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駄目(俺+魔女)  作者: モンチャン
14/167

14 魔女子会

魔女子会


ナオミの姉と母親は年に数回開催される「魔女子会」に参加する為、草津温泉に向かっていた。

集合の仕方は、出席者の自由である。



魔女ではあるが、見た目だけで判断するのは不可能である。

話し方も、それぞれの地方のイントネーションは感じられるがそれだけである。

決定的に異なる部分は、多分一般の人間には分からない。

何故なら、普通の人からは分からない様に出来るから魔女なのである。



ドライブ好きのナオミの姉、ヒロミは関越自動車道を北上していた。

いつもはガンガン走るヒロミであったが、景色に見とれて追い越し車線を法定速度+で巡航していた。

車はトヨタ86、色は赤系。


走行車線は空いている、車線変更をしなければいけない。



魔女の力を持ってすれば、タワマンの最上階に住み、フェラリを乗り回すことは簡単である。

しかし魔女には厳しいコンプライアンスが存在し、自分の欲望だけでの行動は致命傷になる。


どの様になってしまうかというと、「魔女」から「魔」が消え「女」だけになる。

魔力を持たなくなったただの「女」は、それまでの魔女仲間との接触すらかなわなくなる。

何かしらの技術を持たない者は惨めな最後しか残っていない。



複数の車線がある道路の追い越し車線を、走行車線が空いているにも関わらず走行し続けることは、しっかりとした違反行為・通行帯違反である。

「法定速度で走っている」と弁解しようと、運転免許証を所持している者は、行為そのものだけで、ただのバカッタレである。



車線変更をしようと思ったヒロミは、瞬時に全てのミラーを確認した。


バックミラーにかなりの速度で接近してきた後続のバカ車は、急激にハンドルを切り左車線を抜けてヒロミの車の前に出た。

いきなりそのバカ車のブレーキランプが点灯し、しかしこう来るだろうと予想していたヒロミは左にハンドルを切り、走行車線に移動した。


あっさりかわされたバカ車のバカ男は、キレてしまい猛然と速度を上げ、あおり運転を繰り返した。

運転大好き、ミッションもマニュアルシフト以外運転しないヒロミは、楽しそうにかわしていった。



ヒロミに運転を任せ、ノンビリ助手席でワンカップを楽しんでいた母親は、左右に車を揺らされ少しこぼれた酒に気づいた。

「大事な酒を・・・」と不機嫌に呟き、空いていた右手の人差し指をくるりと回した。


直ぐにバカ車はタイヤのグリップを失い、並走していた他の車に迷惑を掛ける事なく、スピンをしながら誰もいない高速バスの停留所に突っ込んで行った。

バックミラーで、ボンネットが全開のエンジンルームから白煙を上げる廃車になったバカ車をヒロミは確認した。


母親は「お酒が減っちゃったじゃない」と文句を言いながら、何処から出したのか先程の人差し指と親指でスルメをつまんでいた。

「今度からは自分でやっちゃいなさい」と言いながらスルメはその口に吸い込まれていった。



魔女の日本代表者のオバサンは拘りがあるのか、車や電車やバスを利用しないで魔力で移動する。

ただ、多少天然で、草津に現れはしたが「湯畑」のド真ん中であった。


丁度、彼女の写真を湯畑をバックにスマホで撮影していた若いお兄さんに撮影されてしまった。

「あわあわ」とまともな言葉が発する事が出来ないお兄さんは、湯畑の方を指さしたが、足がもつれ、手にしたスマホを湯畑に落としてしまった。

「私のスマホ!」とお姉さんが叫んだが既に遅し。

酒を飲んでいないにも関わらず、息がアルコール臭いお兄さんに「何、一人で酒なんか飲んで!」とグーパンチを炸裂させた。


洒落た鞄を持って湯畑を眺めるような格好の先程の日本代表は、「駄目よね~、一人だけでお酒を飲んじゃ」とうそぶきながら、予約を入れてあった近くの旅館に入っていった。



近くで事の次第を全て見ていた魔女の3人組は、「はあ~! まただよ」と言い合いながら、旅館に向かった。この3人は「鉄オタ」系である。



魔女は都道府県に代表者が各一人ずつ存在する。基本1家族のみである。

子供が生まれ女の子であれば「魔女」になる。通常一人しか女の子は生まれないが、何百年に一度、希に二人生まれることがある。


男の子も生まれるが魔力は無い。

普通の人間と結婚すると「魔女」に関する記憶が消え、母親や姉妹が魔女である事を思い出せない。

但し、魔女と結婚すれば記憶はそのまま残る。



いくら子供を作って魔女を増やしても、各都道府県の代表者は一人である。

政治家のように、沢山居ても役に立たない者は必要がないからである。



ただ、女の子が二人生まれると、次に生まれた女の子には特殊な才能が備わっており、最強の魔力を持った「化け物」になる。



魔女は何故か温泉が好きである。

「魔女子会」は1年に1回開催すれば事足りるが、スマホ等の媒体を利用しなくても魔力で事務連絡は楽勝である。

年に数回開催するのは温泉に行きたいからである。



各自草津温泉を堪能し「ここの露天は最高ね」などと盛り上がりながら、宴会場に集合した。総勢35名。

今回はメインの集まりではないので、会員全員の集合ではない。



沖縄代表から「あれ? 今回ナオミちゃんは?」と声を掛けられた。


ナオミの母親はこれから頼む酒の銘柄選びで忙しいので、ヒロミが変わって返事をした。

「好きな男が出来て、温泉と男を天秤に掛けて1週間以上悩んで、「男」になったの。だから今回は泣きながら欠席しました。」


秋田代表から「例のペンダントが選んだ男なの?」と質問が飛ぶ。


「どうも、それだけじゃないみたい。」

「普通の人間が、ナオミの怒りの炎に触ったら、弾き飛ばされるか死んでしまうけど、何ともないの」

ヒロミとナオミの母親以外は「エ!!」と言って声を呑んだ。


興味深げに埼玉代表から「それでやることはやっちゃったの?」

ヒロミは不満げに「まだみたい。あの歳で童貞と処女だって」

ヒロミとナオミの母親以外が「ゲェ!!」と言う大合唱。



静岡代表で日本代表の魔女は「絶対にやめろって言っておいたんだけど、以前うちの馬鹿息子がナオミちゃんにアタックしたんだよ」

「温泉の魔女子会に無理矢理参加した時、見惚れちゃったみたいで・・・」

「やめとけば良いのにしつこく食い下がったら、その炎にふっ飛ばされて地獄の声を聞いちゃったらしいの」


まだ酒の銘柄選びに集中するナオミの母親以外は、「はあ~!」とため息をついた。


大阪代表から「その後息子さんは復活出来たの?」との質問がでた。


日本代表から「ナオミちゃんの母親に作ってもらった薬で取り敢えずは」そして「今でもナオミというフレーズを聴くと失禁して大変よ」


ナオミの母親以外は皆で深く頷いた。



「なに?」と言う顔で周りを見たナオミの母の東京代表は、「シャンパンで乾杯して後は色々持ってきてもらうから。時間無制限・飲み放題だって!」

参加者全員の「イエ~イ!」のかけ声と共に、酒と料理が運ばれてきた。

旅館の女将さんや仲居さんには、品の良い奥様方の会話と行動にしか見えていない。



日本代表が「この間、世界大会に出席したんだけど、イギリス代表はいまだに箒に乗ってやって来たわ。例のマントを着てきたけど、寒い寒いの連発。」

ヒロミから「開催地はハワイでしょう?」の質問。

日本代表は「もうババアだから着込めばいいのに格好つけるからよ。イギリスなんて樺太と緯度は同じくらいなんだから」


そして「来年からはデジタルにしようかって言ってた。ナオミちゃんはデジタル魔法得意だから、今度聞いておいて」



ナオミの母の東京代表は、シャンパン→ビール→日本酒と飲み続け、今度はワインを飲みながらグラスをあげて「オッケー!」と元気よく答えていた。

魔女達の「ガハハハハ」という大笑いも、一般の人間には「おほほほほ」としか聞こえていなかった。



最後の乾杯の際、「童貞の彼氏と処女のナオミを絶対くっつけるぞ!」という全員でのシュプレヒコールでお開きとなった。


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