□ お互いにハンドクリームを塗り合うまで出れない部屋
「今度はどんな部屋?」
「ハンドクリーム塗りあえだってさ」
アズサは机の上に置かれていたチューブを手に取ると中身をしぼり出し、手に馴染ませた。
「ほら、手だして」
「はーい」
私はみぎてを彼女の前に差し出した。
アズサはその手を取ると丁寧にクリームを塗り込んでいく。
「なんだかお母さんみたいだね」
「どこが?」
「優しい手つきで慈しむかのように塗ってるから」
「何それ。意味わからない」
右手から手を離された。怒らせてしまったのだろうか?
「ほら、終わったから反対の手を出して」
そういうわけではないみたいで安心する。
「慈しむようにねぇ。あ、でも可愛い手をしてるとは思うよ」
「私の手が可愛い?」
アズサの言うことの方がよっぽどわからない。
「丸くて柔らかくて可愛い手だよ」
そういって最後に手の甲にキスをされる。
「はいおしまい。次は私の番ね。これがハンドクリームだよ」
キスが恥ずかしかったのかアズサはまくしたてるように話す。なんて可愛いんだ。
「じゃあ右手を出してね」
アズサの手をとる。ハンドクリームを手の甲に出し、ゆっくりと塗り広げていく。
「アズサは私の手を可愛いっていったよね。でも私はアズサの綺麗な手の方が好きだよ」
「私の手のどこが綺麗なの?」
不思議そうに問われた。
「いっぱいあるよ。あ、左手出して」
反対の手も同じように塗っていく。
「肌は白いし骨ばってたり血管が浮き出てたり大人の手って感じがしてすごく綺麗てカッコいいとおもう」
「なかなかそうやって言ってくれる人がいないから嬉しい。ありがとう」
私は返事の代わりに手の甲にキスを落とした。




