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部活動紹介

「おはよう、誠二」

「おはよ、美香」

「おーっす」

 これが当たり前になりそうな三人での登校だ。オレ、美香、勇介。

 二人は今日の授業のことを話しながら歩いている。オレだけのけものにされている気分だ。

「今日誠二のとこの授業は?」

 おお!神よ感謝します!

 この哀れな子羊に一筋の光を与えてたもうた!

「今日は現国、数Ⅰ、科学、体育だよ」

 今日のオレのクラスの時間割りはこう。勉強自体は苦手だ。この中では体育が一番得意。球技とかじゃなかったらな。

「ふーん、さあ、誠二は高校の授業についていけるのかな?」

 美香は意地悪そうに言う。オレが勉強出来ないこと知ってるからな。

 美香は多分、オレのことを一番良く知っている友達だ。勇介には相談しにくいことだって美香には相談出来たし。

「クラスに渉がいるから大丈夫さ」

「まーた、人に頼って。自分の身になんないよ?」

 なるようになれ、だ。

 それから学校に着いてそれぞれのクラスに分かれた。

 朝のSHRが終わってさっそく一時限目の授業だ。

 現国の担当は担任の本田奈美先生。何人かのクラスメートはすでに「奈美先生」と親しげに呼んでいた。

 最初の授業は「先生への質問コーナー!」なんてノリでやってた。みんな次から次に質問を浴びせていたんだ。オレは何にも質問しなかったけど。でも、楽しかった。

 後の授業は大体が先生の自己紹介と教科書なんかの確認で終わった。

 体育は鬼ごっこだった。オレの得意分野だな。

 女子は必至に逃げていたよ。そりゃあもう鬼という男子から逃げるために必死だったさ。オレは元陸上部の意地で一度もつかまることはなかった。

 いい具合に体を動かして昼食だ。この学校には学食なんてものはない。弁当か購買のパンだ。オレの今日の昼食はパン。 

 昼休みは渉とゲームの話しをして過ごしていた。校舎の中を少し歩き周りたかったけど、ゲームのこととなると渉はマシンガントークになるんだ。

 





 そして昼休みも終わり、午後の時限に入る。

 予定通りに体育館での部活動紹介。

 全校生徒が体育館に集まり、それぞれの部活の部長が紹介していくらしい。

『えー、それではただいまより部活動紹介を始めます。本校は特別な理由がない限り、必ずどれかの部に所属してもらうことになります。尚、本日より一週間、新入生は部活動の見学期間となりますので、その間によく考えて入部届けを提出してください』

 決定まで一週間あるのか・・・。

 一応美香には吹奏楽部に入るって言ってはみたものの、実際にそんな興味があるわけでもないしな。

 うーん・・・良く聞いておこう。

 そしてまず運動部の方から紹介されていった。

 運動部は・・・入るとしたらやっぱり陸上部しかない、かな。

 そして文化部。

 吹奏楽部はもちろん聞いていたけれど、パソコン部というものがあった。

 中学の時はなかったな・・・。

 何だろう、ネトゲーとかするならやってみたいかな。

 良く説明を聞いているとゲームはゲームなんだけど自作ゲームとかプログラムとかそういうのをやるらしい。オレは聞いているだけで頭が痛くなっていた。

 多分、渉はここにするんだろうな。

 そしてオレは。

 ・・・美香には悪いけど、やっぱ陸上やってみようかなと思った。

 せっかく中学三年間やってきたんだし。

 だけどその時に、オレが「吹奏楽部に入るよ」って美香に言った時の美香の顔がよぎった。

 すごくうれしそうだったんだよな。

 そんなことがあった手前、やっぱりやめるなんて言いづらい・・・。

 見るだけ!

 見学するだけならいいよな!

 少し見てから吹奏楽部を見学しよう!それでやっぱりきつかったイメージが甦るならやめよう。

 よし、それでいこう!

『それではこれで部活動紹介を終わります。各自教室へと戻ってください』

 ん、もう終わりか。

 いろいろ考えてたらあっという間だったな。

 

 そして教室へ戻り放課後。

 オレはさっそくパソコン部へ行こうとしていた渉を呼び止めた。

「なあ、渉」

「何?誠二くん」

「ちょっくらお願いがあるんだけど・・・」

「何?トイレなら一人で行ってよね」

「そんな子供じゃねぇ!・・・って場合じゃなくてさ、陸上部の見学に付き合ってくんない?」

 こんなことを頼むのにはちゃんと理由がある。

「えー・・・」

「なんとか頼むよ。渉にも付き合うからさ」

「うーん・・・まぁ、ちゃんと付き合うなら・・・、パソコン部だよ?」

「わかってるって。それでもう一つ頼みがあるんだ」  

「何?」

 ここからが本題。

「もし美香に会ったらさ、渉が陸上部を見学したいからってことにして欲しいんだよ」

「えーっ!イヤだよ!だいたい僕陸上なんて興味ないし、正直に言えばいいじゃん」

「いやぁ、美香に吹奏楽部に入るって言ったらすごく喜んでさ。いまさら言えないっていうかなんていうか・・・」

「なにそれ、意味わかんないし」

「まーまーまー、さっさと見に行って渉のパソコン部に行こうぜ!」

 そして強引に渉を連れて教室を出ようとすると。

「あ、誠二。吹奏楽部、見学しに行こ!」

 ・・・やっぱこうなるよなぁ。

「悪い、美香。渉が陸上部見たいって言うからさ、ちょっと付き合ってくるよ」

「えっ!渉くんが陸上!?ほ、ホントに?渉くん」

 オレは渉にチラッと目線を送る。

「う、うん。ちょっと違うことやってみようかなーって・・・」

「ふーん・・・なんか挙動不審ね、二人とも」

 うっ、さすがに鋭い。

 疑いたっぷりの目だ。

「ほ、ほら、オレって陸上やってたからさ、渉に説明出来るだろ?だからさ、なっ、渉」

 そこでこっちに振るなっていう顔をしないでくれ!渉!

「う、うん。まだ頼れるのって誠二くんだけだから」

 よし、さすがは頼れる渉くんだ。

「まぁ・・・いいか。じゃあ明日は行こうね、誠二」

「おう」

「ごめんね、美香ちゃん。誠二くん借りちゃって」

「えっ!べ、別に誠二は私のものじゃないんだし。ぜ、全然いいよ、気にしないで!じゃあ私は吹奏楽部行くから!」

 美香はなんか慌てて行ってしまった。

「・・・誠二くん」

 ん?

「絶対に吹奏楽部がいいと思うよ、美香ちゃんいるし」

 な、なんだ?なんか怖いぞ、渉。

「美香ちゃんいるし!」

「わ、わかってるって。明日はちゃんと行くよ。ほら、早く行こうぜ」

 なんなんだ、いったい。

 責められている感覚があったのでさっさと見に行くことに。

 

 グラウンドに出てみるとそれぞれの運動部が新入生をつかまえて話しをしている姿が目に止まった。 とりあえず見学だけ。

 渉がかたくなに近寄ることを拒むものだから遠くから練習風景を眺めた。

 陸上の内容的なものは中学にやっていたこととそう変わりはない。

 わかってたんだけど、雰囲気っていうのも大事だろ?

 見るものも見て渉が望むパソコン部へ。

 とりあえずパソコンの前に座らせられたものの言ってることがさっぱりだった。

 渉はさっそくなじんでいたけどな。渉はここで決定だね。

 唯一惹かれたのは暑い夏場にはエアコンも使うということだった。

 この高校でエアコンが設置されているのはパソコン室のみ。部活の時は公認で使っていいそうなんだ。

 このエアコンオプションはかなりの魅力だった。

 ただまぁ、さっきも言った通り雰囲気が合わないかなって感じでパス。

 ゲームならまだしもパソコン画面とにらめっこし続けるなんてオレには無理だ。

 渉はこのまま部活時間内残るって言ったからオレだけ早めに退散した。

 美香と勇介は吹奏楽部だろうし、このまま帰るか。

 今から一人で行くのも行きにくいしな。

 





 オレは一人校門に向かっていた。そろそろ校門を出る。

 美香には一言先に帰るとメールしておいた。

 すると。

「誠二ー!」

 美香と勇介が走ってやってきた。

 メールを打ってからの時間を考えると急いで来たみたいだな。

「吹奏楽部は?」

「とりあえず今日は帰ってきたよ」

 一人で帰るオレに気を使ったかな?

「誠二!オレは吹奏楽部に決めたぞ!」

 勇介がにこやかにそう言い放った。

 こいつがこうもあっさり決めるなんて・・・。

「いいとこだ!吹奏楽部は!あそこにはオレの求めるものがある!」

 それは聞かなくてもなんとなくわかるな。

「かわいい子がいたのか?」

「何人かチェックはしておいた」

「はぁー・・・お前は・・・」

「いいじゃん、これで三人同じ部活なんだしさ」

 嬉しそうに言う美香のその言葉がグサッと突き刺さる。

「ま、まぁそうだな」

 悩んでることなんて言えそうにないな、やっぱり。

「・・・誠二さ、ホントは陸上やりたいんじゃないの?」

「・・・・」

 わかるもんなんだな。幼馴染ってのはすごいな。

「別に私が誘ったからって、気にしなくていいんだよ。無理強いはできないし」

「・・・ごめん。でも、明日はちゃんと吹奏楽部に行くからさ。それから、かな」

「うん!」

 こりゃあ、明日は絶対行かないとな。

 

 それから途中で寄り道をして家に帰った。

 部活が始まったらこんな時間もなくなるのか、それが少し寂しい。

 何言ってんだかね。

 まだ高校生活始まったばっかだってのに。

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