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駄目(俺+魔女)  作者: モンチャン
136/169

136 海外旅行-3



奈良の学校で、雷の事故があったと聞きました。


昔、「避雷針業者」の人と一緒に、数か所のビルの避雷針工事をした事があります。

移動する時に、雷について色々教わりました。

雷は上から下に落ちるのではなく、地上から迎え?に行く事もあるそうです。

そして、積乱雲の雲の高さは4km~10kmの高さになるので、雷にとっては1mやそこらの距離は距離のうちに入らないという事が記憶に残っています。


東京の十条の近くのビルの模様替工事でした。

ビデ足場が組まれていました。


遠くに積乱雲が見えましたが、自分のいるところはまだ日が差して明るいのです。

でも、足場のブレスに異常を感じました。

ブレスの間で、静電気の様に「火花」が走っていたのです。

そのつもりで足場を見ると、青白く光っている様でした。

夜だったら、”綺麗” だったのでしょう ・・・ ?


足場近くで作業している作業員を建物の中に避難させました。


暫くすると落雷がありました。

まだ、上空には雲はありませんでした。


実は、現場のすぐ近くにNTTの鉄塔があるのです。

他に、高い建物はありません。


建物の管理者に聞くと、鉄塔が出来る前には、こんなに落雷は無かったと聞きました。


高い建物に雷は落ちるのですが、高い建物から雲にいる雷様に、”お迎え” に行っている事もある様です。



雷鳴を聞いたら、近くに建物があるならば、中に避難させてもらうのが一番です。


でも、外にいるときに雷に遭遇し、周囲に逃げ込む場所が無い場合には「雷しゃがみ」が良いと言われています。


両足をそろえ、膝を折って姿勢を低くし、つま先立ちをして地面との接地面を少なくします。

そして、両手で耳をふさいで鼓膜が破れるのを防ぎます。


もし近くに電柱があって電線が上にあれば、電線は避雷針の役割を果たすので、電線の下に入ることでリスクを大きく下げることが出来ると言われています。



特に、湖等で釣りをしている時は「要注意」です。

グラファイトロッドは、避雷針を持って歩いている様なモノだからです。

「命あっての物種」です。



学校の校庭でも、落雷の事故は起こっています。

「落雷検知器」というのもありますので、人が集まる広い場所で過去に落雷があったところでは、常備する必要があるのかもしれません。







海外旅行-3




ゆたかがいつも通りに、会社に向かいます。

お弁当は持っています。

「愛妻弁当」ではなく、「愛婆弁当」です。

多少、「爺」も入っている様です。


でも、寂しいのは変わりません。


ゆたか以外の、”日本にいる家族みんな” も変わりません ・・・ ?





さて、エディンバラの三人です。


今日は「乗り降り自由の観光バスツアー」です。


朝食を食べてから出発です。

朝食は「イングリッシュ・ブレックファースト(English breakfast)」です。

定番の、ベーコンに目玉焼き、ベイクド・ビーンズ、マッシュルーム、トマトにベーコンやソーセージなどをトーストと共にいただきます。


今回のツアーは、ゆういちも一緒です。


スコットランドの魔女の旦那様は、今日はお仕事なのです。



ツアー名は、「シティ サイトシーイング エディンバラ バス ツアー」という名称です。

オープントップの 2 階建てバスに乗って市街のパノラマ ビューを楽しみながら、エディンバラ城やグラスマーケットなどの名所を巡ります。


お客さんは、ルート上のどの停留所からでもツアーに参加できます。

1番乗り場始発:8時50分

1番乗り場最終:16時20分

バスは30分間隔で運行しています。

所要時間は60分です。


バスには移動設備が完備されています。

また、耳の不自由な方の為に、階下に字幕スクリーンを設置してあります。

バウチャーで、チェックアウト時に選択した旅行日から最長12ヶ月間、フレキシブルにご利用できます。

大人1名につき子供は3名まで無料です。 (ただし、チケット購入の際、バスケットに子供用チケットを追加する必要があります。)


9ヶ国語によるオーディオガイド解説

ホリブル・ヒストリーズ・キッズコメンタリー (???)

ヘッドフォン

すべての主要観光スポットの近くに停車

大人1名につき子供3名まで無料

アトラクション入場券

食べ物と飲み物


至れり尽くせりです。

観光で稼ごうと思ったら、このくらいの ”投資” は必要なのでしょう。



ツアーのルートはこの様になっています。

開始場所は「Waterloo Place」です。

ここは、エジンバラのかつての愛称、「オールド リーキー(煙ただよう古都)」の雰囲気を味わえる場所です。

住んでいる人の数が少ない旧市街です。

迷路のような薄暗い路地や急な坂道は、かつての面影を残しています。

ここで目にするのは、観光客とタータン チェックがあしらわれたみやげ物店です。

石畳の通りでは、バグパイプ奏者にも出会えます。


バスに乗り込むと、次の様な順路で回ります。

全て、外観の見学です。


セント・アンドリュー・スクエア


ロージアン ロード


グラス マーケット


チャルマーズ ストリート


ジョンストン テラス


ローンマーケット


スコットランド国立博物館


ハイストリート


キャノンゲート地区


ホリールード宮殿


ダイナミック アース


アビーヒル


リージェントロード


解散場所は最初の「Waterloo Place」です。

ウォータールーには駅があります。

ウォータールー駅はもともと、ウォータールー・ブリッジ駅と命名されていました。

ウォータールーとはフランス語では「ワーテルロー」となります。

勿論、駅名の由来は、ナポレオンが敗北した「ワーテルローの戦い」からきています。



そんな感じで、気に入ったところでバスを降りて、”ジックリ回りましょう” というツアーなのです。


そんな訳で、バスの2階の景色の良い席を陣取って、一周します。



二週目のグラス マーケットでバスを降ります。

旧市街の中心地です。

南からエジンバラ城を見上げる場所に長い広場があります。

昔は家畜市場が開かれていたようです。

広場の中心には処刑台の跡が残っています。 

日本でもそうですが、昔はこんなものが ”娯楽” になったのです。

広場の周りを重厚な建物が囲みパブやレストラン、ショップが並ぶ、賑やかな場所になっています。


ここから同じ旧市街のロイヤルマイルに至るウェストボウ通りとビクトリア通りには、19世紀に建てられたカラフルな建物とその上に建つ重厚な石造りの建物が続きます。

折角なので歩いてみます。


ロイヤル・マイルは、一本道になった石畳の大通りです。

こんな道を長時間、馬車には乗りたくありません。

こういう道を見ると、ヨーロッパの車の ”足回りの良さ” の理由が分かってきます。


西から東へキャッスル・ヒル、ローンマーケット、ハイストリート、キャノンゲートと4つの名前にかわっていきます。

西端のエディンバラ城と東端のホリルードハウス宮殿を結ぶ、まさに「ロイヤル」な通りなのです。

石造りの威厳ある古い家や歴史的建造物が建ち並び、カフェ・レストランやギフトショップ、パブなどが入っています。


本当は、ナオミはパブに入りたいのですが、「禁酒中」でお酒を飲まないきららもいるので、カフェで休憩です。

お腹もすいたので、少し遅い軽めの「スコティッシュ・ブレックファースト」になりました。

飲み物は「ミルクシェイク」です ・・・ 本当はコーヒーが ・・・

食べるのは、フルーツスコーンで干し葡萄が入ったイギリスのスコーンで、ラズベリージャムとクロテッドクリームをつけていただきます。

クロテッドクリームは、英国デボンシャー地方に伝わる伝統的なクリームで、脂肪分の高い牛乳を弱火で煮詰めて、表面に固まった乳脂肪分を集めて作られます。

乳脂肪分は、 バターと生クリームの中間の60%くらいです。



女性三人ですから、お話がはずみます。

ゆういちは一応 ”男” ですが、員数外です。



腹ごなしに暫く歩いて、バスに乗って「スコットランド国立博物館」に向かいます。


スコットランド国立博物館は1998年に立てられた博物館で、スコットランドの歴史、民族、文化に関連する展示を行っていて、入場料は無料です。



博物館を回って、そして、バスに乗って「ホリールード宮殿」に向かいます。


ホリールード宮殿は1128年にデイヴィッド1世によって建てられた寺院が前身です。

15世紀から、スコットランド国王夫妻の住居として使われて、エリザベス2世の夏季の滞在地として使用されていました。

王室メンバーの滞在がない場合は、宮殿は一般に公開されているのです。




宮殿を見て回ってから、近くのレストランで遅めの昼食です。

ピザのレストランです。

イギリスのスコットランドのエディンバラでピザですが、抜群に美味しいのです。



美味しいピザをタラフク食べて、如何にもエディンバラらしい街並みを歩いて腹ごなしをします。


タップリとエディンバラを堪能して、魔女のお家に帰りました。


エディンバラの魔女は、ナオミより2歳上のお姉さんです。

お家に着くと、お姉さんのお母さん夫婦が来ていました。

お姉さんのお母さんは、勿論 ”魔女” で、夫婦で今はロンドンに住んでいます。



街歩きの時に、良さそうなお肉屋さんがあったので、今夜の夕食用のお肉を調達しておきました。

夕食のメインは「餃子」です。


まず、ナオミときららが ”餃子の具” の準備をします。

ひき肉に調味料 (にんにく、生姜、醤油、ごま油、砂糖、日本酒、片栗粉、塩、こしょう)を加え、よく練り合わせます。

さらにみじん切りにした野菜類を加え、軽く混ぜ合わます。

具はすぐ包まず、冷蔵庫で1時間ほど置いて味をなじませます。


味をなじませている間は、紅茶を飲みながら ”お喋り” です。


タイマーが鳴って、飲んでいた紅茶のカップを片付けて、大きいテーブルの上を空けておきます。


ナオミが、みんなに「餃子の包み方」を指導します。

それから、集まった全員で「餃子作り」の開始です。


色々な形になりますが、それはそれで楽しいのです。


エディンバラの魔女の旦那さんが仕事から帰ってきてから「餃子パーティー」です。


アウトドア用のバーナーを大きいテーブルの上に置きます。

大きいフライパンを二つ乗せて、油を入れて、餃子を並べます。

フタをして中火で焼きます。

1分くらいして皮の色が変わったら、餃子が1/3ひたる程度にお湯を注ぎます。

再びフタをして強火で蒸し焼きにします。

水分がなくなったらフタを取って、餃子の上から油を少し振り掛けて、パリっと焼き目がついたら出来上がりです。


みんなで、乾杯してから頂きます。

地元の皆さんは、それぞれお好みのエールやビールです。

ナオミ達はノンアルコールビールのBRULO (ブルーロ)をいただきます。

BRULOは、イギリスはスコットランドの首都エディンバラにあるノンアルコールのクラフトビールに特化した醸造家達が、ビールの本場ベルギーの醸造所で製造しているビールです。

ビールと同じ原材料で実際に発酵をさせながら作った、アルコール度数0.0%のビールです。


「餃子が食べたい」と言ったくらいですから、みんな美味しそうにたくさん食べます。

そして、自分達で餃子を作ったので、益々美味しいのでしょう。



でも、それだけではつまらないので、ナオミはもう一品用意していたのです。

もう一品は「しゃぶしゃぶ」です。


昨日行ったお肉屋さんで、牛肉の ”薄切り” が売っていたのです。

ここ、エディンバラで「しゃぶしゃぶ」を食べる人がいるのかは分かりませんが、丁度良い牛肉があったので買っておきました。


白菜は無いので、レタスを使います。

たれ用の ”ポン酢” と ”ごまだれ” は、調味料セットの中に入れてあったのです。


牛肉は食べやすい大きさに切って、取り易い様に並べて冷蔵庫に入れておきました。

シチューを作る大きい鍋に水と昆布を入れて沸かして準備オッケーです。


英国の魔女達は、日本に来た時に「しゃぶしゃぶ」は食べた事がある様で、器用にお箸を使ってお肉をシャブシャブします。


餃子には豚肉ですが、しゃぶしゃぶは牛肉で、みんな大満足です。


ワザと多めに作っておいた ”餃子” をしゃぶしゃぶのお鍋の中に入れて「水餃子」も作りました。

牛肉をしゃぶしゃぶして美味しくなったスープに調味料を入れて、液体昆布だしで味調整して完成です。



そんな感じで、エディンバラの夜は更けていきました。





因みに、日本の方は、一日目・二日目と同じです。

でも、ちょっと変化がありました。


いつものコーヒータイムの時間に、きららが映像を送ってきたのです。

日本が午後8時の時、エディンバラは前の日の午後0時の正午です。


ゆたかのスマホに送ってきたので、ゆたかはリビングの大きいテレビに繋ぎます。

ゆたかは残業してたのですが、1時間だけだったので間に合ったのです。


テレビに映し出されたのは「ゆういち」です。

手を振っています。


そうして、こう言ったのです。

「じ~~! ば~~!」


ジイジとバアバは大喜びです。


次にこう言いました。

「おと~~! おか~~!」

まあ ”何となく” こんな感じです。


おとうさんとおかあさんは、涙を流して喜んでいます。


ジイジ、バアバは曾祖父母で、おとうさん、おかあさんは祖父母なのです。

因みに、ゆたかとナオミはパパ、ママで、三世代同居の ”家族呼び方ルール” なのです。


ジイジやバアバは「ヒージー、ヒーバー」とは呼ばれたくないのでしょうし、おとうさんやおかあさんは40代で若いので嫌なのかもしれません。


次は俺の番かと思って、ゆたかが身構えます。

ゆういちはこう言いました。

「#%&¥¥<&&**##$$¥¥ !」

何のことやら分かりません。

でも、喜んだのは、ワンコのタロウとニャンコのクロです。

リビングのソファーの周りを、二匹は駆け回ります。


人間には分からなかったのですが、ゆういちとタロウとクロの間では、会話になっていたようです。



次こそは・・・

そう、ゆたかが思っていましたが、映像が切り替わってしまいました。

「エディンバラ城ツアー」の映像です。

良く出来た「ダイジェスト版」です。

説明はきららで、声だけでなく、自撮りもしていました。

可愛くて美人です。

妹ですが、”嫁にやりたくない” と思ってしまいました。



最後にゆういちを抱いたナオミときらら、そしてエディンバラとロンドンの魔女夫妻の全員が映し出されました。


そして、きららがこう言って終わりました。

「明日も映像を送りますから、待っていてね。」



終わってから、日本のみんなは大喜びです。

勿論、ゆたか以外の人達やワンコのタロウとニャンコのクロです。



リビングでみんなが盛り上がっているので、ゆたかは先にお風呂に入りました。

折角なので、お風呂に浸かりながら歯磨きもしてしまいます。

「もう、食べないぞ!」という ”意思表示” も含まれています。


ゆたかがお風呂から上がってきても、みんなは盛り上がっていました。


「じゃあ、先に寝るから ・・・ 」

そう言って、、誰も聞いてはいない様ですが、、ゆたかは2階の自分の部屋に行きました。


何となく、釈然としません。

「何で、ゆういちは俺に声を掛けなかったんだろう?」

寂しい気持ちになりました。


ただでさえ、ナオミがいなくて寂しいのです。


ベッドの上に寝転んでみると、広い宇宙に自分しかいない様な寂しさを感じてしまいました。

でも、年度末で仕事が忙しく、疲れていたのかそのまま眠ってしまいました。




ゆたかは、朝、起きました。

時計を見ます。

ギリギリの時間です。


そう、”自分用のスマホ” が見当たらないのです。

自分用のスマホを ”目覚まし” にしていたからなのです。

面倒臭いのですが、「会社用」と「自分用」の二つのスマホがあるのです。


時間が無いので、歯磨きをして、行く支度をして1階に降りていきました。

ジイジとバアバ合作のお弁当は準備されていました。


そのまま出掛けようとするゆたかに、ジイジが「待った」を掛けました。

プロテインパウダーを沢山入れた「特製スムージー」が用意されていたのです。

スムージーをグイっと飲んで、水でうがいをして、折角なのでその水を飲んでから出掛けました。

折角のプロテインが勿体無いと思ったのです。


時間があれば、”会社支給のスマホ” から ”自分のスマホ” に電話を掛けて探そうとしたのですが、時間がギリギリだったのです。

まあ、ジムに行かなければ良いのですが、それを言ったら ”お終い” です。



ジムで、シャカリキに「重いモノ」を持ち上げます。

昨夜のリビングでの出来事を忘れる為もあるのです。


いつも通りに運動後にプロテインドリンクを飲んで、シャワーを浴びてから会社に向かいます。


会社に着いて、いつも通りに自販機のドリップコーヒーを飲んでから仕事開始です。


会社で年度末の書類を片付けていると、部長から呼ばれました。

「忙しいところ申し訳ないが、この物件も対応してくれ。」

言葉では「申し訳ない」と言っていますが、態度はそう思っていないのが明らかです。


設計事務所との打ち合わせです。

どうも、ゆたかの父親が絡んでいる仕事の様です。

知りたくもない、聞きたくもない「情報」が設計部には飛び交っているから知っていたのです。


そんな訳で、ゆたかの残業が決定です。

会社のスマホで、自宅に電話しておきます。

「ゆたかです。 今日、残業で遅くなるから、夕食は要りません。」

電話に出たのはおかあさんです。

「はい。 頑張ってね。」

あっさりと、電話は終わりました。



午後3時に、従弟のつよしとコーヒーブレイクです。


ゆたか。

「オヤジが絡んでいる物件を、やる事になっちゃったよ。」


つよし。

「ああ、あの物件。 設計事務所の担当者が ”曲者” らしいよ。」


ゆたか。

「え~~! 聞かなきゃよかったな~ ・・・ 」


そんな情報交換です。


今まで、話題に出てきませんでしたが、つよしにも子供が出来ました。

女の子です。

美智子の子供ですから「鬼女」です。

そのお話は、今後のお話で出てきます。



ゆたかは、早速、先方の設計事務所の担当者に打ち合わせの連絡をします。


ゆたか。

「○○建設の三浦と申します。 今回、△△ビルの設計担当になりましたので、ご挨拶に伺いたいのですが、いつ頃が宜しいでしょうか?」


担当者。

「ああ、三浦さんね。 営業の人から、君が担当者になるって聞いていたよ。 ・・・  ハ~ックショ~ン!!!!」

スマホから、相手の唾が飛んできそうな勢いでした。


ゆたか。

「だ、大丈夫ですか?」


担当者。

「あ! 悪い、悪い。 花粉症みたいなんだ。 君が来た時にはマスクをしておくから。」



そんな感じで、ゆたかはその設計事務所に行きました。

ゆたかが水曜日に行く ”原宿の設計事務所” の近くでした。


設計事務所の受付で待っていると、ゴツイマスクをした担当者が現れました。

ゆたかもマスクをしています。

名刺交換をします。


お互い、名刺と相手の顔を交互に見てしまいました。

お互いマスクをしていますが、お互い ”知っている” 顔です。


担当者。

「ああ! あの三浦君か。」


ゆたか。

「鈴木先輩!」


なんと、担当者はゆたかの大学の先輩だったのです。

お陰で、「曲者」と噂されている担当者とスムースな打ち合わせが出来ました。

それでも、二人はマスクをしたままです。

時々、先輩は咳をしだすと止まらなくなりました。


ゆたか。

「先輩! それ、花粉症じゃないですよ。 絶対、医者に行った方が良いですよ。」


担当者。

「そ、そうかな? じゃあ、近くに内科があるから行ってみるか?」


ゆたか。

「病気は、何でも早く対処した方が早く治りますって。」


という事で、ゆたかは自分の会社に、担当者の先輩は近くの病院に行く事で、二人は分かれました。


折角なので、原宿のカフェに寄ってみました。

いつもの様に、お店の奥のテーブル席で、パソコンを立ち上げます。

「曲者の担当者」ではなく、自分の大学の先輩だったので、安心して ”打ち合わせ議事録” を作りながら、コーヒーを楽しみます。


暫くすると、ゆたかの ”会社のスマホ” が鳴りました。

さっき、分かれた先輩からでした。


担当者 ⇒ 先輩 。

「いや~、医者に行って良かったよ。 花粉症じゃなくて ”百日咳” だったんだ。」


ゆたか。

「原因が分かって良かったですね。 症状はどうなんですか。」


先輩。

「もう、菌は殆ど無くて、治りかけてるみたいだけど、今度の金曜日は家でジックリ休むから、打ち合わせは別の日にしよう。」



電話が終わると、美智子が近付いてきました。


ゆたか。

「よう。 今日は一人?」


美智子。

「ちょっと待って! いま、”百日咳の病原菌” がいないかチェックしてるから。」

美智子がゆたかに手をかざして、何かをしています。


美智子。

「あ! 陰性だわ。 良かった。」


ゆたか。

「そうか。 百日咳って、子供が掛かると大変らしいもんな。」


美智子。

「そうよ。 おにいちゃんだって、家に帰ればゆういち君がいるんだから。」


ゆたかは、昨夜、ゆういちが自分だけに「声掛け」をしてくれないのを思い出しました。

「でも、いま、ゆういちは家にいないんだ。」


美智子。

「ああ、ナオミおねえちゃんが、海外旅行に行くって言ってたわね。」


ゆたか。

「実はさ ・・・ ・・・ 」

ゆたかは美智子に昨夜の話をしてしまいました。


美智子。

「あはははは ・・・ 。 大丈夫よ。パパにだけは ”別口” で連絡があるって!」


ゆたか。

「そ、そうかな?」


美智子。

「じゃあね。 オッパイの時間だから ・・・ 」

そう言って、美智子はお店の奥にいなくなりました。

そういえば、美智子は前よりも ”グラマー” な感じでした。


お店のオーナー (魔女のおばさまです)が現れました。

「どう? ゆうちゃん、元気?」


ゆたか。

「ええ。 いま、イギリスのエディンバラだと思います。」


お店のオーナー。

「きららも一緒なのよね。」

そんな感じで、オーナーとのお話も終わって、ゆたかは会社に帰ってきました。


金曜日の打ち合わせは延期になりましたが、資料を作ったりで色々大忙しです。

そして、年度末の仕事が、もう少し頑張れば終わるからです。


そんな感じで、昨日は1時間の残業でしたが、今日はガッツリ残業をする事にしました。

おかあさんに連絡しておいたので、そのまま残業をする事にしたのです。


会社の冷蔵庫に ”名前” を書いて置いてある ”低脂肪乳” で溶かしたプロテインドリンクと、机の中に隠しておいた ”プロテインバー” で夕食です。


年度末の書類が終わって、昼間に行った設計事務所の物件の確認です。

その頃になると、殆ど設計部には人が残っていません。

でも、目途が立つまで資料の確認をします。

ゆたかは、自分は「真面目」だけが取柄だと思っているのです。


資料に自分なりのチェックを入れて、今日の作業の完了です。


いつもは、終電まで頑張っている連中もいるのですが、午後10時過ぎなのに、ゆたかが最後の様でした。


午後10時過ぎでも、電車は混雑しています。

「何でこんなに人が多いのだろう?」

そう思いながら、電車に揺られて家路を急ぎます。

まあ、帰ったからと言って、妻も子供も待っていないのですから、急ぐ必要はありません。



一応、”午前様” になる前に家に到着です。

扉を開けると、電気などは ”常夜灯” しか点いていません。


でも、光るものが四つ見えます。

ワンコのタロウとニャンコのクロです。

思わず、近寄ってきた二匹を抱き締めてしまいました。


「ご苦労さん。 風呂に入って、歯みがきして寝るんだぞ。」

ジイジの声がして、電気が点きました。


ゆたか。

「はい!」

ゆたかは「おじいちゃん子」です。


ジイジ。

「あ! ゆたかのスマホがテレビの横にあったから、そのまま置いてあるから。 じゃあ、お休み。」

そう言って、ジイジはバアバの待つ自分達の部屋に行ってしまいました。


ジイジが階段を上っていくと、ワンコのタロウとニャンコのクロも一緒にいなくなってしまいました。


「は~~~ ・・・ 」

ゆたかのそんなため息だけが、こだましている様な感じです。


風呂に入って、ついでに歯磨きもしてしまいます。

テレビの横にあったスマホを持って、自分の部屋に行きました。


スマホを立ち上げると、画面には何もメッセージが来ていませんでした。

さっきよりも、もっと大きい溜息をついて、スマホを充電して、ゆたかは寝てしまいました。




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