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駄目(俺+魔女)  作者: モンチャン
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16 届け出

届け出


3度も頑張った翌日、ナオミは疲れて眠っているのかと思って起床すると、既に起床して鼻歌を歌いながら朝食の用意をしていた。


顔を洗って目を覚ます。

左手を見ると、シッカリ指輪がはまっていた。

夢ではなかった。


朝食の用意が終わったナオミが、浴室で何かをわめいている。

「汚れが落ちない!」

どうやら、昨夜「シーツの汚れ防止」に敷いておいた大判のバスタオルに付いてしまったナオミの血液が取れないようだ。

「もう少し洗剤に浸けておいたら?」と提案にすると、賛同されて大きめの洗面器に浸しておいた。


朝食を終え、洗濯機から洗濯し終わった衣類を取り出したナオミは、洗濯かごを持って2階のベランダに干しに行った。

2階からの「バスタオルをみて!」と言う声に、浴室に行ってみると汚れ?が水面に浮き上がっていた。


何故かナオミから出た血液の色は明るかった。

通常の出血の色はバーガンディより濃いめで、時間が経つと黒っぽくなる。

ナオミのそれは時間が経ったにも関わらず、鮮やかなクリムゾンより少し明るい色をしていた。


何より驚いたのは、浮いていた汚れ?が文字になっていたことだった。

最初はナオミが身につけていた青いペンダントに刻まれていた様なデザインの文字であった。

鮮やかな明るい色の文字は、ゆっくり渦を巻きながら「すき」という俺にも分かる文字に変わった。

両手で掬ってみようとしたが、空気中に浮かんだと思ったらダイヤモンドダストの様にキラキラと輝いて消えていった。



しばらく立ちすくんでしまったが、我に返ってバスタオルを濯いで、洗濯機で脱水をした。

軽く脱水が終わったバスタオルを持って、ご機嫌で鼻歌を歌うベランダのナオミのところに向かった。

とっくに洗濯物を干し終わっていたが、太陽光を吸収する様に両手でベランダの柵を掴んで身体を伸ばしていた。



「やること」をやってしまい、それも「そのまま3回も・・・」

ちゃんと役所に婚姻の届け出をしないといけない。


区役所の受付は平日のみなので、次の月曜日の朝に行くことにした。

届け出用紙もその時と思っていたら、ナオミの例の鞄から折り目のない婚姻届の用紙が現れた。

俺に関する部分の記入事項を書き込み、必要書類の確認をパソコンで行う。

どうもスマホやタブレットの入力は好きになれない。

タダの拘りである、



既に記入済みのナオミに関する記入箇所を見てみると、名前以外は先程浴室で見たような、デザインのような文字が書かれていた。

「これで大丈夫?」と聞いてみると、「完璧!」と胸を張る。

既に証人2人の署名欄も、俺の上司2名の名前が記入されていた。

どうして?と考える事は止めた。


土曜日のうちに、月曜日の区役所立ち寄りを会社の勤怠システムに登録すると、暫くして上司の承認がおりていた。

「管理職は大変だな」とため息が出た。

何故か「おめでとう」というメッセージ付きだった。



家族のグループラインに「来週、婚姻届を提出する」と発信した。


オフクロと姉からは「奇特な女性もいるものだ」と同じ文面のメールが届いた。

オヤジからは「今度姉一家が北海道に来るときに一緒に来い」とだけの文面であった。


誰からも質問はなかった。

「少しは聞いてこいよ!」と返信したかったが、返り討ちが怖かったので止めておいた。


ラインの返信内容を見せると、ナオミは大笑いしていた。

直ぐに「北海道!北海道!」と自作の鼻歌をうたい、何処の温泉が良いのか俺のパソコンを乗っ取って調べ始めた。

母娘揃って温泉は好きなようだ。


恐ろしく正確で素早いタイピングで、ドンドン検索を進めていく。

思わず仕事を手伝ってもらおうかと、よからぬ考えが浮かんだが、即座に考えを否定した。

俺が何かを考えている事を察知した魔女は、「なあに?」と上目遣いの可愛い顔を向けた。

「あははは」と乾いた笑いで誤魔化して、「良いところは見つかったか?」と話題をそらした。



「ここ!」と地図を開いて指さした先は、札幌からかなりと言うより物凄く離れた「川湯温泉」だった。

札幌から道のりで400km近く離れている。


姉たちと一緒に行く場合は、まずは俺の両親のいる札幌に行く必要がある。

その後に団体行動を取らされる可能性がある。


酒に興味はなく出来れば運転する事を好む俺を、運転手にする予定が見え見えで、まして川湯温泉に行く連中ではない。

「川湯温泉か」と不安げに呟くと、「大丈夫!」という言葉でこの件は終了。



嬉しく楽しく、夜の頑張りもプラスされた充実の土曜・日曜の二日間が終わった。



月曜日に二人で区役所に向かう。


区役所で、自転車置き場のオジサンに行き先を言って、2台分の駐輪券を受け取る。

先に歩くナオミに付いていくと、ナオミが俺の必要提出書類の窓口でテキパキと処理を終わらせ、婚姻届の窓口に到着。

ナオミの分の書類はと思っているより早く、例の鞄から全ての書類が出現。

届け出用紙のナオミに関する読めない文字の部分が気になったが、受け取った担当者の顔が一瞬怪訝そうになった時、その部分の文字が光った様に見えた。

「おめでとう御座います」で受理完了。



区役所最寄りの駅の駐輪場に自転車を移動し、俺は会社へ、ナオミはジムに向かった。



会社で結婚の届け出でをすると、「おめでとう」以外、特に何も無かった。

オマケ程度に「詳細は人事システムで」と言われて終わった。


設計部の同僚の反応は、男性からは「良かったね」が殆どだったが、女性からは「ふ~ん」くらいの無関心しかなかった。

別にどうでも良いけど。



社内人事システムで、ナオミの必要事項を入力する。


以前、ナオミの運転免許証で生年月日を確認しようとして失敗し、それすらも知らない自分に愕然とした。



ナオミの名前とふりがなを入力すると、何故か自動的に必要事項の入力は済んでおり、名前以外の入力は必要なかった。

ナオミの年齢は俺の2歳年下で、1月1日生まれであった。



「帰るメール」を送ると、「いつもの駅で待っている」と返事があった。


帰りの電車で運良く座れたのでスマホをチェックしていると、以前待ち受け画面用に保存してあったナオミの「ミニスカ」写真が消えていた。

何故か残念な気持ちになったが、ナオミに言うのは止めよう。



いつものように改札近くでマイバッグを夕食の買い出し分でいっぱいにして、ナオミが笑顔で待っていた。


マイバッグを受け取って駐輪場に行くと、既に二人の自転車が出しやすい場所に並んでいた。


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