表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/39

友達

 めぐと付き合うことになった翌日。

 今日は土曜日。

 いつも通りに部活へ。

 オレは話さなくちゃならない。

 部活の途中、紗耶香に話しかける。

「紗耶香」

「誠二、話しはめぐから聞いたわ。すごく喜んでた。お礼を言うわ。ありがとう」

 紗耶香…。

「でも。私はまだまだあんたをめぐにふさわしい男なんて思ってないからね!めぐを泣かせたら許さないんだから!」

「はははっ…オレは大事にするよ。泣かせたりなんか、悲しませたりなんかしない」

「な、なによ。そんなに言われたら何も言えないじゃない」

 紗耶香…オレは決めたんだから。

「でも誠二。美香ちゃんとは大丈夫なの?」

「ん…あぁ…今日はまだ話してない」

 紗耶香は全部わかってたんだよな。

「頑張りなさいよ?」

 みんなといつも通りに過ごせるように…。

 それがオレとめぐの本当のスタートなんだ。

 勇介…。

 勇介に話しをしよう。

 練習中だったけど勇介を探す。決心が鈍らないうちに話しておきたかった。

 あっ…勇介がこっちに向かってくる。

「おう誠二!奈美先生見てないか?呼んで来いって言われてな」

「いや、こっちには来てないぞ。……勇介、少しだけ時間あるか?」

「何だ?改まって。まさか…!お前美香と初体験を…!?」

 うーん、バカなんだけど今日はつっこむわけにもいかないし。

「そのことなんだけどな…」

「お、おう…」

 勇介は生唾をごくりと飲み込んでオレの話しに耳を傾けていた。

「勇介…オレは美香と付き合ってない」

「…は?なんだって?」

「オレはめ…相田さんと付き合うことにしたんだ」

 …どうなる?

「……なんでだ?」

「…自分に正直に答えを出した。オレは相田さんが好きなんだ」

「て、てめぇ!!」

 勇介がオレの胸倉を掴んで怒鳴る。

「美香がお前のことをどんだけ前から好きだったかわかってんのか!お前だったからオレは…オレは…」

 勇介に力がなくなっていく。

「すまない…」

「謝って済むことじゃねぇんだよ…」

「オレは…美香の気持ちを受け止めた。ずっと辛い思いをさせてたのもわかってる。だからって自分の気持ちに嘘ついて美香を選んでも、余計に辛い思いをさせるんだ」

「そんなんじゃオレは納得しねぇ!」

「…美香は…笑ってた。オレは何度も謝ったよ。だけど、謝るなって言われた。美香は最初っからわかってた。オレが相田さんを選ぶこと。……確かにオレは美香を傷つけた。そのうえで相田さんを選んだんだ。…オレの覚悟だ。お前にもわかって欲しい。友達でいたいんだ」

 …………

「…誠二、後悔すんなよ?」

「勇介…?」

「オレが美香を奪っても後悔すんなよ?絶対に振り向かせてお前でも見たことのないような笑顔にしてみせるからな!」

 勇介…。

「ふふっ…お前は無理だよ」

「なんだとこのやろー!!」

 その後、勇介に散々追い回された。勇介は、きっとわかってくれたんだと思う。

 オレの覚悟と美香の気持ちを。

 勇介はその後パートの先輩に用事を忘れていたことをこっぴどく怒られていた。

 同じパートの美香もそれを見て笑っていた。

「誠二くん!何さぼってんの!」

 やっば!

 オレの理恵先輩に怒られちまう!

 急いでパーカッションのところに戻った。

「ちょーっとうまくなってきたからって調子に乗ってるみたいだねぇ、誠二くん」

 理恵先輩が意地悪そうな顔でそう言ってくる。

「いや、あの…すいません!」

 何をされるかわかったもんじゃないからとにかくオレは謝った。

「あんまりおふざけが過ぎると私の胸で窒息させちゃうよ?」

 それは…ぜひ!!

 いやいや…オレにはもうめぐっていう彼女がいるんだからそういうことはもう止めてもらわないと。

「理恵先輩。オレ彼女出来たんで、もうそういうこと止めてください」

「えっ…!えーーーーー!!」

 あーもう!うるさいな!そんなに驚かなくてもいいのに。

「誰?誰?美香ちゃん?」

「…相田さんです」

 また美香か…。

「恵ちゃんかぁ…」

 何?その残念そうな感じ。

「私は美香ちゃん応援してたからなぁ。幼馴染キャラだし。いじっててかわいかったもんな。でも…よかったね!誠二くん!」

 一応祝福してくれてるのか?それは。

「でも私が恋しくなったらいつでもいいからね!」

 だから何でそうなるんだよ!

「つじくん~えっちぃだから~めぐめぐ~危険~」

 …………

 まだそんなことまでは…いや…うん…まだだよ。

 どうやら先輩たちは何も変わらないでいてくれるみたいだ。

 よかった…。

「あ…誠二くん…」

 そこにめぐがやってきた。

「きゃーー!!恵ちゃん恵ちゃん!ちょっと来て!」

「な…なんですか?」

 うーん…頑張れめぐ!

 めぐは理恵先輩とアリサ先輩に連れて行かれてしまった。

 質問攻めに合うんだろうなぁ。

 …………

「恵ちゃん、もう誠二くんとキスした?」

「そっ、そんな…!まだ昨日のことですし…」

「あーん!かわいい!ね、恵ちゃんからしちゃいなよぉ?」

「つじくん~えっちぃだから~きをつけて~」

「た、確かに…えっちですね」

「え!なになに!?何かあったの!?」

「占いで…身体の相性いいねって…」

「せ、誠二くんったら大胆ー!恵ちゃん、心構えはしといた方がいいかもね」

「そ、そんな…私はまだ…」

「勢いよ。恵ちゃん」

「や…先輩やだぁーー!!」

「あんっ!逃げられた。恵ちゃんかわいいー!」

 …………

 ん?めぐが戻って来た。顔真っ赤だな。あれは相当いじられたみだいだな。

「せ…誠二くん、い…勢いなんてイヤだよ?」

「え?何言って…ってちょっとめぐ!」

 …走って行ってしまった。何か用事があって来たんじゃないのか?

「うふふふ…」

 先輩たちも戻ってきた。

「理恵先輩、何言ったんですか?」

「うふふ…誠二くんって大胆なんだね!」

 はぁ?何の話ししてたんだ?

「誠二くん、最初は雰囲気とムードが大事だから。あとは…勢いよ!」

 い、一体何を言っている!?

「あんた、めぐを泣かせたら許さないからね」

 紗耶香!今のでわかるのか!?

 たぶん、男のオレには分かりえない内容なんだろう…。

 それからもいろいろ聞かれながら部活は終わりを迎えようとしていた。

「誠二くん!」

 めぐ…そういえばさっき用事があるみたいだったもんな。

「誠二くん、この後時間ある?」

「うん、大丈夫」

 めぐは急に真剣な表情になった。

「二人で美香ちゃんと話しに行かない?」

「…………」

 大丈夫なんだろうか?オレたちの姿を見せて。

「けじめつけたいの」

 そっか…けじめか…。

「うん!行こう!」

 ちゃんと見てもらおう。

 美香にとって酷なことだろうけれど。

 美香を信じて。

 そして部活も終わって二人で美香のところへ。

 美香がいつも楽器の手入れをする場所がある。

 …そこに美香は居た。

「美香!」

「……誠二」

 めぐも一緒にいる。

 オレの隣に立っている。

「美香ちゃん…あの…」

 やっぱり…恨みっこなしっていってもな…。

「恵ちゃん、誠二が泣かせるようなことしたら遠慮なく言ってね?誠二なんて殴り倒しちゃうんだから!」

「え……」

 美香は笑顔だった。

「恵ちゃん、私は誠二のこと大好きだった。だから私の分まで誠二のこと好きでいてあげてね?」

「あ……美香…ちゃん…」

 めぐは涙を浮かべて美香を見つめていた。

「誠二も!恵ちゃんのこと大事にしてあげるんだよ?」

「わ、わかってるよ!」

 美香の表情に曇りはなかった。

「私も…前に進むから」

「…うっ…うぇっ…美香ちゃ~ん…」

 めぐは堪えきれず涙してした。

「”美香”でいいよ!友達だからね!私も”めぐ”って呼んでいい?」

 その言葉にめぐの表情が明るくなった。

「…うん!」

 満面の笑みで返すめぐ。

「ふふ…めぐは眩しいな。誠二も!ずっと友達だよ!」

「…これからもよろしくな?」

「うん!」

 笑い合った…。

 そしてオレとめぐは部室をあとにした。

 変わらない…関係でいれそうだった。変わったのは帰りが別々になったこと。オレはめぐをバス停まで送ってから帰る。

 友達だけど、今までとは違うんだ。

 オレと美香は別々に歩き始めた…。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ