がこちらを見つめているに違いない。
「さあて、じゃあ、今世紀中に狩ると決めた残りの奴らを片付けるとするか。」
立ち去ろうとしてアモンはふと、今までフルフルがいた場所を見据えた「悪いな、本来はこの場所で貴様を消すつもりではなかった。タイミング悪かったよな、貴様がマスターといっしょにいれば、私が自らの手で消すことはなかったのに。」
アモンは、手を振った「さらばだ、元同志。」
そして2度と振り返らなかった。