* 棒状のお菓子を両端から食べてキスするまで出れない部屋
「これってアレだよね」
「アレだね。望、声に出しちゃダメよ」
「大丈夫。うん。きっと部屋さんはいろんな選択肢を与えてくれてるんだよ」
棒状のお菓子。細長いもの。美味しいもの。味に偏りのないもの。目の前にあるお菓子の注文窓口とにらめっこ。
「芋けんぴ一袋」
──芋けんぴとは──
芋を棒状に切って油で揚げて砂糖を絡めたもの
高知県が発祥。
注文した。
「どうして芋けんぴ」
「食べてみたかったから」
「ならゲームの前に食べてみようか」
アズサが下の取り出し口から袋を取り出し開封する。思ったより短い。
「ほら、食べてみな」
一口食べてみる。
結構硬い。外側は甘いが中はしっかり芋だった。
砂糖と油による中毒性がひどい。これは一日で一袋たべれるのも納得だ。
「めちゃ美味しいね」
「ほんとそう」
一袋たべ切る前に比較的長いものをくわえる。
そのままアズサの方をじっと見つめる。
「勝負だよ」
アズサの顔がグッと近づく。負けじと芋けんぴをかじろうとして気がついた。
硬すぎる、と。
アズサはわかっていたようだ。
困っている顔を作ろうとしてはいるけれど笑っているのがバレバレだ。
アズサは芋けんぴをかじることなく私にキスしてきた。
ただのバードキスなのに口の中が甘ったるくなった。
唇が離れると共にくわえていた芋けんぴも取られてしまった。
「相変わらず天然極めてるね」
芋けんぴを食べ切ったアズサがいう。
「でも、そういうところも愛してくれるんでしょ?」
「もちろん」




