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駄目(俺+魔女)  作者: モンチャン
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44 美智子 (登喜子の妹)

美智子 (登喜子の妹)



美智子が初デートから家に帰ってきた。

初デートだったが、ナオミの家に遊びに行った事になっていた。



美智子の家にルールがある。


出掛けるときには、ホワイトボードに「行き先」と「移動方法」を書き込まなければならない。


父親と登喜子の夫は、通常「いち」と記入する。

一般という意味である。

電車やバス、タクシー等を利用する場合である。


自家用車で行く場合は「C」と記入する。



ただ、母親や娘達は鬼女である。

「鬼力」が使える。

魔女の場合の「魔力」と同じである。


3人が鬼力を移動手段とした場合は「K」と記入することになっている。



美智子は事務所に掛かっているホワイトボードの自分の欄を消した。



母親から声が掛かった。

「夕ご飯、食べてきたの?」


みな、夕食は終わっていた。


美智子の家の夕食の時間は決まっている。


例のホワイトボードに夕食の要不要の欄もある。


夕食が要らない場合のみチェックを入れる事になっている。


本来なら、不確定な場合は、夕食が要るか要らないか連絡する約束である。



いつも、美智子がナオミの家に行くと、夕食をご馳走になる事が多い。

だから母親は、美智子が食べてきたのかと思ったのである。




「食べてきた。」

本当は食べてこなかった。


結構早めにナオミの家から帰ってきたのである。



魔女も鬼女も、目的地を思い浮かべ、指を鳴らせば、瞬時の移動が可能なのである。



今日の美智子は、一瞬では帰りたくなかった。


ブラブラ歩きたかった。

物思いにふけっていたかったのである。


初デートの余韻に浸りたかったのである。




帰巣本能とは恐ろしい。

ボヤーとしながらでも自宅にたどり着いたのである。




家に帰ると直ぐに自分の部屋のベッドに転がった。


仰向けだと、つよしの車の中で、一人で寝袋に包まっていた時を思い出した。


ひとりぼっちはイヤだった。



直ぐにうつ伏せになって、顔を枕にうずめた。


目を閉じたら、つよしの顔を思い出した。


嬉しくて、足をジタバタしてしまった。




トントン! とノックの音がした。


「入るよ~!」

そう言って、姉の登喜子が入ってきた。



「ナオミ、元気だった?」


「う、うん。」

美智子は上の空であった。


「ず~っとナオミんちにいたの?」


「ちょっと、出掛けた。」


「どこ?」


「大したとこじゃないよ。」



「ふ~ん、 じゃ、おやすみ。」


「おやすみなさ~い。」




何かおかしいな?

姉の感である。


そうだ、ナオミに聞いてみよう。


早速、ナオミに電話する。


「ナオミ! 元気? 昨日今日と妹がお邪魔して、迷惑じゃなかった?」


「いつものことだから・・・」

「あ~、言っちゃっても良いのかな?」


「なに? なに?」


「みっちゃん、昨日の夜から釣りに行ったの。」


「美智子が? あいつ、釣りなんて興味ないじゃん。」


「綺麗な月が見たいって言ってた・・・」


「誰と言ったの? ナオミの旦那?」


「う~ん! 違うんだよね・・・」


「本当の事、言ってよ!」


「うちの旦那の従兄弟。 あ! 人畜無害の安全な男だから。」

「それと、何かあっても、みっちゃんに敵う男の人っていないから、絶対大丈夫だよ。」


「まあ、そうなんだけど・・・ 美智子に悪さしたら、殺されちゃうもんね。」


「あとね。 何となく、みっちゃん、、従兄弟のつよしを見るとボ~っとしてたけど。」


「うん、家に帰って来てもそうなんだよね。 でも美智子が男を好きになるなんて、、ねえ?」


「分かんないよ? みっちゃんが結婚して出て行ったら、、ときチャン! 旦那さんとおんなじ部屋に住めるじゃん!」




そうなのである。

美智子は子供部屋にそのまま住んでいる。

姉妹ふたりがゆったり住める広さである。



登喜子が高校生になったとき、一人部屋を親にねだった。



弁護士事務所のビルの最上階は、自宅になっていた。

その下の階がアパートになっていたが、丁度1部屋空いていたので登喜子が自分の部屋として使っていた。


登喜子が結婚して、夫の彰良は登喜子と同じ階の空いていた部屋に移り住んだ。

単身者用としては広い間取りだったが、二人で住むにはちょっと狭かったのである。


美智子がアパートに移動すれば良かったが、何となくそのままになっていた。



結果、登喜子と彰良は、結婚したときから「家庭内別居」なのである。




「あ! 従兄弟のつよしが、みっちゃんに魚が釣れたときの写真、渡してくれって。 ときチャンに送っとくから。」


「ねえ! そのつよしって子の写真も送ってくれる? 見てみたいな。」


「いいよ! 今から両方送るね。」



暫くすると、登喜子のスマホに写真が届いた。


1枚は、美智子が魚と一緒に移っているヤツである。

美智子が少し緊張している。



もう1枚は、ナオミ夫婦を真ん中に、美智子とつよしが写っていた。

結構真面目な顔の美智子である。


つよしの顔を見た。

ちょっと見はナオミの旦那にそっくりだった。


「なるほど! 美智子の好みはこういう男なんだ。」

納得した登喜子であった。




美智子のスマホに姉から写真が届いた。

ナオミから渡してくれと言われた、美智子と魚の記念写真である。



「こんな写真じゃなくて、つよしの写真が欲しかったな。」

思わず美智子は呟いた。




美智子はつよしのメールアドレスを知らなかった。

当然、電話番号も。


「今度、ナオミお姉ちゃんトコに行ったら、聞き出そうっと。」




電話して、絶対あいつに言わせてやる。

「君に会いたい!」って。



そしたら言ってやるんだ。

「仕方がないから、付き合ってやる!」って。


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