97 家族-2
家族-2
土曜日である。
お休みである。
ノンビリ起きれば良いのである。
でも、ゆたか、習慣で目覚ましを掛けなくても、目が覚めてしまいました。
時間を確認すると、いつも起床する時間の少し前です。
勿論、いつもジムに行く”早い時間”ではなく、いつもの”土曜日の時間”です。
ゆっくりと横を見ます。
ナオミを起さない配慮です。
可愛い寝顔のナオミに、キスが出来るかも知れないからです。
しかし、しかし、ナオミがいません。
ゆたか、焦ります。
ゆたかは、ナオミがいないと駄目なのです。
ナオミを愛しているのからなのです。
ナオミだけを愛しているからなのです。
ナオミがいなくなったら、ゆたかは生きていけないのです ・・・ ?
ゆたか、ガバッと飛び起きました。
部屋の扉を開けました。
下からナオミの声がします。
ゆたか、安心しました。
耳を欹てると、聞き慣れない声?がします。
「ワン!」という声と「ニャオ!」という声です。
ゆたか、思い出しました。
保護犬と保護猫をうちに連れてきた事を。
冷たい水で顔を洗います。
両手でほっぺたを叩いて、1階に降りて行きます。
リビングに行くと、ナオミがワンコのタロウとニャンコのクロに、何か教えています。
ナオミが先生で、二匹が生徒です。
ゆたかが見ていても、ワンコのタロウとニャンコのクロは脇目も振りません。
ナオミ先生、”厳しい”様です。
ナオミが教えている内容は、”三浦家のルール”です。
授業?が終わると、二匹の朝食タイムです。
二匹が食べ始めると、ナオミがゆたかに言いました。
「いま、私達の朝ご飯の用意をするからね。」
ゆたか、椅子に座って待っている訳ではありません。
準備してある朝食の材料を盛り付け始めました。
暫くすると、おかあさんが起きてきました。
おかあさん、タロウとクロに指示をします。
「タロウ、クロ! おとうさんを起してきなさい。」
ニャンコのクロ、器用に扉のレバーにぶら下がって、扉を開けました。
開いた扉から、ワンコのタロウが部屋の中に飛び込んでいきます。
「ワン、ワン!」
「ニャン、ニャン!」
二匹の嬉しそうな声がした。
「分かった、分かった!」
おとうさん、頭を掻きながら起きてきました。
何故か、ワンコのタロウを抱っこして、ニャンコのクロは肩に乗っけたままです。
おかあさん。
「ほら、二人とも、おとうさんから下りなさい。」
二匹、残念そうにおとうさんから下りました。
おとうさんが顔を洗って、4人で朝食の開始です。
ゆたかが二匹を見ると、リビングでテレビを見ています。
番組は分からないが、Eテレの様である。
勉強熱心なのかな?
朝食後、リビングでコーヒーを飲みながら打ち合わせ。
ワンコのタロウとニャンコのクロの”お相手”についてである。
まあ、ニャンコのクロはそんなに手間は掛からないが、問題はワンコのタロウである。
タロウの”お散歩”担当である。
おかあさんが、役割を発表します。
”打ち合わせ”ではありますが、実際は”命令”です。
家族の中で、おかあさんに逆らう人はいません。
いや、逆らえる人はいないのです。
「毎日のお散歩担当 ・・・ 」
「朝は、おとうさん!」
「夜はゆたか!」
おとうさん、何か言いたげだが、おかあさんが睨むと、俯きました。
ゆたかは何も言いません。
夕食後の腹ごなしに丁度良いという計算です。
続いておかあさん。
「土曜日と日曜日は、ゆたか!」
「土日も?」と言いたかったが、ナオミが言いました。
「わたしも一緒に行ってあげる!」
もう、ゆたか、文句を言う事はありません。
ナオミと一緒にタロウのお散歩、嬉しさしかなかったのです。
ナオミとゆたか、お散歩バージョンに着替えてきました。
Tシャツにジーンズではありますが ・・・
二人で靴を履きます。
勿論、スニーカーです。
「タロウ、お散歩に行くよ!」
ゆたかが声を掛けると、ワンコのタロウ、カッタルそうにソファーから起き上がります。
タロウ、モタモタと玄関に歩いていきます。
子犬とは思えません。
ダラダラ感は”老犬”です。
玄関に来ると、タロウ、ビシっとしました。
ナオミが腕を組んで睨んでいるからです。
どうやら、ワンコのタロウとニャンコのクロの中には、うちの家族の”序列”が出来ている様です。
順位の1番はおかあさんです。
2番はナオミです。
多分、3番4番は、ワンコのタロウとニャンコのクロです。
5番がおとうさん。
6番目の最後がゆたかだと思われます。
おとうさんとワンコのタロウが、平日の朝に散歩をすれば、ハッキリすると思います。
ハーネスをしたワンコのタロウと近くの川の遊歩道を歩きます。
ナオミがいるので、ワンコのタロウ、大人しいです。
いきなり、ナオミが走り出しました。
ナオミ、足が長いので、走るのが速いのです。
ワンコのタロウ、大ダッシュで追いかけます。
子犬のくせに、バカ力です。
リードを持ったゆたか ・・・ 必死です。
いつものUターン場所のベンチで休憩です。
ワンコのタロウ、ナオミに甘えまくります。
最後に、ナオミの膝枕で寝てしまいました。
結果的に、ゆたかがワンコのタロウを負んぶして帰る事になってしまいました。
家に帰ると、ニャンコのクロがおかあさんに甘えています。
ワンコのタロウをリビングの端に寝かせると、ニャンコのクロも一緒に寝てしまいました。
ナオミ、小さい声で言いました。
「可愛い~~!」
おかあさんも、目を細めて頷いています。
でも、ゆたかはヘトヘトです。
これから先が、思いやられます。
おとうさんは、こうなることを予測していたのでしょう。
でも、おとうさん、おかあさんには敵いませんし、逆らえません。
おとうさん、知らん顔を決め込みます。
暫くして、ワンコのタロウとニャンコのクロがお目覚めです。
何故か、おとうさん、チョット不機嫌です。
ニャンコのクロ、おとうさんの膝の上に乗って甘えます。
モフモフの”スリスリ攻撃”です。
ワンコのタロウもおとうさんの横に”いい子チャン座り”をします。
すかさず、おとうさんの手に”スリスリ攻撃”をします。
モフモフ・ダブルの”スリスリ攻撃”で、おとうさんは撃沈です。
息子のゆたかが、こう思いました。
明日のワンコのタロウとの散歩で、分からせてやる。
日曜日ですが、おとうさんは喜んで、ワンコのタロウの朝散歩に出掛けました。
ゆたかは、おとうさんがヘトヘトで帰ってくると思っていましたが、違いました。
1人と1匹、仲良くご帰還です。
「あれ? おかしいな? 」
思わずゆたかが声を出してしまいました。
でも、おとうさんには聞こえていなかったようです。
ゆたかの疑問に、ナオミが小さい声で答えます。
「ワンコのタロウは、おとうさんを”お年寄り”だと思ったのね ・・・ 」
その反動で、ワンコのタロウはゆたかとの散歩では、大ダッシュがお決まりになりました。
ワンコのタロウとニャンコのクロと一緒の生活に慣れた頃、夜のベッドでナオミが言いました。
「1年経てばワンコのタロウとニャンコのクロも、大きくなって”お手伝い”が出来る様になるわね。」
「そうだね。 犬猫の成長は早いからね。」
「ワンコのタロウもニャンコのクロも、お利口さんだから ・・・ 」
「 ??? ・・・ 」
ゆたかにはナオミの言っている意味が分かりません。
「ねえ! だから ”つくろう”! 」
「つ、つくるって? 」
「もう、 分かってるくせに ・・・ 」
ナオミ、いつになく恥ずかしがっています。
そういう事で、今夜も二人、頑張ります。
ゆたかは、いつも通りに頑張るのです。
手を抜いた事はありません ・・・ ”手” ?
いつも、ゆたかは一生懸命なのです。
でも、いつもとは違います。
ゆたかとナオミ、二人とも同じ事を願っているのです。
魔女の特性として、夫婦が同時に願わないと、妊娠しないのです。
現在は、魔女の”危機管理システム”が魔女に備わっていて、夫以外を排除します。
しかし、システムが備わる前は、魔女は不特定多数の男に襲われる事もありました。
何せ、魔女は”美人”で”スタイルが良い”女性ばかりだったからなのです。
そして、君主や権力のある者が、魔女の意思を無視してヤッテしまう事もあったのです。
結果的に、魔女の方に望まない子供を授かる事もあったのです。
そうして生まれた子供は、大概”出来損ない”でした。
男の子は普通の人間でしたが、女の子は必ず”魔女”になったのです。
大昔にもそんな事が多くあり、魔女は”女の子を一人”しか産めなく変化したのです。
魔女の”出来損ない”は始末に負えないのです。
”サキュバス”なる淫乱な魔女は、そうして生まれた様です。
さて、ベッドの上の二人です。
ゆたかとナオミ、同じ事を願いながら頑張りました。
そして、ゆたかがナオミの中に”愛”を注ぎ込みます。
でも、いつもの”愛のストック”の方には流れて行きません。
二人が願ったこの時だけ開いた”アソコの入り口”から、全てが流れ込んでいきました。
ゆたかとナオミ、強く抱き合います。
ゆたかから注がれたものが、ナオミの全てのDNAに”ゆたか”と書き込んでいきます。
それが終わると、ナオミからゆたかの中に”愛”が大量に逆流します。
ナオミから注がれたものが、ゆたかの全てのDNAに”ナオミ”と書き込んでいきます。
魔女は結婚すると、相手の夫は”魔女の一部”になるのですが、子供をつくると、完全にひとつになるのです。
でも、”見た目”は変わりません。
DNAや、心の中の問題なのです。
こうして、ナオミのお腹の中に、もう一つ”生命”が誕生したのです。
この新しい生命を守る為に現れたのが、ワンコのタロウとニャンコのクロなのです。
ナオミ、お腹の中に新しい生命が出来たことを喜びましたが、一つだけ残念な事がありました。
暫くの間、ナオミは「禁酒」になってしまったからです。




