♡ キスするまでするまで出れない部屋
「これで最後か」
「あっという間だったね」
ここまでの50部屋。
色々あった。
食べたり、遊んだり、いちゃついたり。ちょっとしたデートみたいだ。
「これで戻れるんだよね」
「ちょっとロマンチックね」
「そうだね」
この無機質な白い部屋も少し馴染んできた。
「一体誰が私たちをここに連れてきて、何をさせたかったんだろうね」
「わかんない。でも、久しぶりにこうやって長い時間一緒に入れたからなんでもいいじゃない」
「そうだね。お互い忙しくてなかなか一緒に遊べなったもんね」
勉強に部活に忙しかった。お互い話すのは昼休みくらい。
正直、ちょっと寂しかった。
「ここを出たらまた忙しい日々に戻るんだね」
「そうだね。でも、また一緒に遊ぼう。長期休暇なら予定合わせれると思う」
「そこまで頑張ろうね」
「うん」
私は一つ深呼吸してからアズサにキスした。
すると視界がぐにゃりと歪んで意識が飛んだ。
よく見えなかったがアズサも似たような状態な気がした。
気がつけば部屋に戻っていた。
時計を見ると普段私が起きる時間になっていた。
スマホを見る。
早起きなアズサは2時間ほど前に連絡をしてきていた。
「ごめん。今起きた」
「よかった。ちゃんと戻って来れたんだね。起きる時間は普段通りになるよう調節してあるのかもね」
「器用なことだ」
「あの部屋ならそれくらいやってもおかしくない」
「確かに」
「今から塾だから落ちるね」
「はーい! 頑張ってね」
あんなことがあろうともアズサの塾は休みにならないし、私は朝ごはんを食べないといけない。
何も変わらない。
あれから数日経ったが、相変わらずお互いに忙しいのも変わらない。
でも短い時間でいっぱい話すようになった気がする。
ちょっとだけアズサとの距離が縮まった気がする。




