2 玄関にて
段々と男と女が近づいてきます。
玄関にて
何か視線を感じるが、シコタマ買い込んだ冷凍食品が気になってそれどころではない。
サッサと表の門の鍵を開ける。
俺の家は一戸建てで結構でかく立地も悪くない。
先見の明があるオヤジと天然だが行動力の塊のオフクロのお蔭で、通勤が楽な23区内に実家がある。
大学に入る際、オヤジから「手に職が必要だ」と建築学部以外入試を許されなかった。
8校受験し全滅。
残りは第一希望の1校となった。
浪人かそのまま就職かと諦めていたら、補欠で何とか入学出来てしまった。
本当は文化系でチャラく楽しいキャンパスライフを謳歌しようと思っていた。
実際は、工学部は実験とレポート作成で地獄の4年間。
そして、俺はオヤジ務める建設会社に、多分、オヤジのコネで入社出来た。
大学の就職課の担当者に「就職は一生の一大事で、コネでも何でも使って正社員になれ!」と言われて、オヤジを泣き落としたのである。
俺と違って、オヤジは東北の国立大学出身で成績優秀で授業料免除が自慢。
今は北海道の大型プロジェクトのJV所長として出張している。
北海道と聞いた天然のオフクロは、単身赴任予定のオヤジを言い負かして北海道を満喫することにした。
今年の4月から丸3年の工期だが、多分伸びるだろう。
お蔭で最低3年間は、俺が単身赴任のような状況になってしまった。
空手3段で旅行が大好きな姉貴は、夏の北海道旅行を計画中である。
もしかしたら、空手の段位はもっと上かもしれない。
興味が無いので、「そのくらい」だろう ・・・
因みに姉貴の旦那は同じ会社の営業部のホープである。
姉貴は結婚する前、俺とは違って優秀な成績で同じ建築会社の営業部門に就職した。
オヤジのコネなど関係無しで、悔しいけど、成績優秀な姉である。
姉が会社の飲み会の帰り、チンピラ4人に絡まれた義理の兄貴を瞬時に助けたらしい。
直ぐに駆けつけた警察官を見て、即座に将来の旦那にしがみつき、「きゃー!怖い!」と叫んだらしい。
正直、俺が姉貴に抱き付かれたら、恐ろしくて「オシッコを漏らしていた」と思う。
警察での事情聴取では、彼のお蔭で助かったと泣いて見せたという。
「演技派」である。
会社で旦那候補は暫くヒーローだったらしいが、目の前で姉貴の怖さを知ってしまった旦那候補は、可哀そうに、そのまま旦那にされてしまった。
後日結婚報告の姉貴から、四方割りの方が難しいくらいだったと笑っていた。
その時の、旦那である義理の兄貴の「引きつった笑い」が忘れられない。
とにかく、門の鍵を閉め、家の鍵を開けると防犯ランプに照らされる俺以外の影がある。
見ると、さっきのミニスカの女だ。
ビビりの俺である。
本当はもっと驚いても良い筈なのに、あまり驚いていない自分が不思議だった。
女は「泊めて」言うと、俺より先に家に入っていった。
男側の説明が多くあるのは、作者の女性に対しての経験値の浅さによるもので、我慢をしてください。
女側の説明は、この物語のメインですので、多分、長々と続きます。




