表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
駄目(俺+魔女)  作者: モンチャン
41/167

41 不倫?

不倫?



原宿のいつものカフェである。


魔女や鬼女がよく集まっている。


みな、美人ばかりである。


美人ばかりが集まっても、原宿だから目立たない?



オーナーは魔女だという噂がある。


以前、みかじめ料を取りに来たヤクザが、身ぐるみ剥がされ半殺しになったという噂も、裏社会には流れていた。

後日、組事務所がガス爆発でもあったかの様に壊れたと、新聞の片隅に載っていた。



鬼女、登喜子の知り合いが、数人で盛り上がっていた。


「人間の奥さんの三分の一が不倫しているんだって。」


「私たち魔女みたいに、ちゃんとした亭主を選んでいれば、不倫なんてしたいと思わないよね~。」


「人間ってバカだから、ちゃんとした亭主を選ばないからよ。」


「見る目、無いもんね。 顔が良かったり格好が良いだけで、すぐくっついちゃうんだから。」


「人間の場合、絶対、男の方が不倫してると思わない?」


「そうそう。 人間の男って、大馬鹿が多いもんね。」



「ねえ、聞いた? ナオミちゃん、不倫の話で泣いたんだって。」


「まさか! ナオミちゃんの旦那さんて、優しそうじゃない?」


「奥さんに優しくたって他の女の人にも優しかったら、意味ないじゃん!」


「ナオミちゃんなら、旦那が不倫したら、ぶっ殺しちゃうんじゃない?」


「でも、ナオミちゃんの旦那が死んだって話、聞こえてこないけど?」



「私、ナオミちゃんの旦那さん、あんまり好みじゃないな~。」


「あ! あたしも。」


「そういえば、ナオミちゃんの旦那さん、 次女にはモテモテじゃない?」


「ほら! 登喜子の妹さん、 美智子さんもナオミちゃんの旦那さんのこと、好きよね~。」


「ナオミちゃんも、美智子ちゃんも次女じゃない?」



「そうか! だからあたし達、長女の魔女には、全然良い男に見えないんだ。」


「あはははは・・・」



他の魔女達は笑っていたが、一人だけ不機嫌な女がいた。

美智子の姉、ナオミの親友、鬼女の登喜子であった。




ゴン!ゴン!ゴン・・・

盛り上がっていた全員に拳骨が落ちた。


「もう、オーナー、 痛いじゃないですか。」


「下品な話で盛り上がらないで頂戴! うちはハイセンスなカフェなんだからね!」


「大体ね~、不倫する奴らは後先考えないんだから困るんだよ。」

「ろくすぽ避妊もしないし・・・ 大体ピルだって90%、コンドームだって85%位の避妊率なんだよ。」

「100%なんて無いのさ!」


「奥さんは自分が産むんだから自分の子だろうけど、旦那さんが疑ったら、直ぐにDNA検査されちまうよ。」

「10万円も出せば1日で結果が出るからね!」



「不倫してる友達がいたら言っときな! 男はレッテルが貼られるだけだけど、女は烙印が押されるからって!」


「レッテルって、なに?」


「オランダ語でレターの事だよ。 まあ、付箋紙ってとこだね。 直ぐに剥がれて無罪放免さ。」

「女は烙印さ。 刺青どころじゃあないよ。 男と違って一生消えないのさ。」


「ねえねえ、 烙印って?」


「そんなのも知らないのかい? 皮膚に熱した金具を押しあてて、火傷痕によって押印する事だよ。 牛ならお尻の辺りのよく見えるところかな?」


「ゲ~! 痛そう・・・」


「本人にはその烙印は見えないのさ! 周りからは丸見えだけどね!」


「バレたら、同じ生活どころか、ず~と「股の緩い女」って言われ続けるんだよ。」

「まともな女友達は離れていくだろうし、寄ってくる男も、セックス目的なバカばかりさ! 」



店員がオーナーに近づいて言った。

「オーナー! 話が充分下品になってます。」


「あら、 あたしとしたことが・・・」

オーナーは高笑いと共に消えていった。






俺はサラリーマン、ナオミは魔女。


サラリーマンでも、土日に仕事をしなければいけない事は多い。


建築関係の工事は「土日休み」と表面上は謳っている。

そうしないと、新入社員を集められないのかも知れない。


新築工事なら、工期を守れれば、土日をお休みに出来るかも知れない。

改修や模様替え工事の場合、土日に仕事をして、平日を休みにする事が多い。


俺は設計部所属である。

設計部は営業部門と連携しする事もあるが、工事部門のサポート部門でもある。

結果、土日が必ず休みになる訳ではない。



ナオミも魔女の仕事?をしている。

収入源は不明である。

多分、いや、間違いなく俺よりは高給取りであろう。

いつも時間に余裕を見せてはいるが、年中無休のようである。



結果、地域の集まり等には参加しない。と言うか出来ない。




ナオミはご近所付き合いは、巧みである。

近所のおばあさんのお蔭かもしれない。

長老の意見は、時代がかわっても絶対である。




ご近所の若い奥さんでナオミのお友達もいる。

名前を由美という。


今回、その奥さんのお誘いもあって、五日市のキャンプ場でのバーベキューに参加した。


参加者は殆ど家族か夫婦であった。



食材も、道具も、全て現地のキャンプ場で対応してくれる。

至れり尽くせりである。

ただ、アルコールに関しては各自、持参である。




俺は元々釣りをするので、キャンプや車中泊は得意である。

釣りを教えてくれた叔父と行く以外は、基本、ソロキャンプである。

ナオミと結婚してからは、ソロキャンプではなくなった。

少し残念である。



野外で食べると、何故か美味い。

ソロキャンプでも楽しく、美味い。

みんなでワイワイ言いながらは、もっと楽しく、もっと美味い。



因みにソロキャンプの時、ちょっと寒い時期だったのでカップ麺を食べた。

家で食べるより何倍も美味しかった。




出席者でバーベキューの担当を決めている。


皆、何度もやっているらしく、手際が良い。



ナオミが友達の由美とコソコソ話をしている。


いきなり、ナオミがパーカーを脱いだ。

下に着ていたTシャツは普段と同じなのだが、他の男どもには胸が強調して見えたらしい。


「オォ!」と声が上がるが、皆、女房持ちか子連れである。

妻や子供の冷たい視線に敵う者はいなかった。



それ程暑くはない。

直ぐにナオミはパーカーを着込んだ。


俺がその行為に「嫌がった冷たい視線」を送った所為かもしれなかった。



ただ一人、舌なめずりをした男がいた。

ナオミのお友達、由美の旦那である。


消防士をしているらしい。

身長も185cm近くあり、体重も100kgは超えている。



ナオミが動くと目で追っている。

その男以外の周りの人間は気が付いているが、本人だけが気付かないと思っている。

頭の中のスケベな部分のネジが緩んでいるのか、外れているのである。




バーベキューの開始である。


運転手以外は、まずビール!

運転手はウーロン茶かノンアルコール飲料である。


結構贅沢な品揃えである。

人数分の串が用意されており、かなりのデカい牛肉と野菜が交互に挟んである。

これは大人用で、子供用は牛肉を小さめにしてソーセージも挟んである。


この串焼きはオプションだった。

一生懸命用意したオプションよりも人気があったのは焼きそばであった。



食べるグループは別れる。

酒を飲むグループと、そうでない下戸と仕方なく飲めない運転手のグループである。


参加者全員が車で来ているわけではない。

電車に乗るのが好きな者もいる。

夫婦揃って酒を飲みたい者は、当然電車利用であった。



当然、俺とナオミは別れた。

酒の席の場合はいつもの事である。



釣り好きの旦那がいると、釣り方や対象魚が違っても盛り上がる。


子供連れは大変だ。

酒も飲みたい、食うもの食べたい、子供の世話も当然に。


ナオミは酒に強い。

強いを通り越している。


ガンガンと飲みまくる。

しかし酔わない。

化け物である。


1回でも一緒に飲んだことがある人はそれを知っていた。

今日の出席者の中で知らなかったのは、由美のバカ亭主だけだった。




ナオミは何故か子供に人気があった。

子供達も大人の扱い方を知っており、「おね~ちゃん!」と呼んだ。

決して「おばさん!」とは呼ばなかった。


ナオミはいくら酔っても、元気いっぱい。

子供を放り投げて受け取る。

ぐるぐる回す。

何人でも相手が出来た。

ムリヤリ俺も手伝わされる。


しまいには、順番待ちする子さえ現れた。




そんなこんなで終了時間が近づいた。


皆で手際良く片付けていく。


纏まったゴミを入れた袋をナオミがゴミ置き場に持って行く。


他のみんなは使った道具や食器の片付けをしていた。


ゴミ置き場目立たない場所にある。

トイレの裏側であった。



由美のバカ亭主は思った。

ターゲットに決めた女、ナオミ。

あれだけ酒を飲んで、動き回った。

多分、酔いは回っていると。



遠回りをしながら、ゴミ置き場にバカ亭主は走った。

ゴミの袋を置いたナオミの前にバカは立った。


ナオミの腕を掴んで、茂みに連れ込むつもりだった。



俺のアラームが鳴った。

青い指輪から。


直ぐナオミの元へ行く。


ナオミは軽々と片手で、消防士の男の両腕を、背中側で絞り上げていた。


ナオミの見た目は変わっていなかった。

しかし、眼が違っていた。

魔女であった。

そのままバカの腕を砕こうとしていたのである。



アラームの意味が分かった。

「ナオミを守れ!」ではなかった。

「ナオミの暴走を止めろ!」だった。



俺は男に近づいた。

近くにあった薪になる前の直径60cmはある丸太を蹴った。

丸太は粉々に砕け散った。


それを見た男もナオミも唖然として動けなくなっていた。


俺にこんな力があるわけは無い。


ナオミを見ると、自分の魔法ではないという顔をしていた。


どうも、ナオミの事になると、化け物じみた力が出るらしい。

青い指輪の力か?



男の胸ぐらを掴んだ。

俺よりも10cmは背が高い。


ただ、100kg以上ある男とは思えなかった。

胸ぐらを掴んだまま、簡単に持ち上がった。

腕を伸ばすと、男はジタバタしたが、完全に足は浮いており、自分の体重で首が絞まってきて、泡を吹き始めた。


このまま殺してしまおうかと思ったが、ギャラリーが多かった。

キャンプに来ていたみんなが、ボウゼンと見ていた。


このバカは、他人の若い奥さんにちょっかいを出していた。

実際に寝取られた奥さんもいると、噂になっていた。



取り敢えず、投げ飛ばした。


片付けて重ねてあったテント用タープの上だった。


バカが立ち上がろうとしたが、立ち上がれなかった。

股間を俺が踏んでいたから。



気に入って、昔からチロリアンを履いている。

ビブラムソールである。

力が入る様に、バカの股間をかかとで踏んでいた。



「諸悪の根源か! 潰してやろうか?」



近くで見ていたバカの可哀想な妻が言った。

「私がやります!」


手には薪割り用の手斧が握られていた。

涙目ではあったが、身体から本気の炎が揺らめいていた。



ナオミは由美の手斧を奪い取ると、代わりに怪しいドリンク剤を持たせた。


「この薬、恐ろしいほど効くのよ!」

由美の耳元でナオミが囁いた。

眼が魔女だった。


由美はバカ亭主にドリンク剤を飲ませた。

鼻をつまんで、ムリヤリに。



ナオミは由美に言った。

「これで、あなた以外の女には手を出せないわ。」

「でも、ちょっと副作用があるの。エチケット袋を沢山用意しておいてね。」




参加者全員、押し黙っていた。

そして、何事もなかったかの様に解散した。




夫の運転で、ナオミと二人で家に帰る。



何故か夫の機嫌が悪い。

話しかけても「ああ!」程度である。


西日で車内が少し暑くなった。

ナオミがパーカーを脱いだ。


夫が左手の人差し指で、ナオミの胸を突いた。


「人に見せるな!」

不機嫌な声だった。


「え?」


「束縛したくなる。・・小さいな・・・俺・・」


「あなたになら、束縛されてもいいよ・・・」


「・・・・・・」



「ところで、あのバカ亭主に飲ませたヤツは何だ?」


「普通の清涼飲料のドリンク剤に、ちょっと魔法をかけたヤツ。」


「名前の知らない薬草とか、動物の骨とかじゃないんだ?」


「そんなのは昔の話。 今は、狙ったものを魔法でブレンドするだけ。」


「??????  よく分からんな~?」


「人間に分かられたら、魔女は廃業だよ!」



「どんな効果があるんだ?」


「飲ませた女性以外にちょっかいを出すと、思いっ切り吐くの。」


「結構、恐ろしいな。」


「ちょっかい出した相手に、ぶっ掛けるように吐くから、その相手は二度と近づいてくれないよ。」

「エヘヘヘヘ! 飲ませてやろうか・・・」


「・・・ 俺には効かないよ!」


「なんで?」


「こんないい女がいるのに、他の女にちょっかいを出してる暇なんてないもん!」

言った勢いで、ナオミの胸に手をおいた。


ひっぱたかれると覚悟して、右手はシッカリハンドルを強く握った。



俺の左手の上にナオミの両手が重なった。

そのまま動かなかった。


左手でウインカーを使うまで、そのままだった。



暫くしてナオミが言った。

「もう~・・・! 道交法違反!!」

「罰として・・・、、 今夜、やらしてあげない!!」


「え~~~~~~~~~?」



ガックリしながら家に到着。



昼にバーベキューで肉をシコタマ食べたので、軽い夕食。



リビングでコーヒーを飲む。

珍しく、今日はコーヒーを飲んでいなかった。



何となく思い出した。

町内会のバーベキュー大会等の常連で、近くのマンションに2年くらい前に引っ越してきた、若い夫婦に会わなかった事である。


「そういえば、常連さんの若いご夫婦に会わなかったね?」


「離婚したんだって。」


「え? 何で?」


「不倫だって。」


「旦那さんの方かな? 会社の若い子と、とかかな?」


「奥さんの方だって。」


「何で?」


「一つ離れた駅に大型のスーパーがあるじゃない。 そこでパートをしてたらしいけど、アルバイトの20歳くらいの男の子と仲良くなちゃったんだって。」


「ふ~ん。」


「旦那さんもウスウス気が付いていたらしいけど、 それっぽく注意しても、 奥さん、しらばっくれてたんだって。」


「結構、重い話になってきたね。」


「奥さんの方は、軽い気持ちだったみたいよ。」


「そういうの、 軽いと判断しちゃうんだ?」


「決定的だったのは、その男の子と1泊の温泉旅行に行っちゃたんだって。」


「不倫旅行に行ってきます、とは言わないよね?」


「同窓会とかって、言ったらしいわよ。」

「奥さんの同級生が旦那さんの知り合いで、、確認したら、同窓会は1ヶ月前に終わってるのが分かってたんだって。」

「旦那さん、行くのをやめさせようとして、 止めろよ、どうしても行くのかって、何度も言ったらしいわ。」



「ナオミ・・・かなり詳しいね?」


「ほら! 町会費を集めに来るおばさん。 と~っても!詳しく教えてくれたの。」



「さすがに旦那さんも諦めて、 奥さんにメールしたんだって。」

「帰って来たら、 離婚届にサインして、 奥さんの荷物は直ぐに持って行けって。 残っているものは全て捨てるってメールしたんだって。」


「顔を会わしたの?」


「奥さんの方は、軽い気持ちだって何度もメールを返したらしいけど。 軽いって意味が分からない、二度と顔を見たくないっていうのが最後のメールだったらしいわ。」


「相手の兄ちゃんはどうなったの?」


「慰謝料を請求されると思って、逃げちゃったんだって。」


「マンションはどうなったの?」


「売っちゃたって。」


「うわ~! もう事故物件だよね?」




急にナオミの声のトーンが下がった。

「あたしが不倫したらどうする?」


「魔女はそういうのは無いんじゃ・・・」


「もしかしてよ。」


「もしかしても、嫌だな。」

「そうなったら、俺、生きていたくないな。」

「・・・ナオミがいなくなるんだったら、俺、、死んだ方がいい。」


「え?」


「相手をぶっ殺して、ナオミも・・・」

「あ~、 ナオミが相手じゃ俺も敵わないから、、駄目か。」

「相手をぶっ殺して、俺も死んで・・・」

「やっぱり、、ナオミには生きていて欲しいな・・・」


・・・・・・・・・・


「ヤベ~! 涙、出てきた。」



冷めたコーヒーを飲んだが、喉がひりついて、もう声が出なかった。


暫くうつむいていたが、ナオミの声がしない。


顔を上げると、うつむいて肩をふるわせ涙を流しているナオミがいた。

「ヤダ! ヤダ! ヤダ! ヤダ!・・・」



そこには魔女はいなかった。


「ご免なさい! ご免なさい! ご免なさい! ・・・」

「もう言わないから! 絶対言わない! 絶対、絶対、絶対・・・」


泣きじゃくる娘がひとり、いるだけだった。






1週間後、俺が会社で仕事をしている時、ナオミの親友、鬼女の登喜子の母親に呼び出された。


呼び出されたけど、会社に何と言おう?

部長に「時間休暇の申請」を言おうとした時、部長から声が掛かった。


「さっき、客先から連絡があって、お前をご指名で、我が社のニュープロジェクトの説明に来させろってさ。」


「え? 客先っていうのは?」


聞いてみると、登喜子の両親が経営している弁護士事務所からであった。

ニュープロジェクトと接点は無いのにとは思ったが、一応資料とパソコンを持って出掛けることとなった。



弁護士事務所は自社ビルである。

1階は喫茶店が入っている。

喫茶店の横の入り口から、エレベーターではなく階段で受付に向かう。



受付担当者は、俺を見るなり、会議室に連れていった。

会議室の扉が開くと、かなりの人数がいた。


皆、女性である。

皆、知っている顔である。

ナオミの友達の魔女や鬼女である。

ただ、何故か皆、機嫌が悪い。


特に機嫌が悪いのは、ナオミの親友、登喜子である。

登喜子は魔女ではなく、鬼女である。

怒りが頂点に達すると、般若にかわる。

いま丁度、その一歩手前の顔である。



俺と、その他大勢が向き合う形で座った。


司会は登喜子の妹、美智子である。


美智子は俺には甘いから駄目だ! との声に、美智子は睨みで黙らせた。



みな、口々にいろんな事を言っている。

「バカ!」

「ろくでなし!」

「出来損ない!」


具体的なものもある。

「ナオミを泣かすな!」

「サッサと、ナオミと別れろ!」

「不倫野郎!」


収拾が付かない状態である。



「ガタガタうるさい!」

美智子の一喝で、静かになった。



「ナオミお姉ちゃんから、「二人で不倫の話をしてる時、夫に泣かされた」って聞いてるんだけど?」


「まあ、微妙に違うけど、、大体はその通りかな?」

俺が答えると、先程より、もっと大騒ぎになった。



「え~い! うるさいって言ってんだろう~!」

美智子が後ろを振り返って、怒鳴った。


よっぽど、怖い顔をしていたのか、みな、顔が青くなっていた。


振り返った美智子は、いつも通りの可愛い笑顔で、正直ほっとした。

「詳しく説明して頂戴!」

ただ、声に少し凄みがあった。



バーベキュー大会の夜の事を話した。

「ナオミが、自分が不倫したらどうする? って言うから、相手の男を殺して、ナオミがいなくなるなら俺は死ぬ、ナオミには生きていて欲しい って言ったかな。」


「それからどうしたの?」


「ご免なさいって何度も謝っていたけど・・・ いや~、 その後ナオミが号泣して、大変だった。」


「それ以来、不倫の話はしたことがないんだけど。」

「何故みんな知ってるの?」



誰かが 「ナオミが泣いてたのは嬉し泣き?」 と言った。

その声の後、ざわついていた女性陣は、みな押し黙った。


暫くすると、二人を除いて、みな用事が出来たようで、帰っていった。

残っていたのは、今居る場所が自宅にもなってる登喜子と美智子だけだった。


美智子がため息交じりに呟いた。

「ナオミお姉ちゃんも言葉足らずだけど、聞いている方も・・・」


美智子が姉の登喜子を、物凄く怖い顔で睨んでいた。



会議室の扉が開いて、若手弁護士の登喜子の旦那さんが現れた。

「弁護は要らない?」



ボウゼンとする登喜子に呆れながら、美智子が言った。

「私のお兄ちゃんは、、無罪!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ