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駄目(俺+魔女)  作者: モンチャン
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海外旅行-4




いつも通りに、ゆたかはお弁当を持って会社に向かいます。

「愛爺婆弁当」です。

「爺」が入っているので、蛋白質多目です。



今日は、ちゃんと朝食を食べましたが、いつもの駅に着いて電車に乗ってから、”自分用のスマホ” が無い事に気付きました。

パソコンデスクの上で充電していたので、持ってくるのを忘れたのです。


今までゆたかは、忘れ物をした事はありません。

もしかすると、いつもは妻であるナオミがサポートしてくれていたのかもしれません。


ナオミの事を思い出すと、自分の周りだけ暗くなって行く様に感じます。

そんな気持ちを払拭する為に、ジムで今日もシャカリキに頑張ります。


会社でも仕事を頑張ります。

いつもは ”一生懸命” なのですが、昨日に引き続き今日も ”頑張って” 仕事をして、”嫌な事”を忘れたいのです。


今日も残業するつもりで、朝のうちにバアバに「夕食は要らない」と伝えておきました。

何かに没頭していないと、ナオミやゆういちの事を思い出してしまうのです。

ゆたかにとって可愛いのは、”ナオミ” だけではありません!





さて、イギリスの三人です。


今日は、エディンバラからロンドンに移動です。


移動手段は車、列車等があります。

車なら、380マイル (612㎞)、6時間の工程です。

列車なら4時間半弱です。


勿論、飛行機もあります。


でも、時間とお金の節約と、折角持っている ”機能” ですから、魔法の ”瞬間移動” という事になりました。

ロンドンの魔女のご夫婦も、当然、魔法の ”瞬間移動” でエディンバラに来たのです。



朝食を食べてから出発です。

朝食は、今日も「イングリッシュ・ブレックファースト(English breakfast)」です。

ベーコンに目玉焼き、ベイクド・ビーンズ、マッシュルーム、トマトにベーコンやソーセージなどをトーストと共にいただきます。

二日目なのですが、飽きません。

きららがこれをリクエストしたから、同じものが二日続きました。

日本の ”和の朝食” なら、目玉焼きか卵焼き、焼き鮭、納豆、海苔にご飯と味噌汁と言ったところです。



さあ、スコットランドの魔女夫婦に見送られて、ロンドンの魔女夫婦と出発です。

玄関からではなく、リビングから出発です。


折角なので、途中で寄り道をします。

途中の湖水地方の辺りは、牧草と羊だけという景色なのです。

日本で同じ様な景色は、北海道くらいではないでしょうか。


そして、近くで羊を見てみましたが、ゆういちは大喜びです。

ゆういちが羊に声を掛けると、羊も何やら返してきます。

ワンコのタロウとニャンコのクロだけでなく、羊さんともお話が出来る様です。


途中休憩?は本当は要らないのですが、折角なので「オマケ」です。



途中休憩を入れても、あっと言う間にロンドンの魔女のお宅に到着です。

ロンドンの魔女のお母さん、スコットランドの魔女のお祖母ばあさんがお迎えしてくれました。


昔、魔女の国際大会の時に、例の黒ずくめの魔女の格好で、箒に乗って現れたという「頑固」なお婆さんです。

でも、ゆういちを抱っこすると、ゆういちにキスをされてメロメロになってしまいました。

実は、”子供好き” のお婆さんなのです。


因みに、魔法の ”瞬間移動” なら直ぐに目的地に到着するのに、時間は車よりも時間が掛かって、自転車利用と同じくらいだったそうです。

イメージは「魔女の宅急便」と同じです。

多分、お婆さんが若かった頃のお話なのでしょう。



お家は、フィンチリー (Finchley)という、ロンドン北部の治安が良くて静かで緑豊かな高級住宅街です。

古くから多くの日系の人達もいる様です。



時間があったので、お婆さんではなく、お母さんの方の魔女の運転で、ロンドン市街をドライブします。

車は、ジャガーのXJのSuper V8 Portfolio (ポートフォリオ)で、パワーユニットはスーパーチャージドⅤ型8気筒4.2Lで406PSの高出力モデルです。

ロングホイールベースでリアシートは大型のセンターコンソールで仕切られた2座席なのでゆったりしています。

ゆういちはチッコいので、OKという事にしてしまいました。


ロンドン市内の中心部は、交通渋滞を緩和する為に、中心部への車の乗り入れを ”有料化” して制限しています。

ちゃんと監視カメラで捉えられて、証拠写真とともに罰金の「お知らせ」が来るという仕組みです。


そのエリアを走行するには、事前に費用の支払いが必要になり、忘れたりすると「交通違反」という事になります。

事前の支払いを怠ると、シッカリ監視カメラで捉えられていて、証拠写真とともに罰金のお知らせが来る様になっています。

日本でも、”ながらスマホ運転” などはHシステムで確認出来ますから、チマチマと ”ネズミ捕り” をするよりも効率的だと思います。


まあ、魔女のおばさまの運転ですから、監視カメラなど相手ではありません。

ですから、事前に支払っているのかどうかは「?」ではあります ・・・



道路は思ったより狭く、駐車している車も多くいます。

でも、走っている車は、車間距離も短く、スピードをガンガン出します。

日本なら、前を走る車に ”煽られている” と言われそうです。


尚且つ、日本よりも ”歩行者優先” が進んでいるので、人もバンバン車道を横切っていきますから、注意が必要なのです。



取り敢えず、明日行く予定のビッグベン、ウェストミンスター宮殿、ロンドン塔、セント・ポール大聖堂セント・アンドリュー・スクエア、大英博物館の周りを走りました。

石畳の道もありましたが、流石にジャガーで、快適なドライブです。



お家に帰ると昼食です。

「ステーキ アンド キドニーパイ」です。

飲み物は ”ジュース” ではなく ”ソフトドリンク” で、100%果汁でないと ”ジュース” とは言わないからです。

ステーキ アンド キドニーパイは居酒屋やパブで人気の料理で、サイコロ状にカットした牛肉と腎臓が使われています。

パイに使われるのは主に牛の腎臓ですが、ラムや豚の腎臓が使われることもあります。

ナオミとしてはこれでビールをあおりたいところですが、ソフトドリンクで我慢します。



食事が終わると、近くを散策します。

ノースフィンチリーには多くの商店が立ち並び、日系やアジア系の商店もありました。

地下鉄の他、バスターミナルもあって、セントラルロンドンへのアクセスでは困る事はありません。



散策が終わってお家に帰って来ると、なんと、アフタヌーンティーが用意されていました。

お茶を飲みながら、明日のロンドン観光の打ち合わせです。


打ち合わせよりも、きららに対しての質問が多い様でした。

ナオミは、ただ一人の ”二番目に生まれた魔女” ですが、それに匹敵するくらい優秀な魔女だと評判なのです。


色々お婆さん魔女から聞かれますが、きららはソツなく答えます。

日本の家にもお祖母さんがいるので、年寄り相手はお得意です。

勿論、ナオミ直伝の英語です。

ナオミが英語を覚えた頃は、エリザベス2世の頃なので、「クイーンズ・アクセント」と言われる正統な話し方なのです。

ロンドンの魔女二人は、そんなきららがお気に入りになりました。




そんなこんなで、夕食です。

食べてばっかりですが、そんなものです。


まず、「サンデーローストとヨークシャープディング」です

サンデーローストとヨークシャープディングは、ローストした肉にポテト、スタッフィング、プディングを添えた伝統的な食事です。

通常は日曜日に提供されますが、決まりがある訳ではありません。


スタッフィングは、元は丸焼きの鳥の腹の中に詰める料理でしたが近頃はレシピの通りですが、スタッフィングとして肉団子を作ります。

材料は、バター・玉ねぎ・パン粉・レモン汁とレモンの皮の擦りおろし、それにソーセージミートです。

ソーセージミートは基本的に豚肉の肩とバラから作った挽き肉で、日本では売られていませんが、イギリスならお肉屋さんやスーパーで購入出来ます。

因みに「to stuff」という動詞は、詰めるという意味です。


ローストには鶏肉、ラム肉、牛肉、豚肉などのバリエーションがありますが、今回は豚肉です。

サイドディッシュとして添えられるプディングの材料は、卵、小麦粉、牛乳です。


プディングはお菓子の「プリン」ではなく、ふわふわでもっちりとしたシュークリームの皮のようなものです。

サイドディッシュとして添えられるプディングの材料は、卵、小麦粉、牛乳で、出来上がりの形は作る人によってさまざまです。

肉料理の付け合せとしてよく用いられ、ホースラディッシュソースやグレイビーソースをかけて食べます。



そして、「ビーフシチュー」も用意されていました。

若いきららに合わせた様です。

ロンドンのビーフシチューは、ロンドンブロイルという歯ごたえのある赤身のステーキを使った、この土地ならではのビーフシチューです。

このビーフシチューには、マリネしたあとにミディアムレアの状態に焼き上げて薄くスライスしたステーキが使用されています。



楽しく食べて、今日は早く寝る事にしました。




そして、次の日です。

人混みを避けるため、早朝から観光を始めるのです。


朝食は、またまた「イングリッシュ・ブレックファースト(English breakfast)」です。

きららのご所望です。

ベーコンと、目玉焼き、ポーチドエッグが含まれていて、それに加えて、トースト、ソーセージ、ブラックプディングが付いています。

ちょっと、エディンバラとは内容を変えているようです。



ロンドンは地下鉄が非常に発達しているので、効率的に移動出来ます。

ロンドン地下鉄 (London Underground)は、イギリスの大ロンドン市域 (Greater London:首都ロンドンの行政区画)を走る世界最古の地下鉄です。

チューブ (the Tube)の愛称で呼ばれますが、トンネルの形状に由来しています。

因みに、イギリスでのサブウェイ (Subway)は、地下道の意味になります。


ナオミ達は、交通カードを用意して抜かりはありません。


行き先は事前に予約しておいたので、スムーズに入場出来る様にしてあります。



午前中の工程はこうです。

ビッグベン

ウェストミンスター宮殿

バッキンガム宮殿(衛兵交代式)

これらの場所はロンドンの象徴的な場所であり、比較的近い場所にあります。

午前中にまとめて見学することで、効率的に時間を活用しようという ”作戦” です。



昼食は、200 年近くも前からイギリスの名物料理とされてきた「フィッシュ アンド チップス」です。

世界で最も有名で人気のある英国料理の 1 つで、ロンドンではこのカジュアルでシンプルな料理のワンランク上の味を体験出来るのです。


ついでにもう一品、「バンガーズ アンド マッシュ」です。

この料理は、ソーセージにマッシュポテトを添えた料理で、タマネギのグレービーソースがかけられていて、ソーセージの材料はラム肉の様です。



午後の工程はこうです。

大英博物館、一択です。


世界中から集められた貴重な品々が展示されており、一日中でも楽しめるほど広大な博物館なのです。

午後はじっくりと大英博物館を鑑賞する事にしたのです。



早足で回って、ちょっと時間が余ったので、ハリー・ポターの象徴的な場所である「キングス・クロス駅の93/4番線」にも行きました。

映画のまんまです。

ナオミ達ならハリーの様に、ホームから消える事が出来るのかもしれません。



ロンドンも、まだまだ色々あるのですが、今回はこれでお終いです。



結構な「強行軍」なので、ゆういちはお婆さんの魔女とお留守番です。

”若いお姉さん” が好きなゆういちです。

さあ、我慢が出来るのでしょうか?


大丈夫なのです ・・・ この家には、ワンコが二匹いるのです。

イギリスのワンコなのですが、ゆういちはお話が出来る様なのです。


そんな感じで、ゆういちはお婆さんとワンコ達に任せて、観光に出掛けたのでした。



来た時と同じ様に地下鉄を利用して、ロンドンの魔女のお家に帰ります。



夕食が用意されていました。

お婆さん魔女特製の料理です。


まず「シェパーズパイ」で、イギリスの伝統料理で別名「羊飼いのパイ」です。

イギリスの主食はポテトですが、日本におけるお米のポジションなのです。


そして、お肉です。

「ローストビーフ」です。

イギリスの料理で、一番美味しいと思われる料理です。

これには、例のプディングが添えられています。


オマケ?にスープ「スコッチブロス」です。

スコッチブロスは、具たくさんの野菜と羊肉に大麦を入れたスープです。


お婆さん一人でたくさんの料理を作りましたが、楽勝です。

だって、お婆さんは ”魔女” なのです。



みんなで、楽しくお喋りをしながらお食事です。


そんな感じで、ロンドンの夜は更けていきました。





でも実は、昼間、ナオミは途中で ”別行動” を取りました。

昼間でないと、日本時間の ”夜” に合わないのです。

ナオミは、残業が終わってやっと家に帰ってきたゆたかの元に現れたのです。


ナオミは、ゆたかと連絡を取りたかったのです。

毎日、「愛している」とメールを送っていたのです。

でも、ゆたかは自分用のスマホを会社に持って行かなかったので、連絡が取れなかったのです。

ゆたかの会社用のスマホに連絡するのは、 ”何となく” 嫌だったのです。

ナオミは、仕事とプライベートの区切りを、はっきり付けたい性格なのです。



毎日、目一杯運動して、目一杯仕事をして、ゆたかはお風呂で眠ってしまいそうでした。

何とか歯みがきをして、自分の部屋にたどり着いたのです。


扉を開ける前に違和感を感じました。

部屋に誰かいるのです。


「幽霊かな?」ゆたかはそう考えました ・・・ だって、魔女が存在しているのですから ・・・


でも、恐ろしさとかは感じません。

扉をそっと開けます。


ゆたかが部屋の中に入ると、静かに扉が勝手に閉まりました。


暗闇の中、ベッドに座っている女性が光っています。

ナオミの様なのですが、顔が ・・・ ホッペが膨らんでいます。

怒っている様なのです。


「怒っているナオミ」は、幽霊よりも怖いのです!


ゆたか。

「ど、どうしたの?」


ナオミ。

「何で連絡をよこさないの?」

いつもと違って、低い声です ・・・ 本当に怒っています。


ゆたか。

「ごめん。 充電しっぱなしだった。」


ゆたかは、決してこうは言いません。

「仕事が忙しくて ・・・ 」

そんな事は ”当たり前” だからです。



ゆたかはパソコンデスクのところにあった、充電しっぱなしのスマホを持ってきました。


ゆたかはスマホを立ち上げます。

「何もメッセージが ・・・ 」

でもスマホの中を見ると、ゆたかが知らない内容の連絡が届いていたのです。

きららからの「第二段のエディンバラ・バス観光」の映像でした。


そして、まずい事に、ナオミから何通もメールが届いていたのです。

まあ、こちらの方は、「愛しています」とか、「会いたい」とかの短い文面です。

でも、こちらの方が、”重要” です。



ゆたかは「???」です。


ナオミが説明します。

「ららが、ゆたちゃん宛に送ったのよ。 でも、ゆたちゃんが出ないから、おかあさんがテレビに繋いだみたい。」


おかあさんが、ゆたかのスマホを弄った時、全てを「スルー」にしてしまったのです。

おかあさんの行動としては ”いつも通り” です。


ゆたか。

「ごめん。 スマホをリビングのテレビの横に置きっぱなしだったんだ。」


ナオミ。

「いつから?」


ゆたか。

「ららが最初に映像を送ってきた時から ・・・ 」


ナオミ。

「もう!!!」

ナオミのホッペが益々膨れます。

「その後、ゆたちゃんだけに ”映像” を送ったのに ・・・ 」



ゆたかが、送られた映像を確認してみると、ナオミに抱かれたゆういちが喋っています。

「パパ~!」

ハッキリと ”パパ” と喋っているのです。


ゆたかは思わず、涙を流しました。


ゆたかの涙には、弱いナオミなのです。

もっと怒ろうと思っていたナオミは、何も言えなくなってしまいました。



ゆういちに「言葉」を教えていたのは、ナオミではなくきららです。

スマホの画面を見せながら、「ジイジ、バアバ」、「おとうさん、おかあさん」、そして「パパ、ママ」を教えたのです。

特に、「パパ、ママ」は頑張って教えたのです。

きららは特に、子供にとって両親が「一番」だと知っているからです。



昔なら、ナオミには「愛の補充」が必要なのですが、子供が出来たので、まだまだ魔力の量には余裕があるのです。

でも、ナオミはゆたかに聞きました。

「ねえ。 フランスに来れない?」


ゆたかが考えてから答えます。

「何とかしてみる。」

そうです、”金曜日の打ち合わせ” が延期になったのです。


ナオミは満面の笑みを浮かべます。

ゆたかはこの「笑顔」が見たかったのです。


ナオミは「ちょっとだけ」と言って、ロンドン観光の途中で、抜け出してきたのです。

このまま、ここにいる訳にはいきません。


でも、ナオミは思い出しました。

”瞬間移動” でナオミが消えていくのを、ゆたかは嫌いなのです。


そこで、ナオミはゆたかの額に指を当てて魔法を掛けました。

ナオミが消えても、ゆたかが悲しくならない様にする魔法です。


勿論、消える前に、ゆたかにタ~~~ップリとキスをしてしまいました。


時間が無かったので、今回はキスだけで終わりです。



ナオミの魔法が効いたのか、”瞬間移動” でナオミが消える時、ゆたかは笑顔で手を振ってくれました。


でも、ナオミは、ロンドンに戻ってきて、隠れて涙を流してしまいました。

ゆたかと、もっと、も~~っと、一緒に居たかったのです。




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