クリスマスプレゼント
今年もクリスマスがやってきた。
吹奏楽部でのクリスマスパーティーはなかった。
去年はホワイトクリスマスだったけど、今年は雲一つない晴れ空。夜は星がキレイに見られそうだった。
めぐとのクリスマスデート。何日も前から約束していた。そしてめぐの家にお泊まり。
今日の約束は夕方から。デートって言っても少し有名なレストランで大人ぶってクリスマスディナーだ。そこまで豪華な食事じゃないけれど、高校生のオレたちには十分だった。
泊まりだからめぐの住む緑ヶ丘町で待ち合わせ。今はめぐを待ち合わせ場所で待っているところだ。晴れてるけどなんせ真冬なもんだから寒い。早く来ないかなぁ。
もちろんプレゼントも用意している。少しだけ奮発して買ったものだ。クリスマスくらい…ね。
「誠二くん、お待たせ。ゴメンね。寒かったでしょ?」
めぐが息を切らせてやってきた。それでも待ち合わせ時間よりは早い。
「早く来ないかなぁって思ってたら来た。まだ早いけど早く会えて嬉しいよ」
「いつも誠二くん待たせてばっかりだから」
「ははは…まだ予約の時間まで少しあるけどどうしようか?」
「そうだねー。荷物、家に置きに行く?」
「あ、そうするかな。実はこの荷物でレストランに入るの少し恥ずかしいなって思ってた」
「ふふふ…行こ?」
めぐの家とも往復でちょうどいい時間かな?
それから荷物を置いてレストランに向かった。
日が暮れるのは早いもので、レストランに着く頃には辺りは暗くなっていた。
メニューはクリスマスのカップル限定ディナーコース。なるだけ食べれるものが多いやつを選んだつもりだ。それでも半分くらいだけどね。
「あーあ、もったいない」
う~…めぐ~…。
「私だってそんなに食べきれないよぉ」
そんなこと言っても手伝ってくれるのがめぐだった。だって、まともに食べれたのはメインディッシュのフィレステーキくらい。
その他は食べれるやつだけ。
ごめんよ~めぐ。
「誠二くんは自分の子供に好き嫌いしちゃダメって言えないね」
「そこはパパは食べなくてもいいんだよって教えれば…」
「そんなのダメだよぉ。私がちゃんとさせるもん」
私がって…。それってオレたちの子供のこと?
「それってー…オレたちの子供?」
「えっ…あっ!………あの……その…」
自然に話していたみたいで、話してた内容に気がついてモジモジしていた。
「ずっと…一緒に居るなら自然にそうなるよ。めぐといずれ別れるとかそういうつもりなんてもちろんないし、死ぬまでだって一緒に居たいよ」
「そ、それ…」
オレはそう思ってる。
「将来的には…け…結婚…も…?」
そうだな…。
「…うん。そう思ってる。ちゃんと仕事して自分にもっと自信がついたらちゃんとプロポーズしたいな」
「……嬉しい…」
めぐは涙を浮かべて微笑んでいた。
人生の目標…かな。
めぐと一つになって幸せに。
「そろそろ出ようか」
レストランを出て、めぐの家に向かう途中で外灯が途切れるとキレイな星空が見えた。
「すごいな。星空に吸い込まれそう」
「なーんか、ロマンチックだね」
満天の星空の下を手を繋いで帰った。自分の分も作っていたのかお揃いの手袋だった。
「ずっと手袋使ってくれてるんだね」
「ボロボロびなるまでは使うよ。ボロボロになったらまた作って欲しいな」
「じゃあ毎年作ろうかな」
そう言って笑う顔が無邪気でかわいかった。
「それもいいかもな。オレたちが一緒に居る分だけ手袋の数も増えるんだ」
「あはは!そのうちしまえなくなっちゃうよ?」
「それだけ一緒に居た証だよ」
そんなことを話しているうちにめぐの家に着いた。
「誠二くん、ちょっと待って?」
ん?
「誠二くん、おかえりなさい」
「あっ…」
めぐは先に入って玄関のドアを開けて出迎えてくれた。
「へへ…ただいま」
一緒に暮らせば毎日こうやってめぐが迎えてくれるのかな。
家に入ると、めぐは部屋を暖かくして風呂の準備をしに行った。
さてと…プレゼントの用意を。
荷物の中に忍ばせておいた。渡すのは…風呂に入ったあとがいいかな?
「お風呂もうすぐ準備出来るよ!」
「ああ、ありがとう」
用意したプレゼントをまた荷物に戻して風呂を済ませた。そしてお決まりのコーヒー牛乳。続いてめぐが済ませた。今回は部屋でじっくりと…ね!
「ふぅー、あったまるー」
やっぱりめぐの風呂上がりはいいなぁ。
「部屋暖めてくるね」
今度は自分の部屋を暖めに行った。
今のうちに…。
「もう少し待っててね」
めぐが戻ってきた。今こそ渡そう。
「めぐ、これ…クリスマスプレゼント」
そうやって小さい箱を渡す。
「あっ、ありがとう!」
去年はデートがプレゼントだったからな。
「開けていい?」
「うん」
めぐは丁寧に箱を開く。
「なんだろう…。…あっ…」
箱の中身を少し眺めていた。そしてそれをゆっくりと身に付けた。
「えへへ…似合う?」
めぐの左手の薬指にはシンプルなシルバーリングがはめられている。
「うん。とっても。気に入った?」
「誠二くんからもらった物だもん。もちろんだよ」
よかった。
でも、もう一つ驚かせたい事が…。
「実は…オレのもあるんだ」
オレは今まで見えないように隠していた左手をスッと差しだした。
「ペアリング…。そんなにいいやつじゃないんだけどさ」
めぐはすごく驚いた顔をして、すぐに笑顔でオレに抱きついてきた。
「…嬉しい」
「学校じゃさすがに外さないとダメだけど、二人で居る時くらいはね」
「うん!誠二くん大好き!」
「リングの裏見てみて」
オレがそう言うとめぐはリングを外して覗きこんだ。
「め……ぐ…み…?」
「こっちには誠二って彫ってあるんだ。オレたちだけのペアリングだよ」
「すごい…素敵…」
うっとりとした目でリングを眺めていた。
「例え私たちがどんなに離れたって…これがあれば大丈夫だよね?」
「え?あ、あぁ大丈夫だよ」
また…少し悲しそうな目だ。
「だよね。…誠二くん、少し待っててね」
そう言って二階へ上がって行った。
プレゼント、喜んでもらえてよかった。実は渡したくてウズウズしてたんだよな。
「誠二くん、これは私からだよ」
二階から戻って来ためぐから小さい箱をもらった。
なんだろうな。
「開けるよ?」
「うん」
ガサガサ…。
これは…。
チョーカーだ。クロスが掛けられていてその上に小さなコンパクトがついている。それを開けると二人のプリクラが貼ってあった。
「ありがとう。大事にするよ。これならいつでもめぐと一緒だな」
「うん。寂しくなったらそれ見て思い出してね」
めぐはハニカんだ笑顔を見せた。
寂しいだなんて、めぐがそばに居れば寂しくなんてないさ。
めぐを抱きしめてそのままめぐの部屋へ。
部屋は十分に暖まっていた。
「誠二くん、しよ?」
えっ!そんないきなり…!
めぐは目を潤ませてオレを見ていた。
そして激しくキスを求めてきた。
「…ん……はっ……ちょっ…めぐっ!」
驚いたこともあってめぐを引き離した。
「めぐ、どうしたの?」
「イヤ…なの?」
イヤなんてもちろんそんなことはないけれど。
「私のこと…何度でも、いっぱい愛して…」
そう言ってオレを見つめるめぐに何も言えなかった。
そして、何度も愛し合った。
…
……
………
…………
……………
………………
…………………
……………………
………………………
…………………………
「…んっ…め、めぐ。もう限界…」
「う、うん。ごめんね」
ホントに何度も何度も行為を重ねた。
「年明けくらいにお父さんたちが帰ってくるの。しばらく居るみたいで、こんな時間があんまりないかもしれないから」
そうだったんだ…。
「今度は…ちゃんと挨拶しようかな」
「……うん…」
でも、会ってただの挨拶…ならよかったんだけどな。