◻︎ 男装するまで出れない部屋
「今度はなーんだ」
「男装するまで出れない部屋ー」
今度は男装か。この部屋は何度私たちを着替えさせたら気が済むのだろう。
「ウィッグ被るのか」
「ずいぶんと本格的だね」
私は黒髪のウィッグを被る。説明書を用意してくれる部屋は優しいと思う。
「ちゃんど被れてる?」
アズサが聞く。銀髪のウィッグがよく似合っている。
「いけてるよ。大丈夫。かっこいいから」
「ありがとう。望も似合ってるよ」
アズサが見た目通りのイケメンになってしまった。いや、元からか。
ウィッグを被り終えたら服を着替える。
「先に胸潰せってさ」
特殊なインナーでぺったんこにする。
「これ凄いね。びっくりするぐらい平たくなる」
「面白いねぇ」
鏡で確認すれば本当になくなっていたので驚いた。技術の進化がすごい。
「それでこれを着ろと」
この部屋に用意されている着替えはスーツのみだ。
色々あるが私は紺のスーツにした。
「あれ、ネクタイないよ?」
「次の部屋にあるってさ」
ライトグレーのスリーピースを着たアズサがいう。
どうやらこの部屋だけでは終わらないらしい。
「ネクタイないと不自然だよね」
「ほんとそう。というかネクタイだけ次の部屋に分けるって一体どんなお題が来るんだろう」
「はやく次の部屋に行って確認しよ」
そうしてかっこいアズサを見たい。
私たちは不思議に思いながら扉を開けた。




