ダンスウイズビニール
私は田舎に住んでいる。
どこをどうみても、高い建物が無い。
農繁期には、ビニールハウスが立ち並ぶ所だ。
自転車で通勤をしている。
風が強く吹いた日の事が、忘れられない。
いつもの道をひた走る自転車。
ビューという風。
横風に体をあおられ、転倒しないようにペダルをこぐ。
足元に意識が行った瞬間、通りかかったビニールハウスのビニールを止めているヒモが切れた。
道の方に出てくるビニール。
長い触手を伸ばしているかのようだ。
私は、からめとられた。
体に巻き付くビニール。風にあおられ、触手が踊る。
自転車からは転げ落ち、ビニールにからめとられ、一瞬視界が一面に青灰色となった。
ビシビシと触手が私を打つ。
ビニールだから、やわらかいと思ったら、大間違いだ。
厚さがあるビニールは、痛い。重い。
激しく触手が私をからめながら踊るので、ムチで打たれてる感じだ。
手で顔をかばい、呼吸を確保する。
激しいダンスで私の足がステップを踏む。
風が弱まったのか、触手がダラリとなった。
今だ、と脱出する。
スリキズだらけになり、しょんぼり帰宅。
家族に、ビニールと踊って来たと言ったら、馬鹿にされた。
生命の 危機を感じたのに。
触手みたいだったと訴えても、はぁ?と言われる始末。
激しいダンスの代償は、高くつきました。