〇 二人で協力して元素周期表の1〜118番を覚えるまで出れない部屋
「今度は何?」
「んーと……は? ついに頭がおかしくなったか?」
お題は元素周期表を覚えろということだった。
なんだそれ。本気でやめてくれ。頭がパンクすると言ってるだろう。
「頑張ろっか、望」
「え、ごめん。無理」
「そんなこと言わずにさ!」
無理を言わないでほしい。私が覚えてるのはほんのわずか。
「すいへーりーべーぼくのふね」
ここまでである。
「おー、これは中々重症だねぇ」
アズサはしばらく腕を組んで悩んでいた。
顔を上げてこちらを見て言う。
「とりあえず、36番まで覚えようか」
「あと26も!」
「ここまでは基礎知識だから、さ」
基礎知識なんて酷いこと言わないでほしい。
私は基礎の「き」の字もできないのだ。そんな人間に「そ」を求めないでもらいたい。
「……ちなみにアズサはどれくらい覚えているの?」
「えー、秘密!」
「なら覚えない」
「もう、教えるから。私は86番くらいまでならわかるよ」
「ならなんで」
「基礎知識だから」
こんなの、基礎の濫用だ!
そう文句を言いつつも暗記に励む。
あの歌の続きも教えてもらった。
「すいへーりーべーぼくのふね。ななまがりしっぷすくらーくか。かっかばくろまんてつこにどあがげあっせんぶるく」
「なんか……歌ってる時だけ馬鹿っぽく見える」
「酷い」
結局その歌を使って頑張って覚えて部屋を出た。
アズサに褒めてもらえた。嬉しい。




