叩いて被ってジャンケンポンをして勝敗がつくまで出れない部屋
「なんの部屋?」
「カードは……あった。叩いて被ってジャンケンポンするんだってさ」
部屋の中央にはピコピコハンマーと簡単に壊れそうなプラスチックのヘルメットがある。
「これまた簡単な命令だね」
「そうだね。思いつき感がすごいけど。千代の考えることみたい」
「そんなことないでしょ! もう。さっさとやるよ」
「はいはい」
お互いに向かい合って座る。
自分から見て右手側にはハンマーが、左手側にはヘルメットがある。
「最初はグー。じゃんけんぽん!」
私はグー。ユキはパー。
すぐさまヘルメットを手に取って被った。
遅れてユキがハンマーでポコポコする。
「遅いね」
「私は頭脳派なの!」
ユキの言い訳を聞き流しつつジャンケンを行った。
私はチョキ。ユキはグー。また負けた。
でもユキは私のスピードについてこれないのでまたヘルメットの上でペコペコ鳴らしている。
何度やっても同じような結果になった。
「また負けたー!」
「千夜が何を出すかは9割くらいの精度で予測できるからね」
「何それ。ズルい」
「ズルじゃないよ。私の技術。頭脳派だからね」
頭脳派を強調してくるあたり、性格が悪い。
ただ、困ったことになった。
ユキのチートのような技術のおかげでこのゲーム、勝負がつかない。
「でも、精度は9割。つまり10回に1回くらいは勝てる!」
「……ジャンケンは互いに独立してるからもっと勝率は低いよ」
「でも、回数を重ねれば僕が勝てる」
「千夜の腕が疲れるのが先か、私の予測が外れるのが先か、勝負だね。まあ私が勝つんだけど」
「いや。僕が勝つ」
そこからはスピードをあげて何度も何度もじゃんけんをした。
負けてはヘルメットをかぶり、負けてはヘルメットをかぶり。
もう何度目かわからなくなるほど繰り返した。
そしてその時がやってきた。
「最初はぐー、じゃんけんぽん」
僕がグー。ユキがチョキ。
勝った。
「まずい!」
ユキがヘルメットを手に取るよりも先に僕のもつピコピコハンマーがユキの頭にヒットした。
「いったぁぁあああ! ほんとにピコピコハンマーでやったの?」
「もちろん。日頃の恨みを晴らすためにピコピコハンマーの限界を試してみた」
「もうやだ。千夜に負けたし頭は痛いし。もう帰りたい」
「残念ながらあと46部屋ある」
「さっさと終わらせて出る!」
「それがいいね」
こうして長い戦いは幕を閉じ、僕たちは次の部屋へ向かった。




