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駄目(俺+魔女)  作者: モンチャン
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150 ちょい前-5 (1か月出張-3)




ちょい前-5 (1か月出張-3)




普段は、午後10時には閉まっている食堂ですが、11時過ぎまで営業してしまいました。


かなりの人数が集まっています。

「運転代行」は足りるのでしょうか?


食堂には、どうした訳かマイクロバスがあるのです。

中古ですが、まだまだ走れます。

運転するのは女将さんです。

大型二種免許も持っているのです。


結婚式の二次会やお葬式の時に、お店を使ってもらおうと免許を取りました。


女将さんがそのマイクロバスで、午後11時前に町中を走り回ります。

少し前までは ”村” だったのですが ・・・


女将さんがマイクロバスに乗せてきたのは、お客さんの奥さん達です。

まあ、「運転代行」の運転手です。


集まった奥さん達の運転で、酔っぱらったおじさん達は帰って行きました。



集まった奥さん達は、エイ子のパソコン教室の生徒でもあるのです。

集まった奥さん達は、女将さんから資料を受け取っています。

エイ子の”パソコン教室” の時に、女将さんが ”特別授業” をするそうです。



スケベオヤジの奥さん達は、真面目にスクールに通ったり、インストラクターの言う事を聞いて運動しています。

根が真面目なのです。

サウナもあるので利用したりもしています。

身体は勿論、お顔の張りも若い頃の様に戻ってきているのです。


でも、旦那さん達は気付きません。

近くに居過ぎる所為かもしれません。

そんな訳で、毎夜の様に飲みに来たりしているのです。

特に、エイ子とイズミがいるので頑張って、いや、喜んで飲みに来ているのです。

娯楽の少ない地域なのです。



エイ子のパソコン教室の時に、女将さんの ”特別授業” が開催されました。

タイトルは「如何に旦那様を振り向かせるか?」です。


女将さんがホワイトボードに必要事項を書いていきます。

受講生の奥さん方は、自分のノートパソコンに、その必要事項を打ち込んでいきます。


1. 少し酔わせる。

注. 完全に酔わせると「役立たず」になるので「少し」が大切。


2. 部屋の明かりを取り換える。

注. 蛍光灯からLEDに変更して、調光が出来る様に。


3. エイ子が着ている様な衣装を用意する。

注. パソコン教室で、インターネットショッピングの方法を覚える。


・・・・・・・・・ 


どうせ、蛍光灯の “蛍光管” の製造はそのうちしなくなってしまうので、丁度良いのかもしれません。



女将さん、 ”夜のテクニック” についてもご教授してしまいました。

テクニックは、海外のエロビデオからです。

動きだけでなく ”声の出し方” も勉強になります。

電気を暗くして雰囲気を作るのですが、 ”音” というのは重要な要素ファクターなのです。


女将さんが説明している時は私語も多かったのですが、海外のエロビデオが映し出されると、静まり返りました。

娯楽の少ない地域なのです。


ダンススクールで鍛えて、ジムで絞った身体を有効に使う事を教えます。

変に厚化粧すると怪しまれますから、そこは照明器具で明るさを調整するのです。


何故か奥さん方は「オッパイの大きい」女性ばかりです。

旦那さんが奥さんを選んだのは、そんな ”大きいオッパイ” が好きだったからかもしれません。

だから、エイ子に夢中になるスケベオヤジが多かったのです。



エロビデオには ”付き物” の「危ないもの」があるのです。

ヘンテコなサイトに誘導されない様にする注意事項は、エイ子が教えます。

ついでに「オレオレ詐欺」的な「誘導詐欺」についても細かく説明します。

何せ、高速道路が通って「土地成金」になった人達ばかりだからです。

非合法の連中にお金を取られるくらいなら、お店にお金を落させたいのです。



最後に、旦那さん達がお店に飲みに来る様に説明します。

お店に飲みに来ている間に、奥さん達が旦那さん達を迎える準備が出来るからです。

その気にさせる ”演出” は、時間が掛かるのです。

準備が出来たら、女将さんがマイクロバスで奥さん達を迎えに行きます。

至れり尽くせり?です。


まあとにかく、お店の売り上げを上げないと、女将さんが ”特別授業” をする意味がありません。



奥さん方に、インターネット通販でエイ子やイズミが着ている様な「衣装」の購入をさせます。

勿論、下着もそれっぽいものを用意します。

地方の、それも田舎の衣料品店には置いていない下着です。

奥さんの服や下着を脱がすのは旦那さんの方なので、旦那さんの好みを優先します。

それを一番知っているのは、奥さんなのです ・・・ バッチリです。

ただ「臍ピアス」は止めておきました。



数日して、各戸、照明器具の交換が終わりました。

同じ器具を大量に注文ですから、値引きもさせました。

全員の奥さんの衣装が揃ったところで ”作戦” 開始です。


いつもの様にスケベオヤジ達がお店に集まって酒盛りです。

ちょっと違っている事がありました。

イズミはいつも通りですが、エイ子の反応がイマイチなのです。

まあまあの ”お相手” はするのですが、イマイチなのです。


おじさん達に、ちょっと欲求不満フラストレーションが溜まった感じです。

この前、ゆたかが夕食を食べられなかった時の、異常に盛り上がったのは「特別」です。

その次の日からも、 ”それなり” の盛り上がりはあったのですが ・・・


おじさん達はこう思います。

「こんな日もあるのかな?」


こんな日もあるのです。

意識的に「こんな日」にしたのです。


ちょっと早めの午後10時前に、 ”運転代行” の奥さん達がマイクロバスで到着しました。


みんな、三々五々にお家に帰って行きます。

でも、みんな各自の「ボトルキープ」の瓶を持っています。


お家に帰ったおじさんは、テーブルに用意されたグラスで、持ってきたボトルキープのお酒を飲みだします。

いつもは、帰ってきてお風呂に入って寝るだけなのですが、奥さんがお酌をしてくれるので、断る訳にはいきません。


飲むほどに電気が暗くなっていきます。

おじさんは「酔っぱらったのかな?」と思います。

かなり暗くなった時に奥さんを見ると、いつの間にかエイ子と同じ様な格好になっていたのです。


電気が暗くなっているので、奥さんの老け顔は目立ちません。

奥さんが誘います。

お店で、欲求不満フラストレーションが溜まっていたので、簡単に誘いに乗ってしまうおじさんなのです。


”お酒の力” と ”奥さんのお誘い” には敵わない旦那さんです。

だって、顔はいつも見ている ”見慣れた” 顔ですが、暗くて、奥さんの若い頃の顔を思い出してしまいました。

そして、着ているものが違います。

おじさん達お好みのエイ子が着ているものと同じなのです。

そして、奥さんとは ”ご無沙汰” です。

勿論、 ”ジムで絞り込んだ” 奥さんの身体を見た事はありません。

ハッキリ言って ”新鮮” です。 

若い頃に戻った様です。

特に、奥さんは太ももの内側を鍛えているので、アッチの方も「抜群」です。

”どこぞ” の悪いところで遊んできたおじさん達も、驚きです。

奥さんのアソコが若い時と同じだからです。


勿論、奥さんも大喜びです。

東京のホストクラブに行ってみようかと思っていたおばさんもいた様ですが、 ”手近” の夫で十分満足出来たのです。


旦那さん達は ”根はみんな真面目” で、一生懸命仕事をしているのです。

農業は機械化したとはいえ、農作物の点検では歩き回る事が多いのです。

お腹が出てきたとはいえ、机に座りっぱなしのサラリーマンとは、運動量が違うのです。


よくイズミやエイ子を ”お持ち帰り” しなかったというところです。

まあ、女将さんは魔女ですから、そんな事は決してさせなかったのは、言うまでもありません。



大好きな ”大きいオッパイ” と、引き締まった奥さんを愛して、旦那さんは大満足です。

勿論、奥さんの方も大満足です。


都会にいたら、そんな夫婦は、お互い「不倫」をしたかもしれませんが、そんな事が出来るほど、人が多くいないのです。

みんな、顔見知りで、「下手な事」は出来ないのです。


そんな訳で、女将さんの作戦は、大成功です。

どこの家でも、大セイコウだったのです。




近頃、ゆたかは、この前の「大盛り上がり」の時の様に、夕方にテレビ会議が多く、夕食がいつもの時間より遅れる事が多くなったのです。

エイ子はお酒を飲んでおじさん達と盛り上がっているので気付かなくても、イズミはお店に入れないゆたかを分かっていました。

そんな時、イズミは「お弁当」を用意して、ゆたかに渡してくれていたのです。


昼定食も「盛りだくさん」で、食べきれないで持ち帰るお年寄りも多いので、お弁当の入れ物が用意してあるのです。

勿論、「本日中にお召し上がりください」のシールを貼るのを忘れません。

ゆたかのお弁当は、二段で、「おかず」と「ご飯」が別です。

お味噌汁は「ごめんね」と言いながら ”インスタント” ですが具材の多いものをつけてくれます。

イズミは ”気の利く良い子” なのです。


お昼の時も、ゆたかが来るとイズミの方がエイ子より先に対応してくれて、ゆたかの事を「兄貴」と呼ぶ様になりました。



そんな感じで日数が経ち、イズミのお休みも終わりです。


丁度、ゆたかが本社での打ち合わせに出席する事になったのです。


ゆたかは食堂で世間話をする様になりましたが、何故かエイ子ではなくイズミとなのです。


いつもの様に昼食を食べていると、イズミがゆたかに言いました。

「兄貴! あたし、車で東京に帰るけど、乗っていく?」


ゆたか、ご飯をかっ込んで飲み込んでから、言いました。

「え? 良いの? 確かマニュアルシフトのZだよね。 運転してっても良い?」


イズミ。

「良いよ。」

簡単に決まりました。

ゆたかの打ち合わせは午後からで、朝早く出掛ければ ”楽勝” です。


エイ子も乗っていきたいと思いましたが、Zは ”二人乗り” なのです。

それに、食堂の仕事があるのです。

イズミがいなければ、エイ子がホール係として頑張るしかありません。



イズミ。

「じゃあ、エイ子お姉ちゃん。 お店の方、宜しくね。」


エイ子。

「任しとけ!」

そう言いましたが、不安です。

イズミとゆたかが二人でドライブするからではありません。


イズミは弟がいるだけで、兄や姉はいません。

丁度、 ”手頃な” 兄貴分のゆたかや、姉貴分のナオミがいたのです。


二人は、兄妹の様に仲良しで、ましてゆたかは ”堅物” ですから ”心配” ありません。

エイ子としては、食堂の ”夜の営業” もあるので、そちらの方が心配なのです。


ゆたかが、東京のお家に帰った時、ナオミがいない事になるからです。



ゆたかから、「東京の本社に行く」とナオミのスマホに連絡がありました。

「急な話」です。

ナオミはすかさず、「その日は、魔女の会合で帰りが遅れる」と連絡しておきました。

夕食は、”自分で何とかしてくれ” という事です。


ゆたかからは「OK!」と返ってきました。


ゆたかは、仕事が忙しく ・・・

まあ、朝晩にジムに行ってたりしますが、それは「気晴らし」です。

ナオミと一緒でないのが辛いのです。


「 エイ子 = ナオミ 」なのかを調べたいのですが、別人だった時の対応が思いつかないので、エイ子から遠ざかっていたのです。

イズミに聞けば良さそうなものですが、エイ子の事を聞いてみるのも ”不自然” な気がして聞けません。


とにかく、1カ月すれば出張は終わって、間違いない ”本物のナオミ” に会えるのです。


嬉しい事に、本社に打ち合わせに行く事になったのです。

営業部の役員に「天下り」のオッサンがいて、民間工事なのに色々言ってきたのです。

ゆたかの父親が会議に出ていれば、そんなオッサンの意見など撥ね退けたのでしょうが、残念なことに納得させる意見を言える人がいなかったのです。

ゆたかが父親に似ているところは、的確な意見を言う事なのです。

今のゆたかは、東京に行けばナオミに会えると思ってしまったので、意見を言わずに本社で打ち合わせをする事にしてしまいました。


本社と行ったり来たりすれば、その分、自分の仕事が忙しくなるのですが、今の最大関心事は「ナオミに会いたい」という事だったのです。

間違いない ”本物のナオミ” に会いたいのです。




ついに、と言うほどの事はありませんが、イズミのZで東京に行く日になりました。

運転はイズミです。

本当はゆたかも運転してみたいのですが、ここ何年間も ”オートマ車” しか運転していません。


イズミの両親やエイ子に送られての出発です。

ゆたかが背広を着ています。

小さい声ですが「馬子にも衣裳」と聞こえてきます。

みんな、作業服のゆたかしか見たことが無いのです。


「万歳!」でもされそうな感じの中を出発します。

食堂の前から出発です。

車なら直ぐのところにインターチェンジが出来たので、楽勝で高速道路に乗りました。

二人乗りのスポーツカーです ・・・ 快適です。


イズミが、スパスパっとシフトチェンジをしています。

ゆたかが久し振りのマニュアル車に感心していると、サービスエリアに到着しました。

折角なので、トイレ休憩だけではなく、何かを買おうと施設の中を回ります。

近くで酪農もやっているのか、美味しそうなソフトクリームの ”のぼり” が見えます。


ゆたかがイズミに言います。

「アレが食べたいな!」


イズミ。

「もう兄貴、ガキみたいだな ・・・ 」

そう言いながら付いてきます。


ゆたかは「イチゴとバニラ」、イズミは「チョコとバニラ」のミックスです。

支払いは、兄貴分のゆたかです。


イズミの「チョコとバニラ」が先に出来上がりました。

イズミが「いただきます」と言って先に食べ始めました。

ゆたかの「イチゴとバニラ」が出来上がると、ゆたかが食べる前にイズミに先っぽの方をタップリ食べられてしまいました。

ナオミの時と一緒です。


「えへへへ ・・・ 」

イズミが可愛く笑います。


ナオミを思い出して、ボー然としていると、イズミに言われました。

「早く食べないと溶けちゃうよ。」


外に置いてある樹脂製のテーブルのところの椅子に座って食べます。

楽しそうにイズミが世間話をします。

”聞き上手” のゆたかの能力全開です。

傍から見れば「恋人同士」に見えるでしょうか?


マジマジとみるイズミは、可愛くて美人です。

ナオミより身長が低いのと、胸が小さいくらいです。

まあ、ナオミは身長が175cmを越えていますから、イズミは170cmはありそうです。

胸の大きさは、 ”ゆたかの好み” に合わせて、ナオミが「意識を集中する」ことによって、大きくしてきたのです。

魔法ではなく、「愛の力」です ・・・ ?


イズミに見とれていると、イズミに手を引かれて車のところに連れていかれてしまいました。

「兄貴、運転してみたいでしょう?」

久し振りに女の子と手を繋いで、正直、嬉しいゆたかです。


ゆたか。

「大丈夫かな?」

女の子と手を繋いだのは久し振りなのですが、マニュアル車の運転はもっと久し振りです。


イズミ。

「平気平気!」


そんな感じで運転席にゆたかが座りました。

上着は脱いで後ろに置いておきます。

着たまま運転する人がいますが、「横皺」が付くので、上着は脱ぐことをお勧めします。

特にゆたかの様な ”汗っかき” は、スチームアイロンをかけ続ける様なものですから、気を付けましょう。


慎重にクラッチを繋いで出発です。

スパッと繋がります。

マニュアル車でも色々なアシストが付いている車もある様ですが、Zには付いていないと聞いた事があります。

でも、それほど回転数を気にしなくても、「シフトアップ」、楽勝です。


ゆたかのジイジは、昔の車を収集していた事があります。

海外の車ではなく、日本車の「フェアレディZ のS30」と「セリカのリフトバックGT」です。

バアバに隠れて、知り合いの整備工場に置いてもらっていたのです。

ジイジの事なら何でもお見通しのバアバですから、知ってはいたのですが、許していた様です。

その頃、いや、多分今でも、お金をたくさん稼いでいるから許されるのでしょう。


ゆたかは運転免許をジイジに取らせてもらいました。

条件は「マニュアル免許」でした。

免許証を取った時、乗せてもらったのがそのS30のZとセリカだったのです。

その時の感覚では、日産のシフトは前後は短いのに左右は大きいと言う事と、トヨタは左右は狭いのに前後は長いと言う事でした。


でも、イズミの最新のZは快適です。

スパスパとシフトチェンジが可能なのです。

あまり回転数を気にする事もありません。


ゆたかがいつも乗っているのは、VWのゴルフのGTIです。

ほぼスポーツカー的な実力ですが、FFです。

前から引っ張っている感じが分かります。


でも、イズミのZは違います。

後ろから蹴飛ばされる感じのFRなのです。

思わず微笑んでしまいました。


イズミ。

「兄貴、運転上手だし、好きなんだね。」


ゆたか。

「良いな~、Z。 でもな~、二人乗りだもんな~ ・・・ 」


イズミ。

「また、一緒にドライブしようよ ・・・ 」


そんな楽しいお話をしている間に、東京に到着です。

適当なところでイズミと運転を代わってもらって、会社の前まで送ってもらいました。


丁度昼食の時間で、久々に社員食堂の ”日替わり定食” にしてみました。

料金は安いのですが、内容はいつもの食堂には敵いません。

食べながら、思いました。

「イズミに昼食をご馳走すれば良かったな。」

勿論、社員食堂でないところでです。



午後から、本社の役員会議室で打ち合わせです。

普段、ゆたかの様な ”平社員” は入れませんし、使えません。

例の天下りの役員がいるので、役員会議室になったのです。


本社ビルの最上階に近いところにあります。

景色が抜群です。

近頃、田んぼと畑しか見ていないゆたかには、刺激的です。


ゆたかの頭の中には、「どうやって役員を黙らせるか」です。

しかし、ゆたかが色々考えなくても、何とかなってしまいました。

ゆたかの義理の兄のショウジが打ち合わせに出席したからです。

ゆたかなお義理の兄、ゆたかの姉のヨーコの旦那さんです。


「切れ者」と言われている男なのです。

現場の代理人も出来る資格も持っており、行動力もあり、弁も立ちます。

無いのは「腕力」です。


でも、奥さんが、そこいら辺は全てカバーしています。

奥さんのヨーコは、その気になれば「空手は国際級のトップクラス」です。

でもでも、本当は「こわ~い魔法」を使いこなす魔法使いなのです。

まあ、実力的には魔女以上かもしれません。

母親譲りなのです。


打ち合わせの議事進行は、ここでもゆたかです。

事前に義理の兄の部長に言われていたので、兄のショウジに話を振りました。

ものの5分で、打ち合わせは終了です。

役員が色々言いだしたのですが、ことごとくショウジが説明して終わりです。

流石に若くして営業部長になった男です。

相手に「嫌な感情」を与えない話し方が素晴らしいのです。


折角、コーヒーを用意してもらったので、世間話で30分にはなりました。


出席者で一番若いのはゆたかです。

議事進行もゆたかです。

ゆたかが議事録も作成しなければいけません。

でも近頃はこんな武器もあるのです。

「文字起こし機能付き ボイスレコーダー」です。


設計部の自分の机に座って、議事録を纏めます。

確認の為に、設計部長と義理の兄に社内メールで送って、校正を頼みました。


兄の方から、「補足説明」の追加があっただけで、「良く出来ている」と返信がありました。

設計部長の方は「了解」で終わりです。


出席者全員に社内メールで議事録を送って、この件は終了です。

BCCで、現場の所長にも送っておきました。



時間が余ったので、自分の机でCADを立ち上げて、仕事をします。

図面のデータが、本社のサーバに入っているので、どこででも仕事が出来ます。


午後3時の休憩で、コーヒーを飲みながらイズミに連絡しました。

「時間があるなら、夕食を一緒に食べよう。場所はイズミが決めてくれ。」


ゆたかは、東京への「逆出張」なので交通費が出ます。

多少、持ち出しでも、今日の夕食を一人で食べたくなかったのです。


直ぐにイズミから返信がありました。

場所は、イズミが住んでいる近くのイタ飯屋さんです。

午後6時半に予約をしたそうです。


終業時間になって、サッサと帰ります。

本社の連中に捕まって、長くなるのが嫌なのです。



地下鉄を乗り継ぐと、簡単にイズミの住んでいるマンションの近くに行くことが出来ました。

東京の場合、地下鉄を使いこなせると、色んな場所に行くことが出来ます。


ちょっと早いので、散策をします。

歩くのは嫌いではありません。


いきなり腕を組まれました。

イズミです。

「兄貴、早かったね。」

普通に妹の会話です。


そのまま暫く歩いて、イタ飯屋さんに到着です。

ディナーのコース料理です。

でも、軽い感じの料理が多い様です。


イズミが色々喋ります。

ゆたかが楽しそうに相槌を打ちます。

「聞き上手」の本領発揮です。


楽しい時は、時間の経つのも早いのです。

でも、2時間は経ってしまいました。


お支払いをして、イズミをマンションまで送ります。


イズミ。

「会社からの交通費より高かったんじゃないの?」


ゆたか。

「妹なんだから、心配するな。」

そのまま、腕を組んで歩きます。


ゆたかもイズミはお酒を飲まないので、それほどの支払いではありませんでした。

これがナオミだったら、とんでもない金額になっていたと思います。

シャンパンから始まって、赤ワイン、白ワイン ・・・

空のボトルがゴロゴロ ・・・



マンションに着いて、受付のオバサンに挨拶しておきました。


オバサン。

「お兄さん? あれ、イズミちゃんは弟さんだけじゃないの?」

女子学生専用の高級マンションなので、管理は完璧の様です。


ゆたか。

「いえ、従弟です。 ここに勤めています。」

オバサンに「名刺」を渡します。

大手スーパーゼネコンの名刺が役に立ちます。

特に、今日は背広で決めていて、良かった様です。


ゆたかは横に大きいので、背広はオーダーです。

縫製もシッカリしています。

見る人が見れば分かるのです。


何故ゆたかの背広が良いものなのかは、ナオミの拘りです。

”ゆたか” と ”お酒” にはお金を惜しみません。


「イズミを宜しくお願いします。」

そう言って、久々の自宅に帰ります。



家の近くの駅に着きました。

駅近の自転車置き場に来ましたが、自分の自転車が無いのを思い出して、歩き始めました。

久々の歩きです。

自転車でもそんなに早くはないのでしょうが、歩いていると色んなものが見えます。

新鮮です。


そんな感じでゆっくり歩いていても、自宅には到着します。


電気が点いていません。

現実に引き戻されました。




一方、エイ子であるナオミです。

イズミはいませんが、お店は大混雑です。

おじさん達にエイ子は人気があるのです。

「金髪」が好きなのでしょうか?


でも、中身であるナオミは気が気ではありません。

イズミから写真付きのメールが届いたからです。

タイトルは「お兄ちゃんと一緒」。


東京へのドライブ中の写真からです。

仲良くソフトクリームを食べています ・・・ 自撮りです。

まあ、これは良いとしましょう。

問題は、夕食のイタ飯屋さんでの写真です。


イタ飯屋さんとは言っても、洒落たイタリアン・レストランです。

ゆたかは着ていった背広のままですが、イズミはちょっとお洒落な服を着ています。

ゆたかの背広に合わせたのでしょう。

お店の人に撮ってもらったのか、二人の乾杯の写真もありました。

コメントも付いています。

「シャンパンではなく、ジンジャーエールで~す」

兄妹と言うより、恋人同士に見えてしまいました。


仕事を早く切り上げて飛んで帰りたいのですが、まだ終了時間の午後10時までには、1時間ほどあります。



その頃、人気ひとけのないお家に帰ってきたゆたかです。

ナオミと再会する前を思い出します。

皺にならない様に背広をハンガーに掛けて、お風呂の用意をします。

シャワーだけです。

歯みがきも忘れません。

洗濯物を洗濯機に入れ、洗剤を入れ、タイマーをセットします。


ちょっと早いのですが、何もすることが無いので、寝てしまおうという算段です。

明日、電車で現場に行くとなると、早目に起きて出掛けなければいけないからです。



ナオミは出掛けていますが、鍵は持っている筈なので、門の電気を点けて、鍵をかけて寝てしまいました。

まあ、鍵がなくても、問題はないでしょう ・・・ 奥様は魔女なのですから





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