◻︎ お互いにネクタイを締めてあげるまで出れない部屋
──前の部屋のあらすじ──
男装しないと出れない部屋。
スーツに着替えたけどネクタイだけない!
「なるほど」
「そういうことか」
それがお題を見て最初の感想だった。
ネクタイがなかったのはこれをさせるためか。
「ちなみにだけど、望。ネクタイの結び方わかる?」
「わからない」
「やっぱりね」
呆れられた気がする。
「まずは私がやってあげる」
アズサがネクタイを一本選んでこちらにくる。
「ここを持って、こうすると結べる」
アズサが簡単に教えてくれる。だが半分も頭に入らない。だって。
「なんか……新婚の夫婦みたいだね」
「……馬鹿じゃないの?」
照れている。可愛い。
「想像したの? 結婚して一緒の家に住んでいる私たちのことを想像したの?」
「ちょっと。でも、できないでしょ」
「海外に行けば」
「望、英語のテストの点数言える?」
「頑張ります」
なかなか厳しいことを言ってくる。でもアズサとの結婚のためなら英語も頑張れる気がする。
ここから出たら頑張ろうと思う。たぶん。
「ほらほら、私のも結んでよ」
アズサにネクタイを渡される。
一応頑張ってみるが、なかなかうまくいかない。
「難しい」
どう頑張っても結び目ができない。蝶々結びもできない人間には難しすぎると思うんだ。
「どうしたものかね。あ、こんなのあったよ」
アズサが見つけてきたのはループタイだった。これなら結ぶ必要もない。
アズサの首にかけ、締める。
「やっぱりアズサはなんでも似合うね」
「望もね」
私たちはなんとか部屋を出た。




