◻︎ お互いにネイルを塗りあうまで出れない部屋
「今度はーなんとーネイルをー塗り合うー部屋です」
「いぇーい」
なんだかここの部屋たちにはよくファッションセンスを求められる気がする。
アズサと付き合いだしてからは多少みなりを気にするようになったが、それまでは「可愛い」にも「おしゃれ」にもさほど興味はなかった。
だから、そんな高度なことを求めないでいただきたい。
「まずは望にやったげる。何色がいい?」
目の前にはカラフルなネイルの瓶が並んでいる。色々ある中で私はくすんだピンクのを選んだ。
「これね。可愛い望に似合うと思うよ」
アズサにそう言われると安心する。
アズサは私の爪を綺麗に整えて、塗ってくれた。
「可愛い」
「うん。やっぱり望は手も綺麗だからネイルがはえるよ」
「ありがとう。次はアズサの番だよね」
「うん。よろしくね。何色にする?」
「黒」
アズサは迷うことなく言った。かっこいい、アズサらしい選択だ。
問題はただ一つ。私には器用さも勇気もないのでネイルが難しいということ。
私が困っていると教えてくれた。
「先っぽだけ塗るのもあるよ」
スマホがないので画像は見れないがとにかく先っぽだけ塗ってもおしゃれにできるらしい、アズサは物知りだ。
そうしてアズサに手取り足取り教えてもらいながら、なんとかネイルができた。
「うん。おしゃれになった。ありがとうね、望」
「こちらこそありがとう」
私たちは爪が綺麗な手を繋いで次の部屋に向かった。




