15秒以内に100m先にある鍵を取らないと出れない部屋
「今度は広い」
「そうだね。向こうまで行くの大変そうだ」
「そこまでじゃねえよ。これくらい歩け」
この部屋の奥行きは多分100mくらいだ。あっちの壁までそこまで遠くない。
つまらない部屋で、床に一本黒い線がある以外は全部真っ白だ。
「カードは……あった。スタートしてから15秒以内にあっちの壁にある鍵をとってこいだってさ。任せたよ、千代」
「ひょろひょろなユキはおとなしく見てな」
軽く準備運動をして体をほぐす。
寝落ちしたのでお世辞にも良いコンディションとは言えない。ガタガタだ。
最後に大きく伸びをしてから僕はスタートラインだと思われる黒いラインに立った。
深く息を吸って、吐く。
再チャレンジできるかわからない。
もしミスしたら二度とここから出られないかもしれない。
こんな訳のわからない空間で死ぬまで、いや死んでもユキと一緒に過ごすなんてごめんだ。
「千代なら楽勝でしょ」
「当たり前だ」
そうだ。後がないとはいえこんな簡単な挑戦、ミスする方が難しいってもんだ。
僕ならできる。絶対にできる。
「よーい。スタート!」
千夜が合図を出すと同時に駆け出す。
部屋があまりにも白いので自分がどれくらいの速さで走っているかイマイチわからない。
だからただ無我夢中で走る。
光るものが見えた。
あれが鍵か。
天井から白いロープで吊るされている。
あと少し。
足に力を込めて地面を蹴る。
目の前には鍵。
手を伸ばして掴んだ。
「とった!」
天井からロープが落ちてパタンと音を立てた。
千夜がパチパチと拍手をしてくれた。
ちゃんと成功できた。
「お疲れ様」
「これくらい余裕っつうの」
「緊張してた癖によく言うねえ」
「してない! もう。さっさと次の部屋行くぞ」
「はいはい」
手に入れた白い鍵で扉を開けて次の部屋に入った。




