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駄目(俺+魔女)  作者: モンチャン
62/168

62 お祝い-2

お祝い-2



ナオミの家に美智子が遊びに来ている。

ナオミ達の部屋である。

夫の会社で開催される、昇進祝いのパーティ出席の打ち合わせである。


美智子自慢のクッキーでコーヒーを飲んでいる。

クッキーの種類は、プレーン、ナッツ、ドライフルーツとチョコチップの4種類。

お土産にナオミの母親にも沢山作ってきた。


「うーん、ミッちゃん、どれも美味しい。 そうだ、カフェの近くにジムがあるじゃない。 そこに行く人用にプロテインタップリってのはどう?」


「あ~! それ、狙い目ね。 テイクアウト出来れば、売れそう。」



「そう言えばさ。 私達の後輩の恵理ちゃん、 カフェに来る度に、みんなから「可愛い」って言われてるよね。」


「それがどうしたの?」


「実際に可愛いんだけど、結構身長もあるわよね。」


「あの子、165cm位かな?」


「私達より10cm位低いじゃない?」


「うん。」


「背の高い女って、可愛くないのかな?」


「お兄ちゃん、そんなこと言ったの?」


「ううん。 ナオミは世界で一番可愛いって言ってくれるよ。」


「う、うちのつよし君だって、美智子が一番可愛いって、言ってくれるもん。」


「お互い、良かったね。 素敵な旦那様で。」


「うん。」


「ミッちゃんと私って、同じくらいの身長だよね。」


「うん。 一緒だよ。 ひゃくろくじゅう・・・」


「ミッちゃん、 さば読み過ぎ。」


「170cm位かな? 近頃また背が伸びたみたいだけど・・・」


「そ、そうよね。170cmよね。」



ナオミの母親の声がした。

「二人とも、部屋にいるの? ちょっとそっち行くわよ。」


現れた母親が言った。

「ドレスの確認で身長、測るわよ。 ほら、二人とも柱のところに立って!」


「はい。 二人とも175.5cmね。  当日はヒールの高い靴、用意したから。」


ナオミと美智子、気まずそうに顔を見合わせた。



美智子が言った。

「おば様も測りましょうよ。」


「大丈夫よ。 もう縮んじゃったから、私は162cmよ・・・」


おば様、二人に無理矢理測られた。

「はい。 168.5cm。」


「おば様、結構、背高い。」


「あ、あなた達ほどじゃあないわよ。」


「お姉さんも結構背が高いわよね。」

ナオミがゆたかの姉のことを言った。


「そうね。 あの子、ヨーコもナオミも美智子も、みんな背が高いけど、みんな可愛い私の娘達よ。」

「背が高いからって、猫背になったりしないで、背筋伸しなさいよ。」



そう言って、チョットため息をつきながら母親は階段を降りていった。



二人揃って背筋を伸してから言った。

「身長はもういいや。 ふん。 もう開き直っちゃおう。」




二人して開き直って、クッキーを食べていると、パソコンにメールか何かの届いた音がした。




自宅で使うパソコンは、デスクトップである。


クラウドは使わない。

データの管理を自分でしたい、他人任せにしたくないからである。

そういう考えなのである。

夫のデータはともかく、ナオミのデータは外部に漏れたら大変である。

まあ、データが漏れる事など、ありよう筈はないのだが・・・



夫婦揃って、普段の移動時はノートパソコンを使っている。

いささか大きくなるが、キーボードにテンキーが付いたタイプで、結果、デイスプレイが大きいのでお気に入りである。


大き過ぎると言う人もいるが、テンキー部分が無くても重量はそれ程変わる訳では無い。

もう少し小さい方が良いのであれば、タブレットで代用できる。


便利なようで、選択肢が沢山有り過ぎて大変なときもある。




ナオミと美智子がパソコンの画面を覗いてみた。


何やら怪しいメールが届いていた。

ナオミが迷惑メールと判断して削除しようとした。


削除しようとすると、勝手に動画が映し出された。


まだ、URL等にはカーソルを近づけてもいなかった。


パソコンの音声は消してあった。



怪しいお姉さんとお兄さんが映っていた。



「迷惑メールを消そうとしたら、消えずに何か変なのが映ってる~!」

ナオミ、美智子、二人で叫んでしまった。


しかし、二人とも、興味深げに画面に見入ってしまった。

「ふ~ん。」



お兄さんはお姉さんの服を脱がしにかかった。

シチュエーションとしては、お兄さんが無理矢理お姉さんの服を脱がすパターンである。


結構、不器用なお兄さんで、殆どお姉さんが自分で脱いでいた。



裸にしたお姉さんの○○に、お兄さんが指を数本入れたり出したりしていた。

お兄さんの指の動きは次第に速くなった。


「あんなに激しく指を出し入れしたら、壊れちゃうんじゃない?」


「でも、最初に指の先、何かで濡れてたみたい。」


「そうか、 ローションみたいなの塗ってるんだ・・・」



画面は変わって、ベッドの上にお兄さんが横になっていた。


襲われているはずのお姉さんが、お兄さんのものを掴んで、舐めたりしごいたりしていた。


ムクムクっと大きくなったものをお姉さんがオッパイで挟んでしごきだした。

お姉さん、オッパイは大きいが、少し垂れ気味である。



そのまま続くのかと思ったら、お姉さんがお兄さんに跨がった。

大きくなったお兄さんのものを掴んでお姉さんの○○に突っ込んだ。



最初にお兄さんが指を出し入れしておいたお蔭か、スンナリと入っていった。



お姉さんが上下運動をしていると、たまにお兄さんが腰を突き上げた。

動きは、完全にお姉さん主体である。


垂れ気味にお姉さんのオッパイ、物凄い早さで上下した。



いきなり画面は変わり、全裸のお姉さんが壁に両手をついて、腰を後ろに突き出していた。

お姉さんの○○、丸見えである。


お兄さんは、一生懸命お姉さんの○○に自分の大きくなったものを入れようとしたが、なかなかスンナリとは入らなかった。

何とかお兄さんのものが入ると、お兄さん、頑張って入れたり出したりしていた。



二人は、エロ動画のあまりの展開に、削除云々よりも、見とれてしまった。



直ぐに画面は変わり、お姉さんがベッドの上で四つん這いになり、お兄さんが後ろから出し入れをしていた。


画面は、出し入れするところがよく見えるように、お姉さんは身体を斜めにしていた。

それでもよく見えないと思ったのか、お姉さん、片足をあげた。


襲う役のお兄さんより、襲われる役のお姉さんの方がベテランらしかった。



暫くすると、また画面が変わり、お姉さんはベッドの上に仰向けになり、相変わらずお兄さんは出し入れを繰り返していた。



スピーカーの音声をミュートから少し上げてみた。

お姉さんの喘ぐ声がした。


「嘘っぽいわね?」


「うん。」


そんなお姉さんの声だった。



少しするとお姉さんが下半身を震わせた。

ちょっとわざとらしさは拭えなかった。


お兄さんはそれに合わせるように、出し入れを止めた。


お兄さんがお姉さんの○○から自分のものを抜くと、何やら白っぽい液体が流れ出ていた。



「ちょっと、色が変じゃない?」


「小麦粉を水で溶いたヤツみたいな、ヨーグルトの薄いヤツみたいな感じだよね。」


「まあ、本物だと、ピルとか飲んでいても100%出来ないって訳じゃないって、この前カフェのオーナーが言ってた。」


「プロのお兄さんの方も、自由自在に出せるもんじゃないわよね。」




そんな事を言っている間に画面は消えてしまった。



ナオミ。

「どうする? もう一回見る?」


美智子。

「わざとらしいし、イマイチだったから、要らない!」


そういう事で、メールは削除されてしまった。




美智子。

「見ただろうって、お金を要求するメールとか、来るんじゃない?」


ナオミ、笑いながら言った。

「この前、そんなメールが来たけど、相手のパソコンとか全部、ぶっ壊すウィルスを返信で送っちゃった。」

「魔女システムを使うと、相手の住所なんか直ぐ分かっちゃうのよ。」


「でも、この前は強烈なヤツを送っちゃって、家まで丸焦げにしちゃった。 あはははは・・・」


美智子。

「お姉ちゃん、手加減しないもんね。 あはははは・・・」


恐ろしい二人である。

まあ、魔女や鬼女に悪さをしたのだから、被害が少なかった方であろう。



「でも、なかなか大変な仕事だね?」


「あんな事ばっかりやってると、感じなくなっちゃうんじゃない?」


結構エロバカな二人の感想である。




ナオミ。

「つよし君も、頑張ってくれてる?」


美智子。

「いやだ、お姉ちゃん。 当り前じゃない。 お姉ちゃんとこは?」


ナオミ。

「うちもよ。 うふふふふ・・・」



二人とも何を思いだしたのか、顔が赤くなった。



美智子のアラームが鳴った。

「あ~! お買い物行かなくちゃ。 じゃあ、お姉ちゃん、あたし帰るけど・・・今夜頑張ろうね。」


ナオミ。

「う、うん。」


ナオミは美智子を玄関まで送っていった。



美智子が玄関に立っていると、ナオミの母親が声を掛けた。

「ミッちゃん。 もう帰るの? 妹に宜しくね。 あら、顔、赤いわよ。」


美智子、すかさず。

「ちょ、ちょっとお姉ちゃんとスクワットしたの。」


ナオミ。

「そ、そうなの。 ドレスに合うように痩せようと思って。 ねえ、ミッちゃん。」


「はい。 頑張ってます。 お邪魔しました。」

そう言って、美智子は手を振りながら消えていった。



ナオミの母親。

「娘達だけ格好良くなったらマズいわね。 夕食後、走ろうかしら・・・」



後日、美智子の、つよしの母親から連絡があった。

「お姉ちゃん、走ってるんだって? 私も走ることにしたわよ。 でも・・・走った後のビール、美味しいわよね。」


痩せるのが目的か、美味しいビールを飲むのが目的か?  多分、後者が正解かな?




そんなこんなで、昇進祝いのパーティの日が近付いた。

本当は金曜日の夕方からの予定だったが、会場側からの要望で、土曜日の午後となった。


日程が決定してから3週間以上はあったが、土曜日はノンビリしたいと思っていた俺としてはガックリ。

やっぱり欠席したかったと思っていたが、うちの家族は俺以外、やる気満々!

特に女性陣が・・・姉貴もパーティに出席する様で、休みの日は姉貴も家に来て大盛り上がり。


居間で、姉貴の義理の旦那と、静かにコーヒーを飲む。

「女性陣、やる気満々だね。」


「ああ、俺が課長になったときは出席出来なかったから、うちの奥さん、盛り上がっているよ。」


「兄さんも、昇格したんだよね?」


「昔なら、副部長かな。 今は次席とかいうらしいけど。」


「兄さんの名刺、部長ってなってたよ。」


「次席って何だって言った人がいて、分かり易く部長にしちゃったらしいんだよね。」

「名刺だけの部長だけどね・・・」


「兄さんはラインなの?」


「いや、スタッフだよ。 うちの会社の規模でライン部長は仕事が半端ないよ。」


「昔ははんこ押し、今は電子決済でパソコンとニラメッコだもんね。」



「今日は、美智子も来てるから大騒ぎだね。」


「つよし君は来てないの?」


「今日は土曜日だけど出勤なんだって。 頑張るよね、あいつも。」


「は~!」

何故か兄貴と俺とでため息をついた。





平日、仕事が終わって、うちに帰ってくる。

夕食の準備はいつも通り。

ただ、オフクロとナオミは晩酌をしない。


オヤジだけがチビチビと飲んでいる。


オフクロとナオミ、食事が終わると片付けもせずに、ジャージに着替えた。

「じゃあ、行ってくるから。」

そう言ってランニング用のシューズを履いて、出掛けていった。


オヤジ。

「おい、ゆたか。 こっちに来て話でもしようぜ。」


久し振りに、オヤジと面と向かって話をする。

男同士の話題は仕事中心である。


思わず、つよしだったら釣りの話なのにな・・・と残念に思った。



オヤジとの話は直ぐに終わるので、食器の片付けをしておいた。



1時間もしないで、オフクロとナオミが帰ってきた。


俺。

「結構早いんだね?」


ナオミ。

「お母さんと昼にジムに行って走ってるもん。」


女性陣、痩せる気満々である。

と思ったら、オヤジの前に二人で座って、ビールで乾杯。


なんだ、ビール飲みたさに走っていたのか・・・


会社でつよしに聞いたら、美智子と叔母さんも同じ事をしている様だった。






そんなこんなで、パーティーの開催日となった。

予定の金曜日であれば夕方からの開催であったが、土曜日なので11時から開催である。

有り難いことに月曜日は祭日で、正直ホッとした。



ホテルのロビーで待ち合わせである。

9時30分には到着した。


オフクロに言った。

「1時間以上もあるよ。」


「足りないくらいよ。 お前達もつよし達も結婚式してないだろう。 今日はドレスアップして写真を撮るんだから。」


「俺もつよしも普段着だよ。」


「二人とも背広だから十分だよ。 男はお・ま・け!」


そう、オフクロが言うと、叔母さんと二人で、ナオミと美智子は連れていかれた。



ロビーで男4人が手持ち無沙汰に座っていると、ホテルの人から呼ばれた。


4人が向かった先は、写真スタジオであった。


もう、ナオミや美智子の単独の写真は撮り終わっていた。


まず、俺とナオミ。

ナオミのヒールが高いので、俺の方が背が低く見える。


写真スタジオの人がナオミ用の椅子を用意するが、俺はナオミの方が背が高く見えても平気だと言ったら、ナオミが立ったものと座ったものの2ショット撮る事になった。


次につよしと美智子。

つよしの方が俺より背が高く、美智子と二人で立っていても問題無いのだが、折角なので2ショットとなった。



オフクロと叔母さんがハンカチで目頭を押さえていた。


「ナオミと美智子のご両親にも写真を送ろう。」

そう言う事になった。



呼ばれてじっくりとナオミや美智子をよく見なかった俺とつよしは、写真撮影後にお互いの奥さんを見た。


思わず後退りしそうな程、二人は綺麗だった。

二人ともいつも綺麗なのだが、俺達のオフクロ達が腕に縒りを掛けた化粧は、呆れるほど物凄かった。


ナオミは薄いブルー、美智子は薄いピンクのドレスで、アイシャドウなどの色合いは、ドレスに合わせたものになっていた。



みんなでロビーに行って、大きい革のソファーに腰掛けた。


俺やつよしがナオミや美智子の隣にいなかったら、声を掛けそうな奴らばかりが、二人の周りを彷徨いていた。


俺がつよしに言った。

「もし、俺がいまここに来たとしたら、ナオミだと分からなかったかも知れないな。」


つよし。

「うん。俺もそう思う。 もう、美智子が女神に見える。」


ナオミと美智子、緊張しているのか余裕なのか、静かに微笑むだけである。



会社の総務の若手が走り回っている。

俺のオヤジと叔父さんを見つけて、何やら耳打ちをしている。


オヤジと叔父さんが立ち上がって、続いてオフクロ達、そしてナオミと美智子が立ち上がる。


俺とつよしも行こうとしたら、総務の若手から言われた。

「皆さんは、後から会場の方へ来てください。」



俺とつよし。

「やっぱり、俺達は山の賑わいか・・・」


170cm近いオフクロと叔母さんの後に、高めのヒールで180cmを越えたパリコレのモデルのようなナオミと美智子が続く。

完全に他を圧倒している。



以前、サービスエリアでドレスを着た時の練習の歩きどころではなく、思わずつよしと顔を見合わせた。


二人同時に言った。

「あそこに立つなら、背広じゃなくてタキシードか何かだったね。」



二人でため息をついていると、姉貴が夫のショウジと現れた。

「二人とも早いじゃない?」


二人でオヤジ達を指さす。


「わ~、あんた達の奥さん、凄いわね。」


「さっき、写真スタジオで写真撮った。」


「あ~、二人とも結婚式してないものね。 良かったじゃない。 後で見せてね。」


兄貴のショウジが姉に言った。

「俺達も会場に入っても良いみたいだよ。」


「じゃあ、みんな! 行きましょう。」

姉の号令でソファーから立ち上がった。




会場は広い。

まあ、本社関係で昇格した社員が集まるのだから、大きい会場が必要なのであろう。


各支店でも、各々で施工したビルやホテルの会場を借りて、同じ様なパーティーを行っている。


勿論、社員だけでなく、関連会社の方にも出席の通知は出している。


会場が開くまでの集合場所はホテルのロビーや喫茶コーナーである。

喫茶コーナーの方では「今日ゴルフだったのに」という泣き言が聞こえてきたが、ロビーではどこで聞かれているか分からないので、そんな話は出なかった。



みな、それぞれが別れる。


俺達ペーペーは、会場に入って直ぐのビュッフェの様な場所である。

俺やつよし、俺と同じ部署の先輩のお姉さんは課長になったので、一緒の場所。



中堅は、もう少し奥。

義理の兄貴や連れてこられたのか付いてきたのかは分からないが姉貴もそこら辺。



オヤジ達のような役員クラスは、バーカウンターの様なところで寛いでいる。

オヤジや伯父さん、オフクロや伯母さん、オヤジ達の娘として会社に届けたのか、ナオミや美智子もそこにいる。


ナオミや美智子は、普段着はTシャツにジーンズだが、ドレスを着るとひときわ目立つ。

身長が高いだけでなく、元々美人だからである。


特に今日は、オフクロや伯母さんが徹底的に化粧をしたので、夫の俺達でも近寄りがたい。

横にいるつよしを見ても、俺と同じ様に、ボーゼンとしている。



「つよし、 もし初めて会ったときに、ナオミや美智子が今日みたいだったら、近寄れないよな。」


「あ、ああ、兄貴、 そ、そうだね。」

つよしの目は遠くを見ていた。



「美智子はつよしにとっては、本栖湖の月の女神だったよな?」


「兄貴はどうだったの?」


「俺のうちに勝手に入ってきた、訳の分からない女性だったな・・・」


「兄貴、お姉さんを美人だと思ったんだろう?」


「そ、そうだけど、ナオミと会ったのがあまりに突然でさ、それどころじゃなかったんだ。」


「ナオミお姉さん、 結構強引だもんね。」


「ああ、 一応再会って事になってるけど、初日に俺の奥さんだって言い切ったもんな・・・」


「それも凄いね。」



ボーゼンとする二人に、姉貴が近付いてきた。

「ほら、二人とも。 放っておくと奥さん、盗られちゃうぞ。」


ナオミや美智子の周りに、ホステス代わりと思っているのか、お話したいオジサン達が群がっていた。


ただ、今度総務担当の役員になった総務のオバサンが、横に陣取っているので、多分安心である。

そのオバサンが俺達を呼んでいる。


姉貴と俺とつよしの3人で、役員達が集まるエリアに、入っていった。


総務のオバサンに声を掛ける。

「昇進、おめでとう御座います。」


オバサン、一言。

「この子達の旦那さん達よ。 それと、この子達のお姉さん。」


俺やつよしは、群がっているオジサン達にとっては相手ではないらしいが、俺の姉貴を見た途端、オジサン達は後退りを始めた。


「あら、 営業1課のA課長、 経理部のB次長、 安全のC課長、 ・・・・ 皆さん、私の妹達に、何のご用?」


姉の記憶力は神がかりで、いまだに総務に在籍していて、社内事情は社内システムをはるかに越える・・・ハッキリ言って、常人離れした空手の能力よりも恐ろしい。



集まっていたオジサン達、震えながら言った。


「そ、総務の山口さんの妹さん達でしたか・・・」


そう言うと、みな、ちりぢりになっていなくなった。


うちの会社では、総務のオバサンやうちのオヤジより、姉貴の方が権力があるらしい。



群がってオジサン達はいなくなったが、180cmを越えるイケメンが二人現れた。


二人とも、気軽にナオミや美智子と話し出し、直ぐに盛り上がり始めた。

四人でコンピューターの話で盛り上がっていた。



つよし、ちょっと不安そう。

「兄貴、 あいつら大丈夫ですかね? 物凄く仲が良さそうなんだけど・・・」


「もうチョットしたら、一発かますから、暫く放っておこう。」


「放っておくって、兄貴~・・・」


「ほら、あっちでジンジャエールでも飲もうぜ。」



下々の集まるエリアで、ノンビリとオードブルを突きながらジンジャエールを飲んでいた。

俺は栄養のありそうなものを狙っているが、つよしは美智子の方ばかり見ている。



「あ~、結構食っちゃったな~。 腹ごなしに歩くか。」

そう言って、つよしと一緒に、お偉いさんのエリアに向かった。


「おい! ケンとジュン。 久し振りだな。」

俺がそう言うと、先程のイケメン二人が振り向いた。


「あ、兄貴!」


ナオミと美智子。

「え! 知り合いなの?」


俺。

「良~く知ってる。 寝ション便タレの双子。」


ナオミ。

「うそ! 関連会社でIT企業の若手ホープの二人だよ。」


俺。

「今回役員になった総務のおば様の息子達だけど・・・」


双子の二人。

「あ、兄貴。 オネショの話は止めてくださいよ。」


俺。

「あの時、二人して俺の布団の上で昼寝の時寝ション便して、証拠隠滅でサッサと着替えやがって。」


双子の二人。

「・・・・・・」


俺。

「お前らが帰った後、オフクロから散々だったんだからな。」


美智子。

「どういうこと?」


俺。

「あの頃、総務のおば様、保育園が少ない時代で、この二人、俺んちで昼間は預かっていたんだよ。」


役員エリアは酒も食い物も良いので、腰を落ち着けていた姉。

「そうよ。ヤンチャな悪ガキだったわよね。 私なんかスカートめくりされたわ。」


双子の二人。

「お、お姉さん、それはもう時効という事で・・・」


ナオミと美智子。

「わ~、良かった。 そんな連中がいる会社に就職しなくて。」



後で聞いた話だが、ナオミも美智子も内定までいったらしいが、二人とも辞退したらしい。



双子の二人。

「もう・・・ 今は品行方正です。 お二人なら、途中入社でも優遇しますよ。」


総務の役員に昇格したおば様。

「ご免なさいね。 うちのバカ息子二人が・・・  本当にあの頃はお二人のお母様にはお世話になったわ。」


姉、年長者?らしく・・・

「いいえ~。 私たちも楽しかったですわ。 おほほほほ・・・」


俺。

「流石、姉さん、変わり身が早い。」


間髪を入れず、姉の拳骨を喰らった。



双子の二人。

「しかし、ナオミさんはお酒、お強いですね・・・」


美智子。

「私も、お酒、好きな方だけど、お姉ちゃん、別格!」


俺。

「でも、許容量があるみたいで、限界を超えると寝ちまうんだよな。 途中で切り上げさせないと大変だよ。」


双子の二人。

「兄貴、ナオミさんについて詳しいっすね。」


俺。

「あ~、 俺の奥さんだから。」


双子の二人。

「え~~~!」

「もしかして、美智子さんは?」


つよし。

「美智子は俺の奥さん。」


双子の二人。

「旦那さん達がいるのに、今日の格好、ズルいですよ。」


俺+つよし

「俺達のオフクロに言ってくれよ。 俺達だって驚いてんだから・・・」


ナオミと美智子。

「そう? そんな良い?  じゃ、二人で回ってこようっと!」

そう言うと、二人してパリコレのランウェイのように歩き出した。



パーティーは結構広い会場で行われていたが、二人がいる場所は異様に盛り上がるので、何処にいるのか直ぐに分かった。



酒が行き渡ったところで、司会が、今日本来のパーティーの目的、昇格者の紹介を始めた。

昇格者が全員読み上げられ、役員に昇格した者は、壇上に上がって挨拶した。


どんな資料が司会者に渡ったのかは知らないが、オヤジが呼ばれたとき、ナオミと美智子は俺のオヤジの娘と紹介された。

オヤジの隣で、これ以上ない微笑みをたたえた二人の所為で、俺の会社のパソコンには次のようなメールが物凄い数、届いていた。


「お兄様。 妹さんを紹介してください。 僕は素敵なナオミさんとのお付き合いを希望します。」


「妹さんを紹介してください。 僕は可愛い美智子さんとお付き合いしたいです。 お兄様、よろしくお願い致します。」


毎日のように何十件とメールが来るので、みな、迷惑メールに登録してやった。




パーティーの終了時、オヤジとオフクロと一緒に会場から出て行く二人は、にこやかに手を振っていなくなった。



唖然としてそれを見送った俺とつよしは、つよしの両親に声を掛けられるまで、その場に立ち尽くしていた。



運転手である俺とつよしは、そのまま地下の駐車場に向かった。


ホテルの車寄せに車を止めて、みんなが出て来たところで車をエントランスに近づけた。


ナオミも美智子も芸能人のように、お見送りの男共に笑顔を振りまいていた。




つよしに聞いたが、俺の運転する車の中と一緒で、運転手の俺達以外は「楽しかった~」と大騒ぎとなっていた。




今日もつよしの一家は、俺んちにお泊まりである。



ナオミと美智子、車から降りると、大ダッシュでトイレに直行。

1階と2階、それぞれにトイレがあって良かった。


二人ともシコタマ飲んだのに、優雅におすまししていたので、トイレを我慢していたらしい。

俺達は家族なので、おすましの必要はないらしい。


トイレが終わった二人は、物凄い早さで化粧を落とした。


ナオミと美智子がドレスを脱いで、シャワーを浴びた二人がTシャツと短パンで寛いでいる

「やっぱり、これが一番よね。」

そう言いながら、長い足を伸していた。



「いや~、 今日は二人とも素敵だったよ。」

二人のオヤジ、ナオミと美智子を絶賛する。

喋っている内容は「スケベオヤジ」だが、実際は実の娘の父親のように「宝物」扱いである。




そんな時、俺とつよしが母親達に呼ばれた。


4人で、カフェインの少ないコーヒーを飲みながら、ダイニングで俺がのオフクロに質問した。

「母さん。 何で、ナオミや美智子を普通に就職させないで、早めに俺やつよしと結婚させたの?」


「あの子達が普通の魔女や鬼女なら、そのまま就職させたかも知れないね。」

「でもね、 あの子達は、ハッキリ言って化け物なのさ。」


「そんな・・・ ナオミや美智子は化け物じゃないよ!」



つよしも反論したい様だったが、自分の母親に止められた。



「ご免ね。 言い方が悪かったね。 あの子達の力はどこまで凄いのかは、本当は分からないんだよ。」

「普通の魔女も、人間からしたら恐ろしい力を持っているけど、 あの子達の力はどの位なのか見当も付かないのさ。」


「だからって・・・」


「お前もつよしも、自分達は普通だと思っているかも知れないけど、 お前達にも不思議な力があるんだよ。」


「まあ、つよしは空手が尋常じゃなく強いけど、俺は重いものを持ち上げるくらいかな・・・? 」


「お前達二人には、あの子達の力が爆発した時に、止める事が出来る能力があるのさ。」


「ほ、本当? 」



つよしも怪訝な顔をしていたが、自分の母親が黙って首を縦に振ったので押し黙った。



「そんな事があったら大変だけど、本当のことさ。」


「・・・・・・」


「だから、あの子達の一番近くにお前達を置いておくには、結婚させるのが一番だったのさ。」


「ナオミも美智子も自由に色々やってるけど・・・」


「でも、最後はお前達のところに帰ってくるだろう?」


「うん・・・」



「お前も分かっているだろうけど、就職すると色んな事をやらされるだろう? 」


「うん。 それはそうだね。」


「もし、あの子達が普通に就職して、チョットでも突出した能力が分かってしまったらどうなると思う?」


「昇格とか、給料が良くなるだけじゃなくて、研究所みたいなところに異動するよね。」


「そう。 そして特殊な能力が分かってしまったら、どうなると思う?」


「・・・・・・」


「あの子達は人間扱いされなくなるだろうね。」


「い、いや、そんな事は・・・」



「最悪、兵器として使われるかも知れないんだよ。」


「でも、二人ともそんな事にはならないと思うけど・・・」


「IT企業ってところは、軍需産業とは密接な繋がりがあるんだよ。」


「だからって、今日パーティーにいた企業がそうだとは限らないだろう?」


「企業は常に前進していないと、取り残されて駄目になるんだよ。」


「うん。止まっているように見えるのは、周りの企業と同じ速度で走っているからだよね。」


つよしが言った。

「なにもしてないように見えるけど、現在、成り立っている企業は一生懸命走っているんだよね。」



再び俺の母親。

「あの会社の経営者が大丈夫でも、社員全員が大丈夫とは限らないだろう? 美味しい情報があれば、自分を売り込むために悪いことをするヤツも出てくるのさ。」


俺。

「うん。それはそうだね。 うちの会社だって、悪いことをするかは別として、今以上に良いとこに転職しようと思っているヤツは絶対いるからね。」



「特に、人に言う事を聞かせようとする連中は、どんな卑劣な手段でも使うんだよ。 例えば、親兄弟を人質にしたりしてね。」

「争いが好きな奴や、戦争で儲けたい連中には、あの子達は都合の良い、最新鋭の戦車にしか見えないんだよ。」



「普通の魔女はどうなの?」


「普通の魔女は、親や兄弟、結婚してからは夫が魔女を守るんだよ。」

「その為に、魔女はいい加減に夫を選ばないの。 魔女である自分を大切にしてくれる人を見つけるのさ。」



「私や妹は、魔女や鬼女がそうならないようにする定めなのさ。 もしかしたら、お前達が生まれてきたのはその為だったかも知れない・・・」

「お前達が、ナオミや美智子の側にいてやれば、絶対大丈夫だから。」


「・・・・・・」


「簡単だよ。 二人とも、あの子達に優しくしてあげれば、それで大丈夫なのさ。」



黙って聞いていたつよしが言った。

「それで良いなら・・・もっと難しい事を言われるのかと思った。」


俺は、黙って頷いた。



つよしの母親。

「それは優しさなのかも知れないよ。 お前達二人には特別な優しさがあるんだから。」



俺の母親。

「だから、ナオミも美智子もお前達を、 自分達の夫を大好きなのさ。」




俺が見る先には、父親達と仲の良い娘達がはしゃいでいた。


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