秋の日は釣瓶落とし【詩】
秋の日は釣瓶落としというけれども
そのつるべとやらにわたしはさわったことがなくて
だけど、秋の日の落ちる速度は知っているから
その体感を頼りにつるべなるものを逆算する
いっそ自由落下なら一瞬だろうに
からからと滑車をならし
ロープは案外ゆっくりと伸びて
井戸の奥底に吸い込まれていくだろう
しかし、
桶の着水。
そのあとのはるかな深みからあがってくる重みのほうが
なんだかこの手にリアルがあって
それはむしろ季節をさかのぼって
酷暑の長さになぞらえることのできる気がして
じりじりと首にやけつく日の照りが
ほんのひと月前のできごととしてよみがえってくる
夏は長く秋は一瞬
釣瓶落としでいうところの速さは
季節の過ぎていく速度を指しているのではないだろうけど
そういう実感として想起されちゃう日本の夏
(秋はどこへいった)
2025年10月25日制作。
日が短くなって、寒くなりましたね。




