♡ 恋人繋ぎしたまま一時間経つまで出れない部屋
「まだ口の中が痛い
「大丈夫?」
スパイスで口の中がヒリヒリするのを耐えながら部屋の中を観察する。
中にはソファが一つ。看板には、恋人繋ぎをしたまま一時間過ごせ、と指示が書かれている。
「手、貸して」
アズサに手を取られ、繋いだ。
恋人繋ぎをするとアズサの指が絡んで普通に繋ぐよりたくさん触れられる気がした。
「望の手はあったかいね」
不意にアズサがいう。
「アズサが冷たいだけじゃないの?」
「そうかもしれない。まぁどちらにしろ望の手があったかくて落ち着くことには変わりない。だからこうやって手を繋ぐの好きなんだ」
初めて聞いた。普段は中々手を繋いでくれないからてっきり嫌なのかと思っていた。それを問うとこう返された。
「それは、手を繋いでる時の望が可愛いから。他の誰にも見せたくないの」
なんて可愛い理由だろう。アズサがこんなふうに思っているなど知らなかった。
「なら、この空間は二人だけだから、一時間だけど言わずにずっとで繋いでおく?」
「それはいいかもしれない。可愛い望を独り占めできて、手も繋げて。最高」
「良かった。一緒に残りも頑張ろうね」
「うん」
こんな、たわいない話をしていれば一時間などあっという間に過ぎた。私たちは二人で手を繋いだまま部屋を出た。




