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駄目(俺+魔女)  作者: モンチャン
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68 その後の後(あと)の4

その後のあとの4



俺はちょっと早く目が覚めた。

ナオミの可愛い寝顔を見たかったのかもしれない。


俺の腕の中に可愛く眠るナオミがいる。

嬉しい。

早く起きた甲斐があった。

ナオミにキスをしてもう一眠り・・・



ウトウトしていると、今日もナオミからのほっぺツンツン。


「お早う。 愛してるよ。」


「私も。 うふっ。 今夜からおうちだね。」


「みんなで帰るのかなあ?」


「ちょっと秘密があるの。」


「なに?」


「な・い・しょ・・・」

そう言うと、ナオミは微笑みながら消えようとした。


消える前にナオミを抱き締めた。

「今日だけだよ消えるのは。 明日からは、明日からは消えないでくれ・・・」

少し涙声になった。


「うん・・・」

ナオミも少し涙声になって、俺の腕の中から消えていった。




涙を拭って考えた・・・内緒???。


スマホを見ると6時前であった。


冷たい水で顔を洗った。



昨日の朝と同じく、フロントに「散歩に行ってくる」と言って、朝っぱらからジムに行った。


今日で最後かと思うと寂しい気持ちもあったが、今日も色々な器具を試した。


昨日より頑張った。

歯を食いしばった。

自分の腕の中から消えていったナオミを、忘れたかったからかも知れなかった。


締めにプロティンドリンクを飲んだ。

同じ物なのに、昨日より塩っぱかった。



最後の日も前日と同じ様に、プラプラ歩いてホテルに戻り、朝食を食べてから出勤。

今日は最後なので、チェックアウト。

忘れ物がないのは確認した。




今日もやっぱり2番目の出勤で、事務のお姉さん、曽根さんがもう来ていた。


「お早うございます。 今日で最後かな?」


「お早うございます。 まだまだ工期があるので、また設計変更等があったら、応援させてもらいます。」


そう俺が言うと、今日もホットコーヒーを出してくれた。



今日も現場で用意してくれたパソコンを立ち上げ、本社のサーバにアクセスしながらコーヒーをいただく。



やっとと言って良いのか、今日の午後には設計応援作業が終了する予定である。

午後3時過ぎに作業を終了させ、午後5時前には新千歳空港に到着し、土産を見繕って軽い夕食を食べてから羽田に向かう予定である。


本社総務に頼んでおいた航空機のチケットは、札幌に来る時と同じくオヤジと隣り合わせの座席である。


そう言えば、オフクロとナオミも札幌に来ると言っていたが、帰りの飛行機チケットはどうしたのかな?




そんな事を思っていると、みんなが集まりだした。





今日も、外で大きな声の挨拶が聞こえた。

オヤジが現場に到着したようだ。


今日の午前中は、残った部分の仕上げとチェック。



昨日と同じ様に昼飯は現場で頼んでいる仕出し弁当屋さんのお弁当を食べる。

これが最後だが、来週からはナオミ手作り弁当に代わる・・・楽しみである。



午後は、午前中に仕上げた部分の説明である。






一方、今日のナオミと母親・・・


ナオミが戻ってきたら、母親はお風呂へ行く準備をしていた。

「ナオミ、おはよう! ゆたか、今日も元気だった?」


「・・・ うん。 おはよう。 ・・・」


「どうしたの? 涙なんか流して・・・」


「ゆ、ゆたかさんが消えるのは今日までにして欲しいって。 明日からは消えないでって。」


「・・・・・・ ゆたかはナオミが大好きだから、目の前で消えていくのは辛いんだね。」

そう言って、おかあさんはナオミを抱き締めた。


おかあさん、ナオミの頭を撫でると耳元で囁いた。

「今日は、東京にゆたかと二人で帰りなさい。」


「え?」


「ナオミの魔力なら、ゆたかと一緒にどこへでも行ける筈よ。」


「おかあさんの飛行機のチケットはどうするんですか?」


「今日、ゆたかのところに行って、ゆたかのチケットを私のに変えれば良いのよ。」


「?・・・ あ、分かりました。」


「じゃあ、お風呂に行こう!」


「は~い!」



元気になったナオミとおかあさんは最上階のお風呂に出発。


二人で湯船に浸かる。

思いっ切り手足を伸す。


「この景色も、今日が最後なのね。」


「何言ってんの。 また来れば良いのよ。」


ノ~ンビリ温泉に浸かり、函館山を眺めた。



部屋に戻って、朝食会場へ。

大人気の朝食で、質も量も凄い。


周りの人に負けじとお皿の上に料理をのせていく。


夕食と変わらないくらいの料理を二人とも平らげた。



流石に食べ過ぎたが、部屋に戻って休む間もなく、東京に帰るのでお片付け。


帰る支度をして、大きい鞄やお土産は一つに纏めて、ナオミが指を鳴らすと消えていった。


誰もいない東京の家の居間に荷物が現れた。



「9時の札幌行き特急北斗だから、もうひとっ風呂行こうか?」

おかあさんの提案で最上階の温泉へ。


函館山が綺麗に見えた。


部屋に戻って、二人ともパンツスーツに着替えて、鞄一つでチェックアウト。



二人で楽しく話をしながら、朝市を眺めて函館駅へ。




「あ! おかあさん、もう列車来てるよ。」


「札幌が終点だから気が楽ね。」


進行方向右側の席に二人で座る。


列車の中での車内販売がなくなったので、乗り込む前に色々買い込んだ。

コーヒーやお菓子類よりも、ビールや缶酎ハイそれに酒の肴の方が多かった。


特急北斗5号、9時出発である。

札幌到着は12時49分、早めに飲んでその後コーヒーとかを飲めば何とかなると言う、酒飲みの安易な考えである。


そういう事で、二人は出発して直ぐに缶ビールで乾杯。

二人でスルメをくわえた。


買ったつまみが美味しかったのか、二人ともお酒が進む。

酒を止めるつもりの時間が、10時までが11時になり12時になった。


「おかあさん、もう12時よ。 後50分くらいしかないから、お酒止めないと。」


「あら、もうそんな時間? 仕方がないわね~。」

そう言っておかあさんは、間違えて買ってしまった大きい500mlの缶酎ハイを飲みきった。



物凄い量の空き缶(殆どアルコール飲料)になってしまった。


ちょっと歳はいっているが美人であるおかあさんとモデル顔負けの娘の二人だったが、あまりの豪快な飲みっぷりに、誰も声を掛けられなかった。



「おかあさん、 お酒の匂い、消えるかしら?」


「大丈夫よ。 いざとなったら、息しなきゃ良いんだから・・・」


「おかあさん、 あったま良い~!」




12時過ぎから札幌到着まで、アルコール飲料は止めて、というより、特急に乗り込む前に買い込んだアルコール飲料は全て飲み干していたが、ブラックコーヒーを飲んでいた。



特急を降りる前に空き缶を潰して見た目の量を減らし、駅のホームにある空き缶入れに入れたが、あまりの量に空き缶入れはイッパイになった。




1時間ほどアルコールを抜いたが、それまでの約3時間、飲むだけではなくツマミも沢山食べていたので、二人ともお腹は空いていなかった。


折角札幌駅に来たのだから、JRタワーの展望室のカフェでケーキセットを頼んだ。


「おかあさん、 昼間でもこんなに景色が良いんだから、夜はもっと綺麗でしょうね。」


「そうね。 この下のフロア、ホテルなんだって。」


「わ~、 高さも高いけど、料金も高そう。」


「他のホテルに泊まって、その分お酒を飲んだ方が良いわよね。」


「流石おかあさん。 今度来る時はそうしたいね。」



気が付くと、二人の前には樽生とソーセージのオードブルとスモークサーモンのオードブルが並んでいた。


何の躊躇もなく、二人はビールで乾杯しオードブルを堪能した。



「ねえ、おかあさん。 今日はどうするの?」


「おとうさんから連絡があったら、ちょっと現場に挨拶に行って、その後適当に食事して帰るだけよ。」


「へ~、 おとうさんが所長さんをやってた現場なんだ。 ゆたかさんもいるんだよね?」


「そうよ。 大きい現場だから事務所も分かれていて、挨拶するだけでも大変よ。」


「おとうさん、何時くらいに来るんですか?」


「私達が迎えに行くのよ。 18時の飛行機だから15時30分に札幌駅として、そろそろ迎えに行こうか? 」


「は~い!」



札幌駅から歩いてもそんなに遠くない好立地の現場である。



現場事務所入り口のゲートで、ガードマンにおとうさんを呼んでもらう。


直ぐにおとうさんの部下だった人が迎えに来てくれた。



「足元が危ないので、お気を付けください。」


「ええ、 ありがとう。」

おかあさんが優雅に答えた。

おかあさん、以前にも来たことがあるので、慣れた感じで悠然と進む。



来る時はトレッキングシューズを履いていたが、二人ともいま着ているパンツスーツに着替えた時、ちょっとヒールの高い靴に履き替えていた。



所長などの現場のお偉いさん方の事務室に案内された。


おとうさん、偉そうに座っていた。



「あ、奥様、 お久しぶりです。」

おとうさんの後を引き継いだ、今の所長さんが挨拶してくれた。


「三浦役員のお嬢様ですか。 初めまして。 所長の高橋です。」


「初めまして。 父がお世話になっております。」


「いえ、いえ、とんでもない。 三浦役員には、今回も現場をチェックしていただいて、有り難い限りです。」


ナオミは優雅に微笑んだが、こう思った。

「おとうさんってチャンと仕事してて偉いんだ・・・」

ナオミ、呑兵衛でムスメ大好きなオヤジとしか思っていなかった・・・



おかあさんはこの事務所に何度も来た事があるらしく、優雅にソファで寛いでいた。

「ナオミ、 座りなさい。」


「失礼します。」

ナオミ、おかあさんの様には堂々とは出来ず、可愛らしく座った。


事務室にいるオジサン達、微笑んでいるナオミと一緒に喋りたいが、おかあさんが隣にいるので為す術はない。



おとうさんがオジサン達と打ち合わせをして、次回の現場チェック時期が決まった様だった。



「じゃあ、それぞれの事務室に挨拶して帰ろうか。」

おとうさんの一言で、おかあさんとナオミ、ソファから立ち上がった。



帰り際、オジサン達から声が掛かった。

「是非、次回も役員とご一緒にいらしてください。」


おかあさんとナオミ、微笑みながらお偉いさん達の事務室を後にした。



作業ごとに分かれた事務室に、おとうさんが挨拶して回る。


おとうさんが扉を開けても、その後におかあさんが挨拶しても静かなものだが、ナオミが挨拶すると「お~~~!」と歓声が上がって拍手が巻き起こった。

ナオミ、担当する部門ごとに挨拶を変えるが、基本は「安全第一でお願いしますね!」が殆ど。


挨拶された方は、皆、「は~い!」と元気が良い。

おとうさん、本気でナオミを安全担当にしようかと考えた。


事務所の外にいても、ナオミがどこの事務室にいるのか直ぐに分かる程だった。



いつ用意したのか分からないが、抜け目なく?、東京の有名菓子店の手土産を女性の事務員にもご挨拶として渡していた。



最後にゆたかがいる図面担当の事務室に、おとうさん達が現れた。

北海道に来るときには絶対に用意していなかった、バッチリ決まったパンツスーツの母娘がオヤジの後ろに立っていた。



他の事務室と同じく、何故か拍手が起き、 同じ様に盛り上がった。


他と違ったのは、入り口で挨拶するだけではなかった。

挨拶が終わると、ナオミはスリッパに履き替えて俺のところに来た。


事務室内を汚さないように、中に入る時はスリッパに履き替える。


ナオミ、靴を脱いでも足の長さが目立つ。

ミニのスーツだったら大騒ぎだったかも知れない。



男共の羨望の眼差しを感じたが、いつもの事である。



帰る準備が終わった俺の横にナオミが立った。

「ねえ、飛行機のチケット持ってる?」


「ああ、そこの鞄に入ってるよ。」


ナオミは直ぐにチケットを取り出した。

「これ、おかあさんのに変えるから。」

そうナオミが言ってチケットを一振りすると、俺の名前がオフクロの名前に変わっていた。


「俺のチケットは?」


ナオミが耳元で囁いた。

「ユタちゃんは、私と一緒に帰るの。」


「え? この後どうすれば良いの?」


「私があなたを探し出してあげる。」

そうナオミが言うと、事務担当のお姉さんに声を掛けて、男共にも一声掛けていなくなった。

「曽根さん、おねえさんが宜しくって言ってました。 じゃあ、皆さん! 現場に入る時は「安全第一」ですよ。」


「は~~い!」

男共の元気な声を終わると同時に事務所の扉が閉まった。


「はあ~~~ 」

と言う、男共のため息が聞こえる様だった。



飛行機に乗るなら、俺もサッサと帰らなければいけない時間だった。

鞄に、結果的に使わなかったパソコンが入っているのを確認し、帰り支度が終了した。



いきなり、曽根さんが話し出した。

「みなさ~ん、今帰ったナオミさんを知っていますか?」


「は~い! 社内報で見ました。」

JVの現場で、俺の務めている会社以外の人も、うちの会社の社内報を見た様だった。


「社内報に出ていたけど、三浦役員の娘さんだよね。」

俺の隣の先輩社員が答えた。


「ちょっと、違うのよね。」


「え? でも、さっき役員も自分の娘さんだって言ってたじゃない?」


「三浦君、本当の事、言っちゃっても良い?」


「え? 別に構いませんけど・・・」

嫌な予感がしたので、帰り支度を済ませて、スリッパから靴に履き替え、逃げる準備は整った。


「ナオミさんはね、この三浦君の奥さんなの。」


一瞬の間があったが、男性所員全員の絶叫が起きた。

「え”~~~~~~~~・・・」

事務所全体が揺れているようだった。


「な、な、何で? 」

先輩社員の発した言葉は、失礼な発言ではあるが、俺としては初めての言われ方ではなかった。


曽根さん、更に追い打ちを掛けた。

「三浦君のお姉さん、あたしの同期の総務の山口さんに聞いたんだけど・・・ ナオミさんは押しかけ女房なんだって。」


「皆さん、東京に帰ります。 失礼します。」

危険を感じたので、挨拶もそこそこに事務所を後にした。



もう、オヤジ達は現場から帰っていった後の様だった。



道を歩きながら思った。

「もう、この現場の応援依頼は、俺には来ないのかな・・・」



ブラブラと札幌駅の近くに来ると、隣にナオミが現れた。


「その鞄、パソコンが入っているの? 重そう。」

そうナオミが言うと、俺から鞄を受け取った。


「パソコン以外は何が入っているの?」


「殆ど、洗濯物。」


「お財布とか貴重品は?」


「こっちの鞄。」


「じゃあ、これ、東京に送っちゃおう。」


ナオミが柱の陰で指を鳴らすと、鞄はどこにも見えなくなっていた。


「ねえ、夕ご飯、何食べる?」


「札幌に来て食べてないのは、ジンギスカンと・・・」


「ジンギスカンと?」


「スープカレー。」


「うふ。 じゃあ、今夜はスープカレーね?」


「うん。」


ナオミに手を繋がれ、駅近くのスープカレー屋さんに行った。


お店お勧めカレーを注文した。


「ナオミ・・・」


「なあに?」

振り向いた顔は、いつものように可愛かった。


「ビールもあるよ。」


「おかあさんと沢山飲んじゃったから、札幌ではオシマイ!」


二人で仲良くスープカレーを食べて、満足してお店を出た。


「美味しかったね。」


「さあ、帰ろう。」

ナオミに引っ張られる様に進む。



人通りが少ない場所でナオミが指を鳴らした。

周りの景色が白くぼやけた。


ナオミは俺を抱き締めると、俺の唇に唇を重ねた。


白くぼやけた景色が光り輝いた。


1回瞬きをしたら、二人で東京の家の玄関の中に立っていた。


「うふふ、 大成功!」


「ナオミ、こんな魔法も使えるの?」


「愛してるあなたと一緒なら、どこへでも行けるの。」


今度は俺がナオミを抱き締めてキスをした。

ちょっとカレーの味はしたが、大好きな大好きな、ナオミの味だった。



玄関の奥の方を見ると、パソコンの入った俺の鞄と、オヤジやオフクロの大きな鞄も置いてあった。



ナオミが言った。

「さあ、おかあさん達を迎えに行こう。」

ナオミの手には、車の鍵が光っていた。



部屋の常夜灯と門の灯りを点け、車を車庫から出して出発。

運転手はナオミ。

運転する前に「ワイパーパタパタ」をして、左手中指をウィンカーのレバーの上に置いていた。



首都高速中央環状線を走る。


「これが出来てから、羽田に行くのが楽になったね。」


「でも、レインボウブリッジが見えないのは残念よね。」


「トンネルだらけだから仕方がないね。」


そう言っている間に湾岸線と合流。


「ナオミのあの魔法なら、旅行に行くの安く済むね。」


「駄~目。 旅行って、途中の移動も楽しいんだから。」


「そうだね。 ナオミと一緒にいる時間が長いと幸せだもんな。」


「本当? じゃあ何で飛行機に乗ると直ぐ寝ちゃうの?」


「・・・・・・」


「ほら、答えてごらん!」



いつになくナオミが厳しい・・・何とかしなくては・・・



「ナオミが隣にいて幸せだからだよ。」


「もう・・・ 口ばっかり上手いんだから・・・」

そう言ってナオミは、少し満足した様にアクセルをふかし、羽田空港ターミナルへの坂を登った。



「私、このエンジン音、大好き。」

走り屋のナオミが登場した。


「やっぱり、うちの車、良いな~。」


「北海道で乗った車は?」


「1000ccくらいのファミリーカーだもん。 坂道でアクセル、思いっ切り踏んでも、エンジン音ばっかり・・・走らないのね。」

ちょっと、不満タラタラの様だった。



駐車場に車を止めて、エレベータではなく階段でターミナルへの渡り廊下に行く。


途中の階段の踊り場で、ナオミが立ち止まった。

「ゆたか、 足りなくなっちゃった。」


「え? 何が?」


「抱き締めて。」


ナオミを抱き締め、唇を重ねた。

車に乗ってからガムを噛んだので、もう、ナオミの味しかしなかった。

暫く二人は動かなかったが、階段を使う人が少ないので、周りには誰もいなかった。



「うふふ、 補充完了。」


「減っちゃったの?」


「愛がね。 二人で移動するのに愛がタップリ必要なの。」


「ほ、他の人とは一緒に移動出来るの?」


「愛している人とだけ。 だから私はゆたかとだけ。 これからもず~っと。」


「あ、ありがとう。」


「何言ってんの? 私はゆたかのものよ。」

ナオミがそう言うと、繋いだ手を引っ張られて渡り廊下を走った。



本当は俺も言いたかった。

「俺は、・・・俺の心はとっくにナオミのものだ。」

あの時、・・・お互いが大人になって会った、あの夜から・・・




到着ロビーで掲示板を見ると、オヤジ達が乗った飛行機は、もうすぐ到着予定だった。


到着しても、ロビーまで結構距離が離れているので、時間が掛かる。

近くの売店でドリップコーヒーを購入した。



コーヒーを飲みながら二人でお話をした。


「さっき、強く言ってご免ね。」


「え?・・・」


「ほら、飛行機に乗ると直ぐ寝ちゃうって言った時・・・」


「ナオミも一緒に寝ちゃえば ・・・ いや、駄目だ。ナオミは寝ちゃいけない。」


「何で?」

ナオミは可愛く小首をかしげた。


「ほら、それ。 ナオミは何やっても可愛いんだから。 特に寝顔は絶対駄目! 」


「ふふふ・・・じゃあ、一緒に起きてお話するんだよ。」


「う・・・うん。 努力してみる。」



コーヒーを飲みながらそんな話をして、オヤジ達を待った。


オヤジ達の荷物はショルダーバッグだけなので、早く出てくる筈である。



コーヒーを飲み終わる頃にオヤジ達が見えた。


俺達が見えたのか、笑いながら手を振っている。



ナオミが空になったコーヒーの紙コップを俺に渡すと、オヤジとオフクロに向かって走って行った。


ナオミ、ゲートを出て来たオヤジとオフクロの間に突進していった、 まるで子供が両親の真ん中に突っ込んで行く様に・・・


「おとうさん、おかあさん! お帰り~!」


海外便から帰ってきた光景の様だった。



4人が一緒になると、おかあさんがおとうさんに言った。

「おとうさん! 嬉しかったでしょう?」


「あ? ああ・・・」


スケベったらしい顔をしたオヤジかと思ったら、本当に恥ずかしくて顔を真っ赤にしたオヤジがいた。



「さあ、車で来てるから、みんなで帰ろう!」

ナオミが真ん中でオヤジとオフクロの手を掴んで歩き出した。


後ろから見ると、俺から見ても仲の良い親子に見えた。



帰りもナオミが運転手。

「さあ、 ガンガン走ってくよ!」


ガンガン走った所為か、道が混んでいなかった所為か、本当に早く家に着いた。



家に帰って、代わる代わるシャワーを浴びた。


リビングの椅子に座って、一安心?

みんなで同じ様な事を言った。

「やっぱり、おうちが一番だね。」



オフクロ、どこから出したのか、北海道のご当地ビールを並べた。

ツマミにスモークサーモンやチーズも用意されていた。


ビールのグラスは4つ用意されていた。


「俺、ビールは・・・」


と、俺が言うと、オフクロが言った。

「おとうさんがナオミに抱きつかれて、嬉しかった記念の日!」


「お、おい、かあさん! そうじゃなくて、 ゆたか、お前向こうで評判良かったぞ。 それの記念だ! 飲め!」


そう言う訳で、4人で乾杯。

俺は酒には弱いが、美味さは分かる。

ビールの苦み、久し振りに美味かった。


北海道での話で盛り上がった。


気が付くと俺も、2杯目のビールを空けていた。



例によって、おかあさんの号令で、みんなで歯磨き。


ナオミが言った。

「後片付けは私がやるから、みんな寝てくださ~い!」




ナオミと俺以外、部屋に戻った。

二人で後片付け。 

オヤジやオフクロが戻ってくる前の、ナオミと二人だけの頃を思い出した。



片付けが終わると、ナオミは明日の用意をするからと、俺だけ部屋に戻ってきた。




オヤジとオフクロ、いつもは別々に寝たりするが、今夜は一緒。

「おとうさん、 ナオミに抱きつかれて嬉しかったでしょう?」


「い、いや、 そんな事はないよ。」


「本当? ナオミのオッパイ、大きくてバインバインだったでしょう?」


「いや~、 かあさんの方が大きくてバインバインだよ。 俺はかあさんが世界で一番好きなんだから。」


「もう、おとうさんったら・・・」


おとうさんとおかあさん、仲良しである・・・




その頃ナオミは朝食の用意をしてから、みんなの鞄から洗濯物を取り出した。


洗濯物の仕分けをして、先に洗う物を洗濯機に放り込み、予約をして、ゆたかの待つ2階の部屋に。



ナオミ、電気を消すとゆたかの隣に滑り込んだ。

「ゆたか。 飲んじゃったから、もう寝てるかな?」


「・・・ ナオミ、 愛してるよ ・・・」

寝言だった。


「うふ・・・」

ゆたかの寝顔が可愛かった。

ナオミは愛おしくて仕方がなかった。


ナオミは微笑んで、Tシャツを持ち上げ、胸をゆたかに押し当てた。


ゆたか、反射的にナオミの乳首を口に含んだ。


「もう、ゆたかったら・・・」

そう言って、思い切り胸をゆたかに押しつけた。



ゆたか、夢を見ていた。

大きなナオミのオッパイに潰されそうになる夢を・・・



ナオミはゆたかを抱き締めると、愛おしいゆたかの愛に包まれて眠ってしまった。


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