◻︎ ピアス空けるまで出れない部屋
「今度は何?」
「ピアス空けろってさ。学校がピアスOKでよかったよ」
ピアス……? マジか。絶対痛い。怖い。
「望は金属アレルギーとかない?」
「一応ないけど」
「なら大丈夫だね」
全然大丈夫じゃない。
「どっちからする? 私先にやろうかな」
どうやらアズサは平気らしい。度胸がある。
「お先にどうぞ」
アズサはファーストピアスを選び始めた。
「どれが良いと思う? あ、自分の誕生石のとかあるよ」
確かアズサの誕生月は3月だった。
「誕生石ならアズサはアクアマリンだね。石言葉はなんだっけ?」
「幸福・富・聡明。割と欲張りなんだよね」
嬉しそうに笑っている。
水色のアクアマリン、アズサに似合いそうだ。
「それにしなよ。私も誕生石にする」
「おお、お揃いだね。それが良いよ。じゃあ空けるよ」
そう言ってアズサはサクッと穴を空けてしまう。耳たぶでアクアマリンが輝いている。
「今度は望の番だね。十月だからローズだよ。石言葉は愛情・美と健康・優しさ。うん、望にぴったりだ」
いよいよこの時が来てしまった。
一生縁がないと思っていたピアスをこんなことで空けることになるとは。
手が震えてしまう。
「望、大丈夫だよ。全然痛くないから大丈夫」
アズサに頭を撫でられ油断しているときにパチリと穴を空けられた。痛かった。
「お、空けれた」
「急すぎる」
「こうでもしないといつまでも渋って埒が開かないでしょ」
ときどきアズサは強引だと思う。私が抵抗できないようにして引っ張るのだから酷い。
「あ、ピアス似合ってるよ」
そう、こんなふうにまぁいいやと思わせてくるから酷いのだ。




