第2話
世界に音が鳴り始めています。
音が私の中に溢れてきます。
リズムがあります。
生きる力が湧いてくるんです。
本当に驚きます。
びっくりです。
私は音楽が大好きなんだって。
私は踊ることが大好きなんだってわかるんです。
不思議と思い出すことができるんです。
世界にはリズムがあります。
私の中にもリズムがあります。
君の中にも、リズムがあります。
いろんな音楽が鳴っているんです。
その音楽が、とても調和しているような気持ちになります。
すごく楽しいんです。
思わず、踊り出したくなっちゃうくらいに、楽しいんです。
君とこうして手をつないでいると、私はとっても幸せな気持ちになります。
歩く足も自然と大きく、まるでスキップするみたいになってしまうのです。
世界は音楽で満たされています。
私は君の音楽を聞いていたい。
ずっと、ずっと。
私の音楽を君に聞いていて欲しいんです。
「ロゼ」
君が私のお名前を呼んでくれます。
それだけで、私はとっても、とっても嬉しくなっちゃうんです。
「はい。なんですか?」
とにっこりと笑って言ったところで、私は、すとんと穴の中に落ちてしまいました。
「あ、えっと、穴があるから危ないって言おうと思ったんだけど、……、大丈夫?」
と心配そうな顔をして君は言いました。
「……、はい。大丈夫です」
本当はとってもおしりが痛かったのですけど、私は笑顔で君にそう言いました。
それにしても、どうしてこんなところに穴が空いているのでしょう?
深くはないですけど、とっても危ないです。
よく見ると、穴の先には、小さな扉のようなものがありました。隠し扉でしょうか? この穴はもしかしたら、本当は穴ではなくて、この扉を隠していた上の床の板が古くなって、壊れてなくなってしまったのかもしれません。
私は(痛い)おしり触りながら、そんなことを薄暗い穴の中で考えていました。




