◻︎ お互いに髪を結いあうまで出れない部屋
「こんどは何だー?」
「えーと、『お互いに髪を結いあうまで出れない部屋』だね」
「ねえ、結うってなに?」
きっと賢いアズサなら知っているだろう。
「髪をむすぶってこと。ほら、こっちおいで」
アズサの元へいくと近くの机にくしやゴム、ヘアピンなどがある。
「どうやって結ぶ?」
「じゃあこれつけて欲しい!」
私が彼女に差し出したのはピンク色の大きなリボン。
「ならハーフアップにして、そこにつけるね」
彼女は私の髪をとかす。
「すごいサラサラだね。リンスなんかいいの使ってるの?」
「いや、使ってないよ」
私はリンスを使っていない。だって面倒だから。
「え? リンスなしでこのサラサラ髪を」
「うん。そうだよ」
「……望、髪は大事にしたほうがいいと思うよ」
嘆きを含んだような声で言われた。
「ほら、できたよ」
「おー! ありがとうね。お礼にこれをつけてあげよう」
私は赤いかんざしを手に取った。
「つけれるの?」
「多分」
「それ、無理なときにする返事よね」
「えへへ」
正直かんざしなんて触ったこともなかった。でもこの赤のかんざしはアズサの黒髪にきっと合う。
「かんざしはね、こうやって使うの」
アズサが使って見せてくれる。手先が器用なものだ。
「おお、すごい! さっすがアズサ!」
「ほらほら、望もやってみて。そうしないとこの部屋から出れない」
「わかった」
見よう見まねでやってみる。だが、うまくいかない。
「できなーい」
「ここを持って、そうそう」
アズサが手伝ってくれる。
「こう?」
「そうそう。上手」
「ここをこうして、できた!」
「ありがとうね」
頭を撫でてくれる。同い年だが、お姉さんみたいだ。
「じゃあ、行こっか」
「うん」