第3話 古い屋根裏の秘密の部屋
古い屋根裏の秘密の部屋
音楽が鳴っている。
楽しい音。
美しい音。
光っている音。
そんな音楽が聞こえる。
君の中から。
はっきりと。
「あの、ここに扉がありますよ」
と私は君に言いました。
「あ、本当だ。じゃあここが探していた秘密の扉なんだね」
君は頭だけを穴の中に入れて、床の上から穴の中を覗き込むようにしてそう言いました。
それから私たちはその小さな扉の鍵穴に鍵を差し込んでみました。
すると鍵は回って、がちゃという鍵の開く音が聞こえました。(私たちはお互いの顔を見て、にっこりと笑いました)
それから私たちは、その小さな扉を開けて、その向こうに続いている小さな通路を四つん這いになって、進みました。(まるで猫たちの秘密の道のような、そうしないと前に進めないほど、小さな通路でした)
君と離れ離れになってから、私は泣いてばかりいます。
ずっと忘れていた泣き虫で弱虫な私が、ここにいます。
お願いします。私に会いにきてください。私はもう。一人じゃ生きていけないんです。私には君が必要なんです。
君がいないときっと私は動けなくなってしまうと思います。
生きる力を失って。
……、なにもかもを、失って。消えちゃうと思います。
星がどこにも見えないんです。
君の顔が見えなくなってから、ずっと。……、ずっと、です。
小さな通路の先には秘密の部屋がありました。
小さな通路の出口は、その部屋の床の一部分で、押し上げた床をもとに戻すと、そこにははじめから小さな通路なんてどこにもなかったかのように、ただの床になってしまいました。(まるで魔法みたいでした)
その秘密の部屋のからっぽの壁には大きな誰かの手書きの文字が書かれていました。
その大きな文字を私たちは少しの間、じっと二人で並んで見つめていました。
「ねえ、今も歌は好き?」
「はい。大好きです」
そんな初めて聞く誰かと誰かのお話をする声が聞こえてきたのは、ちょうどそんなときでした。




