◻︎ 学ラン着るまで出れない部屋
「さっきの雨で服濡れちゃった」
「着替えたいね」
そんな私たちの願いを聞いてくれたのか、今回のお題は学ラン着るまで出れない部屋だった。
前に五つボタンのついた、詰襟の学生服である。
「学ランだって。アズサは着たことある?」
「ない。望は?」
「私もない」
部屋にかかっている学ランを見ると標準のものはもちろん長ランや短ラン、ボンタンもあった。
「色々あるね」
「本当だね。まあ短ランはヤンキーっぽいし長ランは応援団ぽいから普通のでいいかな」
私もアズサに合わせて普通のものを選んだ。Tシャツとパーカーも手に取り着替える。
「濡れた服がすごく冷たい」
「風邪ひかないといいけど」
お互い心配だがさっさと着替えてしまう。
「あ、アズサ前全部止めたんだ」
いつも真面目で制服を楽に着るなんて考えられないアズサらしい、と思った。
「逆に望は止めないんだね」
私はパーカーを着て、前は全てのボタンを開けている。こういうのは楽に着たらいいのだ。
「だって襟が硬くて苦しいんだもの」
「確かに。カラー入ってるから余計にね。そういや望、よく冬服のシャツのボタンを一番上まで止めなくて先生に注意されてたね」
「それも苦しいから!」
「サイズあってないだけじゃないの? 今度みてあげる」
「ほんと! ありがとう」
そう約束して部屋を出た。




