失恋タイムリーパー
白昼夢。
起きているか寝ているかわからないような朝。
「ごめんなさい、忙しいから、私、付き合えない」
そんな言葉が、頭を反芻する。
おれは、フラれたんだ。
大学3年生の時に、フラれたんだ。
「ねえ、また、でんわしよー」
そこに、既読はついていない。
おれは、フラれたんだ。
社会人1年目で、フラれたんだ。
「好きです、付き合ってください!」
「ごめんなさい!(スタンプ)」
おれは、高校2年生の頃、フラれてしまった。
そして、高校3年生の頃は。
告白さえもできずに、フラれた。
今日は、会社が、休みだ。
おれの思い出は、ずっと、頭から離れない。
おれは、それに耐えられなくなる。
目をつぶる。
それでも、思い出は頭に貼り付いて離れない。
『私、セカオワ好きなの』
そう、奈子は言った。
おれの、隣で。
サークルの飲み会で。
『おれも、セカオワ好き!』
『ほんと!?私と一緒にセカオワのライブに行こ―!』
おれと奈子は、セカオワのライブに行く約束をした。
でも。
その二年後。
2人で、ライブに行く約束をしたそのライブは、新型コロナウイルスの影響で中止になった。
それで、それで。
告白をしたら、忙しいから、ってフラれてしまったんだ。
『おれ、奈子のことが好きです』
そう、言っておけば。
早く、言っておけば……
ここ、どこ!?
周りが、虹色の空間に包まれた。
気づけば、奈子との大学の帰り道だった。
「セカオワのなんの曲が好きー?」
そう、奈子はおれに質問する。
おれは、答える。
「不死鳥が好き!」
何が起こっているんだろう。
星が、綺麗で。
駅に向かう道は、おれ達に幻想的な時間を与えているようで。
あ、そうだ。
タイミングをミスったわけだから。
誘わなきゃ。
ご飯に。
誘わなきゃ。
「ねえ、一緒に今度、ご飯行かない?」
「うーん、忙しいから無理かな」
そう言われた瞬間。
また、虹色の空間に包まれ。
ベッドの上に、帰って来た。
そうか。
どっちみち、ご飯に誘ったところで、ダメだったんだな。
また、虹色の空間に包まれた。
「私ね、欅坂にはまってるんだ」
咲。
咲は、制服を着ている。
おれも、制服を着ている。
「そうなんだ……サイレント・マジョリティーは知ってるよ」
告白、出来なかった咲。
告白、しなきゃ。
「あ、あのね。おれ、咲のことが、好き」
「ごめん、私、好きな人、いるから……」
虹色の空間に、包まれた。
そっか。
高校の頃に告白できなかった咲は、好きな人がいたんだ。
だから、おれは、おれは付き合えなかったんだ。
また、虹色の空間に包まれた。
そして。
目の前には、梨乃ちゃんが座っていた。
個室居酒屋。
梨乃ちゃんは、おれに言う。
「先輩と付き合えて、私、よかったです」
おれは、この後、梨乃ちゃんに、無視されることになるんだ。
ずっと、後悔している、失恋の後悔。
「ねえ、梨乃ちゃん。ずっと、いなくならないでね……」
梨乃ちゃんは、おれの方を向いて、言った。
「いなくなんか、なりませんよ」
また、虹色の空間に包まれた。
LINEが一通、来ていた。
梨乃ちゃんから。
「電話、しましょ」
ずっと、後悔していた恋愛達。
それがあるからこそ、梨乃ちゃんを。
一度、大切にしなかった梨乃ちゃんを。
大切に、したい。
そんな、朝の物語。
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