☆ シャー芯それぞれ一本使い切るまで
「着物歩きにくいね」
「慣れるまではね。慣れるとそうでもないよ」
よいせほいせと歩いていくと椅子があった。ありがたく座らさせてもらう。
「この部屋はそれぞれシャー芯使いきれだって。あ、折っちゃダメらしい。折れないシャーペンとシャー芯用意してくれたんだ」
アズサが部屋さんお疲れ様なんて呑気なことを言っている。
「シャー芯一本でしんどくない?」
「なんとかなるよ」
そういうとアズサはコピー用紙の山に手を伸ばした。
「何書こうか」
アズサの手元を見ていると何かアルファベッドが並んでいる。
「何書いてるの?」
「秘密」
内容も英語の苦手な私には読めない。もっとちゃんと勉強しておけばよかった。
私も少しでも減らすために手を動かし始めた。
「なーにを書いてるの?」
「猫。アズサは黒猫っぽいよね」
「どうして?」
「黒髪だし。カッコイイし」
かいた猫を黒猫ししていく。
「私はトラ猫かな」
もう一つ猫をかき、トラ猫の柄にしていく。
「次は……シマエナガ」
「急だね」
「最近テレビで見たの。めちゃくちゃ可愛い。野生に存在していいレベルの可愛さじゃない」
白くて丸いシマエナガ。
画像がないのでちんちくりんになってしまったが何回もかいているうちにそれらしくなってきた。
他にもイルカ、クジラ、パンダなど動物をかき続けた。
「あがり!」
なんとか全て使い切った。
「お疲れ様」
アズサはいつの間にかき終えていたみたいだ。
「はい、これ。恋文なるものを書いてみた」
「英語で?」
「頑張ってね」
ここを出たら勉強しなければ。




