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別れの後

 めぐが旅立ってから一週間が経った。

 めぐと付き合って一年目の記念日。隣にめぐはいない。変わらないままだったなら、二人でこの記念日をお祝いしてたんだろうな。

 頑張ってめぐに会いに。

 そう思っていた。

 だけど想像以上にめぐがいなくなったことは大きかったんだ。

 何もする気が起きない。

 みんなの前でうまく笑えない。

 じっかんが湧かないんだ。

 ひょっこりめぐが現れるんじゃないかって…。あり得ないことに期待してめぐの影を追いかけていた。

「めぐ…」

 口にするのはめぐの名前ばかり。

 頭に思い浮かべるのはいつもめぐの笑顔、声、暖かさ。

 気がつけば涙を流していたり…。

 めぐは何してるんだろう。

 携帯は通じなかった。

 カパッ。

 チョーカーのコンパクトを開けてプリクラを見る時間が増える。それを見てはデートのことを思い出して笑ったり…。

 いつも一緒に居た。

 それが普通だった。

 たくさん話して、笑い合って…幸せだった。

 隣に居るのが当たり前と思ってた。これからは居ないのが当たり前。それが普通。

「誠二…」

 帰り道は美香とたまに一緒に帰るようになった。一人になりたかったけど、美香が強引についてくる。

「もう一週間経ったよ?そろそろ元気だそうよ。会いに行くんでしょ?」

「…………」

 やっぱりダメなんだよ、めぐがいないと。

「みんな心配してるよ?勇介だって、渉くんも紗耶香ちゃんも…私も」

「悪い…」

 それくらいしか言えなかった。

 みんなが心配して気を使ってくれてるのなんてすぐにわかった。でもなんか、それがみじめで…。かと言って強がっているわけでもなくて…。みんなが心配せてくれるのは至極当然だった。

「もうすぐ私たちも三年生だよ。そして一年後にはもう卒業だよ。そしたらめぐに会いに行けるんじゃない?」

 一年後…。長いよな。めぐと付き合ってた期間より長い時間だよ。

 一年も…。

 美香と別れて自宅へ。

「ただいま…」

「あら、おかえりなさい」

 母さんも何かと気を使っている。からかわなくなったし、優しくなった。

「めぐちゃん、うまくやってるかしらね?」

「めぐなら大丈夫さ」

「あんたも同じこと思われてるんじゃない?」

「え?」

「めぐちゃんに、あんたなら大丈夫って思われてるんじゃない?」

 めぐに…?

「あんたがいつまでもそんなんだったらめぐちゃんも安心出来ないわよ?」

 そっか…。

「ありがとう、母さん」

 少し気が楽になった。

 母さんはやれやれといった感じで家事に戻った。

 まだmだめぐが居ないことには慣れないだろうけど、少しずつでいい。

 めぐとの約束を守るために頑張っていこう。

 みんなもいる。友達がいる。

 少しくらいみんなに頼ってもいいよな。めぐは一人で頑張ってるんだ。オレだってしっかりしないと。

 頑張って、前を向いて歩いて行こう。

 ………

 その日は少しだけゆっくり眠りにつけた気がした。

 ―――――

「紗耶香、おはよ」

 教室で紗耶香に挨拶をする。

「おはよ。なんかすっきりした顔ね」

「まぁ、な」

「あんたがしっかりしないとめぐも安心しないんだから」

 誰かさんと同じこと言うなぁ。

「ははっ、そうだな!」

 めぐ、少しは笑えるようになったかな?

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