表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
駄目(俺+魔女)  作者: モンチャン
20/167

20 出張(長野へ)

出張(長野へ)


会社の組織には、本社・支店がある。

各店舗の下に営業所があり、官庁工事を受注する為、各県に営業所がある。


日帰りの出来る近県は良いが、本社の営業所である長野は出張となり、たいてい泊まりになる。。



設計担当者まで常駐させられない営業所の応援は多い。

通常の設計応援業務は、本社にいたまま対応出来るが、客先との打ち合わせも行う事が多い。


その様な場合、近県なら早朝に出発してその日のうちに帰社可能であるが、長引く場合は「ウィークリーマンション」のお世話になる。



俺は東京本店勤務だ。長野の物件の設計応援を頼まれた。


営業所に確認すると、ウィークリーマンションがいっぱいで、ホテルを予約してくれと言われた。

営業所の場所も対象建物の場所も分かっていたので、俺の好みでホテルを選んで良いと、嬉しいお言葉をいただいた。


客先との打ち合わせは火曜日で、月曜日の午後に営業所に顔を出せば良いとの事。

現地確認・調整等で、木曜日で終了だという。


折角だから、金曜日を休みにして長野観光も勧められ、お礼を言ってしまった。



大ラッキーと喜んだが、うちに帰って出張の話をすると、もっと喜んでいる奴がいた。ナオミである。

新しい鼻歌を作り「出張! 出張! 信州! 長野! お泊まり! お泊まり! ・・・」。

今回の作品は歌詞が長い。



駐車所のあるホテルで、ツイン、月曜日から金曜日までの予定であった。


パソコンでホテルを検索しようとすると、先にパソコンを乗っ取ったナオミが、物凄い早さでキーボードを叩き、あっ!という間に対象ホテルを決めていた。

条件は悪くなく、朝食付きで、会社の規定金額も問題無い。


ただ、よく見ると日程が合わない。宿泊予定が月曜日から木曜日になっていた。

「大丈夫!」と胸を張るナオミに裏画面を見せられて、絶句!


キャンピングカーの予約も決めていた。それも土曜日から1週間。



てっきり、俺の車でドライブも楽しもうと思っていたが、「ガンガンと走るのも考えたけど、一回キャンピングカーに乗りたかった。」と究極の2択であったらしい。



土曜日の朝、キャンピングカーを借りに行く。

都心の店で、会社に行く途中の駅が最寄り駅。

平日は10時開店だが、土日は8時からだという。


予約番号を店員さんに示し、必要書類に記入する。

店長らしき人に「この度は有り難う御座います。」とお礼を言われたが、借りただけのお礼では無かった。

「急なキャンセルで困っておりました。」と言われ、ナオミを見たがそっぽを向いたままだった。



「運転者はどちらですか?」と聞かれ、「俺!」と答えようとした。

「二人!」とナオミが言って、書類に記入し、免許証をコピーしてもらう。


一通りのレクチャーをうけ、俺の運転で出発。

バンコンと呼ばれるワンボックスカーを改装した車である。


以前、父親が車を買い換える際、キャンピングカーを提案したが却下。

ワンボックカーを何とか購入検討対象にした。

どうせ運転手は俺だ。

俺以外の家族は、車で何処かに出掛けても昼食で一杯やりたい。


特に酒好きでもなく運転大好きな俺は、昼食後は必ず運転手であった。

ブツブツ言っていると、「試しに買ってみるか。」とのスポンサーである父の一言で決定。

俺が就職して、あまり乗れなくなった頃、今のFFセダンに代わってしまった。

「ワンボックスほど広くはないけど、快適だな。」と。



一般道を関越自動車道に向かう。


「キャンピングカーは重量がありエンジン出力が弱いので、走行車線をお願いします。」と店員に言われた事を実行する。

正直トロい。


高速に入ってから、何故かウズウズしているナオミに「三芳PAに止まろうか?」聞くと頷いた。

トイレ休憩から帰ると、降りる前に車のキーを渡しておいたナオミが運転席でスタンばっていた。


助手席に座ってシートベルトを締めると、「行くよ!」と言って出発。

駐車場は遊び場だと思っている連中に気を付けながら、本線へ。


いきなり3車線の真ん中の走行車線に入った。


ガソリン車ならいざ知らず、ディーゼルのキャンピングカーである。

しかし、俺が運転していた時よりもはるかに早い。

しかも、エンジン音は俺の時よりも小さい。

まあ、ナオミのやる事なので不思議にも思わずに景色を楽しむ。


「フフ・・・! 見晴らしがイイ!」独り言を言いながら満足げに運転しているので、運転は任せた。


藤岡JCTから上信越道へ。

ワインディングや上り坂でも、スイスイ進む。


碓井軽井沢ICで高速を降り、軽井沢駅方面へ進む。

ヘアピンの上り坂も、ものともせず、キャンピングカーは進む。俺の運転でなくて良かった。



旧軽の近くの駐車場へ停める。


ジョンレノン縁の喫茶店で、ノンビリする。


旧軽銀座とはよく言ったもので、混雑する道をブラブラする。


スタイルの良い女が、たいした事もない男の腕にぶら下がっているのが気になるのか、やたら視線を感じる。

いつもの事なので、気にもならない。



車に戻って、アウトレットに向かう。今度は俺の運転で。


時間が経ったので、ショッピングモールから離れた駐車場かと思ったら、結構近くの駐車場。

バンコンで無用に車高がが高くないので、建物の下の駐車場に停める事が出来た。


ブラブラとウィンドウショッピングを楽しむ。


「何か買ってあげる。」と言うと、前に回って振り向きざま、少しかがんだ上目遣いで「い~らない!」と言われた。

TVドラマでよく見るシーンで、大学生の頃憧れていた女のしぐさである。

一生、俺には関係ないと思っていた。もう、死んでもイイ!

イヤ!死んでたまるか!

これだ~!と顔全部を笑顔にして、ナオミと腕を組んで歩き出した。



アウトレットを後にして、俺の運転でR18を長野に向かう。


途中、追分の蕎麦屋に寄る。

奥のテーブル席に座る。


ナオミは「鴨つけめん」、俺は「天ぷらそば」と「挽きぐるみの田舎そば」で温かい方を先に出してもらう。

まず「鴨つけめん」登場。

二人揃って麺好き。ちょっと分けてもらう。

「取り過ぎ!」と睨まれる。


続いて「天ぷらそば」。天ぷらと温かい蕎麦とは別のせ。


食べ過ぎたお詫びに、ナオミに先に渡す。何故かあまり食べない。


二人で温かい蕎麦を食べ終わる前に、店員さんのお姉さんに「冷たい方をお持ちします」と言われた、

しっかり客をチェックしている様だ。


最後に「挽きぐるみの田舎そば」が出てきて、「こちらに!」と言うナオミの前に置かれてしまった。

俺に一瞥をくれて、「やっぱり、締めは冷たい方よね。」と言って半分以上平らげた。


残りの蕎麦を食べ終わって、「仲がよろしいですね」と言う店員さんに支払いをして、店を出た。

「満足!満足!」とお腹をたたくナオミを助手席に座らせ、浅間サンラインに向かう。



途中、「あ!さっきの店の製麺所。食べる事も出来るんだって。」とナオミが右側のお店を指さす。

事前調査はバッチリのようだ。

「今度、こっちのお店に来よう!」と言われ、素直に同意。


さらに「浅間山、きれい!」と大きな声。

運転中だが思わず右手を見ると、青空をバックに大きな浅間山が綺麗だった。雲一つない。

「雪が積もった浅間山も綺麗だぞ。」と言うと、ナオミは上を見ながら考えている。

「次回の予定を作ろう!」。ナオミはやる気満々である。



途中、道の駅に寄って、ソフトクリームを食べる。

雷電為右衛門の手形の大きさに驚く。

小さい声で「ナオミの方が多分強いな!」と呟いてしまった。

「なあに?」と聞かれたが、溶け始めたソフトクリームを見せながら、「美味しい!」と言って誤魔化した。

ちょっとビビったが、自分のソフトクリームを持って、乾杯するようにしてからソフトクリームを舐め始めたので、一安心。



道の駅からはナオミが運転をする。

上田を抜けて長野方面に向かう。

途中で左折して、着いた所は戸倉上山田温泉。

何故かビジネスホテルの駐車場に停める。


増築模様替えをしたホテルで、ナオミが先に入ってフロントで必要事項を記入してチェックイン。


エレベーターに乗ると、「ここの温泉大好き!」と言って上機嫌。

フロントのお姉さんが、「改装前は、ホテル玄関の扉を開けると、硫黄のニオイがしていました。」と言っていた。


初めではないようで、ナオミは今日の部屋に着くと、慣れた手つきで扉を開けた。

ツインではなく、ダブルの部屋であった。


ナオミはさっさと着替え、「早く!」と急かす。

慌ててホテルの用意した作務衣風に着替えると、ちょっと小さい。

まあ良いかと「お風呂セット」を用意して、大浴場に向かう。


途中で別れて、男湯へ。

軽く身体を洗って、お湯に浸かって「う~ん!極楽!極楽!」。すっかりトシヨリ。


ニオイもお湯も大のお好み。露天風呂やサウナはないが、必要ない。

出たり入ったりを繰り返し、取り敢えず満足して風呂を出た。



フロント前の無料コーヒーメーカーで二つ用意して待っていたが、ナオミは女性用大浴場から出てこない、

ちょっと冷め始めたコーヒーをゆっくりと飲んだが、2杯目を飲み終わった所で、ナオミ登場。

「お待たせ~。」と近づいてきた湯上がりで色っぽさがマシマシのナオミに、「こっちもさっき出たばかり」と答えながらコーヒーを用意する。

「あれ?ひとつ?」と言うナオミに、「俺は水にする!」と誤魔化す。



部屋に戻るとナオミは「やっぱり、最高!」と上機嫌。


汗をかいた俺は、着ているものを脱ごうとしたが引っ掛かって脱げない。

ナオミが笑いながら手伝ってくれた。

Tシャツに着替えて、一安心。やっぱりこれが一番。


ベッドに座って髪を整えるナオミの姿にドキドキしていると、「あ・と・で!」と言われて少しガッカリ。


取り敢えず、夕食を食べに表に出た。

ちょっと寂れた雰囲気だったが、着崩した浴衣の団体が歩き回るのに比べれば、こっちの方が良い様に感じるが、地元としては厳しいのかも知れない。



ナオミお勧めの狭い通りにある、やたら玄関付近が明るい居酒屋に入る。

「お好きな席にどうぞ。」と言われて、カウンターに座る。

出てくるのに時間が掛かるのを知っているナオミは、「焼き鳥全種類2本ずつと天ぷら盛り合わせ、鮎の塩焼き、卵焼き一つずつ!」を頼んだ。

「それから、ジョッキの生一つとノンアルコール一つ、漬物と煮込みとヤッコを一つずつ!」「後はその時!」と言って終了。


二人分出てきたお通しと、漬物で時間調整。

出てきたビールを俺の前に置こうとした店員に、ナオミを指さす。

俺に「お車ですか?」と言われたが笑っただけ。


二人で乾杯して、飲み物と一緒に出てきた煮込みをシェア。

頼み方が良かったのか、丁度良いタイミングで料理が並ぶ。

値段の割に量も質も期待以上。


ジョッキの生、ハイボール、酎ハイ、日本酒と飲み続け、他にも肴を頼んでいたが良く覚えていない。

確か馬刺しも頼んだかも知れない。


「これにはワインかな?」と言ってグラスワインを飲み干し、梅割りと続いた。

ナオミは店にある殆どの種類の酒を飲んだかも知れないが、俺はノンアルコール・ビールの後はお茶だった。


最後に俺がが「おしぼりうどんを一つ!」でオーダー終了・・・本当の最後にナオミが「締めのナマ!」と追加して、直ぐにきた中ジョッキを飲み干した。


何杯飲んだかよく分からないナオミにうどんを奪われ、「辛み最高!」と言いながら半分以上がなくなった。

寂しくなった残りのうどんを平らげた。

確かに美味い。

二つ頼めば良かったと思った。


思った以上に安い金額を支払い、ホテルに戻った。


俺と腕を組むナオミの歩きはシッカリしており、「ザル」と言うより「バケツの底抜け」だと思った。

ご機嫌のナオミは、ホテル受付のお姉さんに「おやすみなさい!」と手を振って、部屋に戻る。


部屋に戻って、ナオミに水のペットボトルを渡した。

一気に500mlを飲み干し、口を拭い、右手の拳を高々と上げ、「もう一回風呂に行くぞ~!」と声をあげた。

俺もやれと言われ、ナオミに合わせて、右手の拳を上げ、「もう一回風呂に行くぞ~!」と唱和して、二人で大浴場に向かった。


1回目よりも長い時間待たされ、ちょっと心配になったが、元気に現れたナオミに安心した。

部屋に戻って、先にナオミに歯磨きをさせ、入れ替わりにユニットバスで歯磨きをした。

今夜もヤルぞ!と思いながら歯磨きをしたので、些か時間が掛かった。


よし!と、ダブルベッドに横になっているナオミの横に滑り込む。


愕然!眠っている。


ほっぺたをつついたくらいでは目を覚ます様子はなく、それ以上したら返り討ちにあうかも知れない。

ガックリしたが、お休みのキスだけはしようと近づくと、いつもの良い匂いが強い。

もしかしたら、アルコールを吸収した揮発性の香りなのかと思って深呼吸をすると、意識がなくなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ