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駄目(俺+魔女)  作者: モンチャン
39/168

39 間違い

間違い



男は夢を見ていた。


男は宮城に転勤で来た「まさる」であった。


やけにリアルな夢だった。


結婚しようと思っている梓の夢だった。




梓は宮城県不動産屋の娘で、東京の大学に通っていた。

鬼女の美智子の同級生であった。


魔女や鬼女は美人である。

スタイルも良い。

良いものが代々受け継がれるから、悪くなりようがない。


梓も美人で可愛かった。

ホワンとした「ゆるふわ」系だった。


男に媚びるつもりはなかったが、仕草が、そのものだった。


高校時代も人気があったが、大学生になるともっと凄かった。


しかし、学園の高校からあがってきた美智子と仲が良かった。

美智子は男嫌いで、男を寄せ付けなかった。

腕など掴もうものなら、半殺しは確定だった。


そんな美智子が隣にいたので、声を掛ける男はいなかった。



梓は親の不動産会社に就職した。

宮城県と東京都にお店を出していた。


シッカリした会社で、暴力団の付け入る隙のない会社だった。


何故なら、父親と一緒に会社経営を担っていた母親が普通ではなかった。

「奥様は魔女だったのです。」


母親が魔女、従って娘の梓も魔女だった。



就職した梓は東京と仙台を週に半分ずつ行き来するハードは生活だった。



丁度、梓が仙台にいる時に優に会った。


仙台に転勤になった優のアパートを管理しているのが、梓の不動産会社だった。


「空調機の調子が悪い。」という話を、営業の外回りのついでに、不動産屋に寄った時だった。




お互い顔は知っていた。

話した事はなかったが。


話していると盛り上がり、梓が仙台にいるときは会うようになった。

お互い会っているうちに意識し合ってしまった。

梓も優も「この人となら」と考えるようになった。



何故か優は梓に対する感情が「今一歩」と感じていた。

「梓が欲しい!」という感情が湧かなかった。


手を握っても、肩を抱いても・・・



優は真剣に悩んだ。

「もしかしたら、俺は不能になったのではないか?」



優は学生時代、クラブの先輩に連れられて風俗に行った事があった。

のめり込んでしまった。


風俗に行くためにアルバイトを頑張ったくらいであった。

自分はスケベな方だと思っていた。




会社で昼食の弁当を食べた後、自分の机で仮眠を取っていた。

午後1時少し前に、スマホのアラームが鳴るようにセットしていた。


夢を見た。

梓の夢だった。


梓が裸でベッドに腰掛けていた。


男が部屋に入ってきた。

裸だった。


後ろ姿で誰だかは分からなかった。


肩幅が広い男だった。

間違いなく、自分、優ではなかった。


男は梓に口づけし、身体をなで回した。


いやらしく動く男の指は、梓の全身をいじり回した。



男は梓に跨がった。

どのくらい腰を動かしたか分からない位、長い時間だった。


男が梓から離れると、梓の股間は濡れてひかり、男の精液が溢れていた。



梓は精液を指ですくい、舐めてから言った。

「また、来てね。」




そこで目が覚めた。


イヤラシイ夢であった。


こんな夢を見た時は、股間が膨張し、ズボンの前を人に見せられなくなる筈であった。


ズボンを見ると何でもない様だった。

触ってみたが、、ハッキリ言って元気がない状態だった。




悩んでいても仕方がない。

社会人になって初めて風俗に行く事にした。

学生の時のように、お金を自由に使うのは止めようと思ったからである。

将来のことを考えた選択だった。



あまり安い風俗店は病気が心配であった。

実際、優はコンドーム無しではセックスをしたことがなかった。



梓と会わない日は、仙台の高級店を覗いて歩いた。

何となく入ったお店の女性の顔写真に驚いた。

梓だと思った。

化粧を濃くすればこんな感じだと思った。



お店の受付で、その女を指名した。

名前は亜里砂だった。


受付で、ガタイに良い男に、小声だが強く言われた。

「本番はOKですが、ゴム着用です。」

「病気の噂は、うちの様な高級店では致命傷ですから。」



部屋に入ると、梓がいた。

梓にしか見えなかった。


いきなり始めることはなかった。


話し上手な女だった。

不思議に気が合った。

女もマンザラではなかった。



気が合い過ぎたのか、ゴム無しでしてしまった。

不能ではなかった喜びと、梓ではない女、亜里砂と一緒に感じ合った喜びで、忘れていた。



亜里砂は言った。

「お店には内緒にしてね。」

「でもあなたは素敵だった。」


「ゴム無しは、私は初めてなの・・・」


うつむく亜里砂を可愛いと思った。


「ご免。何かあったら責任は取るから。」

風俗店で言う言葉では無いと思ったが、真剣にそう思った。



「もうすぐしたら、風俗を止めるの。」

「母の手術代の借金が終わったから。」

嬉しそうに笑う亜里砂に涙が出た。



「今度、会ったらご馳走してあげる。」

そう言って、店を出た。


歩きながら気が付いた。本名も連絡先も知らなかった。






風俗に行った時は問題無かった。

梓だと俺は駄目なのか?



何となく、梓に会わなくなっていた。

自分からも、梓からも連絡を取り合うことはなくなった。




1週間後の早朝会議で、中途入社の女性社員の紹介があった。

「高橋亜里砂さんです。」


心臓が止まるほど驚いた。

あの亜里砂だった。



「何でお前が!」

二人で同時に指さして叫んだ。


支店長から言われた。

「お前達、知り合いか?」


「ええ、まあ!」

また同時であった。



早朝会議の終わりに、歓迎会をするかどうかの話し合いがあった。


女性と男性が半々くらいの比率の支店であった。


女性陣には「飲み会」は不評であった。

会社からの補助は出たが、会費を徴収された。

会費を取られて、おじさん達の好みの店で、仕事の話ばかり聞かされるのは、女性陣は我慢が出来なかったのである。



「本人に決めさせよう!」と言う事になった。



「私は女性なので、女性の皆さんと同じで、歓迎会は結構です。」

「ただ、こいつとは因縁があるので、歓迎会の費用として、こいつとの夕食代をお願い出来れば・・・」


亜里砂は、結構きつい顔で優を睨んでいた。


「領収書提出でOK!」という事になった。

総務担当のお姉さんの言葉だった。

ついでに言われた。

「二人で食事の時に殴ったりしないでくださいね。」



多少でも安く飲める機会を逃した、ガッカリしたおじさん達が殆どだった。




ドキドキしながら、優は気の利いたフレンチレストランに亜里砂を連れていった。



風俗で働いていた時より化粧は薄く、その顔は梓には似ていなかった。



梓の話はしなかった。


最初は名前についてだった。

「本名のまま店に出ていたのか?」


「別にいいじゃない。 短い間だったから・・・」


「そんなものか?」


「そんなものよ。」



その後は、それぞれの生い立ちの話だった。


亜里砂のたまにうつむいてからの上目遣いは悪魔的だった。



優は、このあいだの夢の話をした。

主人公は梓にしないで。


亜里砂は言った。

「エロ漫画の見過ぎじゃない?」

「でも、勃たなかったのは、変ね?」


「その後、私のとこに来たのね?」

「今度からは、私がオカズになってあげようか?」


話が下の方に向かい始めた時、デザートの前のコーヒーが運ばれてきた。



最後のデザートを堪能し、亜里砂は言った。

「今回は会社持ちだから、次はあなたが払うのよ。」


約束させられた。



彼女の家まで行くのは躊躇われた。

しかし、何処まで行っても、同じ方向だった。


ついに、優のアパートに着いてしまった。

優は聞いた。

「何処に住んでいるんだ?」


意外な答えだった。

「このアパートの3階。」


「お、俺、このアパートの2階なんだけど・・・」



「私の部屋、引っ越し荷物のダンボールでイッパイだから、あなたの部屋に行く。」

優の鍵を奪い取ると、サッサと優の部屋に入っていった。



ベッドに座った亜里砂は言った。

「風俗で働いてたなんて、絶対に言わないでよ!」


「口が裂けても言わないよ!」

「その代わり、俺の言う事を聞いてくれ!」



亜里砂は思った。

しまった・・・男の部屋に入ってしまった。

男がこんな言い方をするときは、身体を狙っている時だと思った。


だけど、こいつからそんな感情は伝わってこなかった。



優は言った。

「君次第だけど、結婚を前提に付き合って欲しい。」

「そうすれば、君は俺の事を常に監視出来る・・・」


「こんなアタシでイイの?」と言いそうになった。

自分を否定する言葉は言いたくなかった。


言葉に詰まったが、ハッキリ言った。

「宜しくお願いします。」





優と亜里砂が出会った頃、梓は何だか吹っ切れた感情に包まれていた。

母親に言った。

「この前の彼とは駄目みたい。」


母親は言った。

「私なんか1回目で今の亭主よ! 駄目な娘ね・・・」


梓は言い返さなかった。

祖母から聞いていた。

父と一緒になる前に、母が10回くらい男に逃げられた事を。




梓は指を回して、唱えた。

「優さん! 梓の事は忘れてね!」




1ヶ月後、優と亜里砂は一緒に不動産屋を訪れた。


「同じアパートの2部屋を解約します。」

「その代わり、間取りの広い場所に替えたいので、良いところを紹介してください。」


応対したのは、梓であった。


優は言った。

「あ! 久しぶり。 大学卒業して以来だね。」





場所は原宿のカフェ。


4人席。


座っているのは、ナオミ、登喜子、美智子、そして梓。


3人揃って言った。

「本当に、梓は男を見る目がないわよね。」


「そうかな~?」

何とも思っていない梓であった。


「誰に似たのよ?」


そう、美智子が言うと、カフェに勢いよく入ってきたお姉さんがいた。

若く見えるが、梓の母親だった。


店員が声を掛ける間もなく、近くの空いていた椅子をズリズリ引きずって、4人のテーブルに座った。


「あら、みんな元気そうね。」


慌てて水を持ってきた店員さんに言った。

「あ! お勧めのパフェお願いね!」


店員さんはタジタジであった。

相手にものを言わせない迫力があった。



「娘がお相手を間違えちゃったみたいなの、、笑っちゃうわね!」


梓が渋い顔をする。


「誰に似たのかしら?」


そう言いながら、窓の外を歩くファッションモデルのお兄さんを指さした。

「うわ~! いい男! いいわね~、東京って!」



4人は声には出さなかったが、同時に同じ事を思った。

「あんただよ!」


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